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五番通りの魔道具店  作者: もとめ
67/71

第43話 不穏な影(4)

「ルイさん……。そのくらいで……」

 不意にどこからか声が聞こえた。

「えっ……?」

 崩れた塀の向こう側に、どこかで見たような人影が立っている。

 その人影は崩れた塀を乗り越え、ゆっくりと倒れている二人のもとに来た。


「ば、バスさん……」

 ルイは少し驚いたように立ち上がった。

「心配で、様子を見に来たんですよ……」

「よくこの場所がわかりましたね……」

「えぇ。この場所に、少し心当たりがあったので、もしかしたら、と……。――で、この二人ですか?私の家を見ていたのは……」

 バスが二人の傍らに片膝をついて言った。そして、その服装を見て少し驚いたような顔をする。

「そうです。そっちの男が……」

「か、彼らは魔道院の魔道士テオ様の配下の方ですね……。ルイさんも魔法を使うのであれば、テオ様のお名前くらいは聞いたことがあるはず……」

「え?テオさんの?」

 ルイは驚いて二人を見た。

(マジか!?やばい!)

 ルイは動揺を隠すように、男の後ろに回り、先ほど縛った紐をほどき始めた。

「そ、そうならそうと早く言ってくれればいいのに、あ、あはは……」

 バスもぐったりしている女の手に結ばれた紐をほどき始めた。

「(ルイさん、テオ様を“さん”呼び?テオ様と、どういう関係なんだろう……?)ルイさんはテオ様とお知り合いなんですか?」

 バスは少し不思議そうにルイを見た。

「え、えぇ。テオさんとはカロの森でいろいろとありまして……。今朝も王都で芋虫魔物を退治した時に会ったところです……」

 ルイは気まずそうに言った。

 その言葉に二人が驚いた顔をする。

「芋虫魔物……、ワームウッド!?ルイさん、あれを退治したんですか!?」

 バスはそう言うと、立ち上がってルイを見た。

「え、えぇ、まぁ……。ちょっと知り合いの魔道士さんに頼まれて、さくっと……。(あれは美味かったな。もう一度食べたいくらいだ……)」

「さくっとって、それは大変なことですよ!あれはバイエモンの眷属の中でも相当強い魔物……。一体どうやって……」

「あ……。い、いや、そんなことより、何でテオさんの配下の人がバスさんの家を見張っていたのかってことですよ!」

 ルイは不審人物がテオの配下だったことに僅かに疑問を抱き、慌てて逸れかけた話題を戻すように言った。

 紐をほどかれた男が、自身の身体を確認するように縛られていた手首の辺りを見ている。

 バスが気まずそうに男を見て言った。

「えぇっと、たしか……ガドリさん?といいましたか?今朝方はありがとうございました……。まさか、こんな形でまた会うなんて……」

「……いえ」

 ガドリも気まずそうに返事をした。そして女の腕を自身の首に回すと、抱えるように持ち上げ、立ち上がった。

「バ、バスさん。この人と知り合い?」

「えぇ。今朝方、フラガの魔道兵に襲われたところを助けてもらったんです……」

 バスは苦笑いをして答えた。

「そ、そうだったんですか……。でも、テオさんの配下ってことは、バスさんの家を探っていたのはテオさんの命令ってことなんですか?」

 ルイが訝し気にガドリを見て言った。

「……」

 ガドリは無言のまま、女に視線を向けている。

「まぁ、テオ様にも考えがあるのかもしれないですね……。(やはり、私は信用されていないということか……)」

 バスはそう言うと、大きく肩を落としため息をついた。

「うーん、どうなんですか……?」

 ルイはそう言って、ガドリを不審そうに見ている。

「……」

 しかし、ガドリは視線を合わせることなく、難しい顔をしてただ女の様子を見ている。

 ルイは一向に答える気配を示さないガドリにしびれを切らした。

「答えないんなら、俺、直接テオさんに聞いてきますよ」

 そう言うと勢いよく宙に浮いた。

「お待ちを!」

 ガドリが驚愕した表情を浮かべ、飛び立とうとしたルイの足をとっさに掴んだ。

 その途端、抱えていた女が半分崩れ落ち、その重さにガドリは膝をついてしゃがみこんだ。それと同時にルイも引っ張られ地面に落ちる。


 ガドリは女を地面にそっと寝かせフードをかぶせると、地面に転がっていたクナイをサッと手に取った。

 その様子にバスが顔をしかめ、警戒するように僅かに身構えた。

 しかし、ガドリはクナイをそのまま腰のあたりの服の内側にしまい、フードをかぶりスカーフを巻き直すと、辺りの様子をうかがった。

 そして僅かにためらうようにルイに言う。

「……申し訳ありませんが、呪符通信をテオ様に送っていただけませんか?」

「えっ!?」

 ルイは驚いた顔をした。

「(言葉遣いが急に丁寧に……!)い、いいですけど、俺、呪符帳持ってない……」

「あ、それなら……」

 バスはそう言うと、シャツの胸ポケットから小さな紙切れを取り出した。

 それをルイに渡し、辺りを見回す。

 そして、塀の内側に生える枯れかけた庭木の小枝を一本折ると、手でなぞるように炎の魔法を加えた。

 小枝は一瞬にして燃え上がり、あっという間に炭になった。

「ルイさん、これで書けますよ」

 そう言って炭になった小枝を渡す。

「おぉ!すごい……。(魔法って、こういう使い方もできるんだ……)」

 ルイは感心したようにバスから炭の小枝を受け取った。

「あ……。でも、なんて書けば?」

「私に……、このガドリに感応通信をお送りくださいと、お願いしてください」

 ガドリはそう言うと、ルイに丁寧に頭を下げた。

「あ、あはは……。わかりました……。(なんなんだ、この急な態度の変化は)」

 ルイは苦笑いをして紙切れに書き込むと、それを宙に放り投げた。

 紙切れは青白い炎を上げ一瞬にして消えた。


「これでいいですか?」

 ルイは、急に態度の変わったガドリに少し不機嫌そうに言った。

「ありがとうございます……」

 ガドリはルイに軽く頭を下げ、そのままの姿勢で沈黙した。


「それにしても、ルイさんがテオ様の知り合いだったなんて……」

 バスはそう言うと、足元に寝せられている女を抱きかかえて立ち上がった。

「テオさんって結構有名な人?なんですか?」

 ルイが苦笑いをしつつバスに尋ねる。

「有名も何も、魔道院長に次ぐ実力者ですよ。その魔力は全盛期の魔道院長を凌ぐとかなんとか……。魔道階位を持つもので、彼の名を知らない者はいませんよ」

「そ、そうなんだ……。俺、魔道階位、持ってないからな……。(テオさん、たしかにすごい魔力の持ち主だったけど……)」

 ルイはつぶやくように言うと、テオを思い出し苦笑いをした。


 バスが、フードのかぶった女の顔をのぞき込みながら言う。

「それにしてもルイさん、彼女に何をしたんですか……?なかなか目を覚ましませんね」

「あ、あはは。(しまった!魔力を吸い取り過ぎたか……。)たいしたことはしてないんだけど、そ、そうですね……」

 ルイは冷や汗交じりに笑った。

「バス様、その者を私に……」

 ルイの背後からガドリがそう言って、女を抱きかかえているバスの向かい側に立つと、そのままバスから女を受け取った。

 女は抱き手が変わっても気が付く気配がなく、ぐったりしたままだ。

「ありがとうございます」

 ガドリはそう言うと、バスに軽く頭を下げた。そして、ルイに向きをかえる。

「ルイ様。今し方、感応通信でテオ様から連絡が参りました。テオ様のご友人とはつゆ知らず、申し訳ございません」

 ガドリはそう言うと、ルイに深く頭を下げた。

「え(友人?)。こ、こちらこそすみません。テオさんの部下の人だと思わなくて……」

 ルイはそう言うと気まずそうに笑った。

 バスがガドリを見て言う。

「ここにいてもなんですし、家に来ませんか?」

 突然の言葉に、ガドリが戸惑ったようにバスを見た。

 バスがガドリの抱えている女を見て少し心配そうに言う。

「その……、彼女も目を覚まさないようだし……、ウチで休ませてはどうかと……」

 ガドリが首を横に振る。

「お気持ちだけ頂戴いたします」

「そうですか……」

 バスはため息交じりに言った。


「あ、あの……。ガドリさん。もう一度聞きますけど、なんでバスさんの家を覗いていたんですか?」

 ルイは話を戻すように言った。

 ガドリが申し訳なさそうな顔をする。

「バス様を護衛するようテオ様に申し付かっておりました……。それが、不安を煽るようなこととなってしまい、大変申し訳ございません」

「えっ、護衛……、テオ様が……」

 バスがそう言って顎に手を当て、何やら考えるそぶりを見せる。

(信用されていないわけじゃない……?テオ様のことだ。またフラガが……、バイエモンの配下が私に接触してくると思ったのかもしれないな)


「じゃ、町の中にもう一人いる変な動きをしてる人も、テオさんの部下なんですね」

 ルイは気まずそうに、ガドリの抱えている女の様子を見て言った。

「えっ!?」

 ガドリが驚いたようにルイを見る。

 その視線に僅かに動揺が見える。

「もう一人?そうなんですね……」

 バスがつぶやくように言った。

「いえ、そんなはずは……」

 ガドリはそう言うと、眉をひそめた。

 ルイが続けて言う。

「この町に入ってバスさんの魔力を探った時に、変な動きをしている魔力の気配が3つあったんですよ。そのうちの二つがお二人で……、あともう一人……。違うんですか?」

「……ルイ様。そのもう一人というのは、今はどちらにいるかわかりますか?」

 ガドリは冷静な口調で言ったが、その声に僅かに動揺が見える。

「えっと……、さっきは街の真ん中の辺りにいたけど……今はどうかな。――あ、ちょっと待ってください。もう一度探ってみます」

 ルイは抱きかかえられている女を気にしつつ、苦笑いをして地面に両手をついた。

 そして、先ほどと同様に気配のない魔力を探る無属性の魔法円を放つ。


 ルイの様子をバスとガドリが息を飲んで見ている。

(魔法?なんだろうか……?魔力の気配を感じない……。ひょっとしてルイさんの魔力は無属性?)

 バスは不思議そうな顔をした。


 ルイはゆっくり立ち上がると、両手を払って言った。

「街の真ん中あたりに騎士団のレオさんがいますね。そこから少し離れた辺りにいるみたいです」

「レオ様が?騎士団は王都に戻ったはずでは?」

 バスがそう言って首を傾げる。

「あ……。俺たちこの町に来る途中、レオさんに会ったんですよ……」

 ルイは、バイエモンのことを抜いて、門の前であったことをかいつまんで話した。


 ルイの話を聞いたガドリの顔が青ざめている。

「ガ、ガドリさん……?(やっぱり門の人が言っていた不審人物の目撃情報ってガドリさんたちだよな……)」

 ルイは苦笑いをした。

「私どもに、どうやら隙があったようですね。(町の人たちに目撃されていたとは……。戦乱直後の魔力の低下、おそらくそれが原因……。)それと、もう一人の不審人物、それは私どもの仲間ではありません……」

 ガドリはそう言うとそのまま沈黙した。

「え?じゃぁ、何者?」

 ルイが首を傾げる。

 バスが不安な表情を浮かべて言った。

「も、もしかすると、それはフラガの密偵では……」

 その言葉にガドリも頷く。


「フラガの密偵……」

 ルイは胸騒ぎを感じた。

「やはり、私の家に一旦行きましょう。衛門君を一人残しているのも心配だし、その女性もウチで休ませた方がいいと思います」

 バスが不安交じりに言った。

「あ、そう言えば……衛門君、大丈夫でした?」

 ルイはバイエモンを思い出し、不安交じりにバスに聞いた。

「大丈夫です。なんだかだいぶ疲れていたみたいで、あの後、部屋に案内したらベッドですぐに眠ってしまいましたよ……」

 バスも苦笑いをして答えた。


 不意に、ガドリが女性を地面に下ろした。

 そして、自身の服の内側からモスグリーンのマントを取り出すと、それをすっぽりと頭から身に纏い、女性をそのマントの下に隠すように再び抱きかかえた。

「バス様……。それでは、お言葉に甘えさせていただきます……」

 ガドリはそう言うと一礼をした。

「えぇ。では、ついてきてください……」


 廃墟地域を抜け、補修工事の音の響く西側の街区を東に向いて歩く。

「こっちから行きましょう……」

 野原になっている空き地を近道に、その先にある路地を差し、バスが言った。


 小さな裏路地を縫うように進む。

 背後を警戒するように、ガドリが一番後ろを歩いている。

 つめたい風にのってマルの魔力がシオウルの山から流れているのをルイは感じた。

「は、早く行きましょう……」

 モスグリーンのマントを揺らし、ガドリが何か感じたのか、警戒するように言った。


 戸の閉まったバスの家の裏口、バスが周囲を警戒し、鍵を開ける。

 目立たないように、ガドリを先に中に入れ、その後にルイが続いた。

「さすがに、家の中までは密偵も様子を探れないでしょう……」

 くらい家の中、バスはそう言うと、裏口から中に続く廊下の明かりをつけた。


「こちらの部屋に、その女性をどうぞ……」

 バスはそう言ってガドリを二階へと案内する。

 廊下を回り込んで、ガドリとバスが二階へと上って行った。

 ルイはそのまま薄暗い廊下を通り、最初に案内された応接室へと入った。


「暗いな……」

 ルイは手探りに、壁面に部屋の明かりのスイッチを探した。

 しかし、ドア付近を探してみても、壁面にそれらしいものは見当たらない。

 ルイは部屋の真ん中にあるテーブルの横に立つと、天井を見上げた。

 装飾的な透かしの入った傘が被った、丸い明かりがぶら下がっている。

「電球……?じゃないな。なんだ?」

 ルイはつま先立ちになってテーブルに手をつき、暗さに目を凝らした。

 丸く薄いガラスの中に、直径1センチもないくらいの小さな魔晶石が入っている。

「へぇ……。そうなんだ。魔晶石を明かりに……」

 よく見れば傘の装飾は魔法円になっており、その一か所に細くスリットが入っていた。

 ルイは椅子に立つと手を伸ばし、傘のそのスリットの部分をつなぎ合わせた。

 と同時に、ガラスの中の魔晶石が光り、薄暗く部屋の中を照らしだした。


「なるほどね……」

 ルイは感心したように椅子から降りた。

 テーブルの上には、ルイが出て行った時のままに飲みかけの冷めたティーカップが置いてある。

「片付けた方がいいかな……?」

 そこへ、バスとガドリが部屋に入って来た。

 ガドリはモスグリーンのマントを羽織ったままだ。

「ガドリさん、どうぞ座ってください」

 バスがそう言って椅子を示す。

 ガドリは軽く頭を下げると、入り口に近い側の椅子を引き、僅かに辺りを警戒するように座った。


「あの、ガドリさん……。あの女の人、まだ……目を覚まさないですよね?」

 ルイは遠慮気味に聞いた。

「そうですね……」

 ガドリはどこか不審そうにルイを見た。

「ルイさん、彼女なら二階の階段を上ってすぐにある部屋に休ませました。衛門君はその北隣の部屋で寝ていますよ。様子を見に行ってみますか?」

 バスが、テーブルの上のティーカップを片付けながら言った。

「あ……、はい。そうですね、ちょっと見てきます」

 ルイは気まずそうに部屋を出た。


 二階へと続く暗い階段。

 ルイは壁伝いにゆっくりと階段を上ると、バスが言っていた部屋の前に立った。

(うーん、そろそろ目を覚ましてもいいはずなんだけどな……)

 ルイは少し不安を覚え、軽くドアをノックして部屋の中に入った。

 来客用の部屋と思われる殺風景な部屋。

 薄暗い部屋の中にはローチェストと窓際にベッドだけが置かれている。


 ルイは不安を抱いたまま、ベッドに近づいた。

「……まだ、起きてないよな」

 女は、フードをかぶったまま、顔を半分隠すように薄地の布をかけて寝かせられている。

 ルイはその顔の辺りに耳を近づけた。

 熟睡しているような寝息。

「うーん、やっぱり……(魔力を吸い取り過ぎたみたいだ……。)どうしよう……」

 ルイは女の寝ているベッドに浅く腰を掛けた。

 そして大きくため息をつき、頭を抱える。

(魔力を吸い取ったんだから、単純にその逆で、魔力を送り込んでやれば……?それで起きるかな?)

 ルイはベッドに座ったまま、女の被っているフードを外し、その顔に右手を添えた。

「……どうだろう?」

 不安な心境のまま、添えた右手に魔力を送る。

 しかし、魔力は送った量の半分も女の中に入っていかない。

「うーん、場所が悪い?」

 ルイは体勢を立て直し、薄地の布をめくると、女の胸元に手を当てた。

 そして、先ほどよりも慎重に魔力を送り込む。

 ルイの手が僅かに光る。

「……」


 ルイは女の魔力がちょっとずつ回復していくのを、手を通じて感じた。

(この場所の方がいいみたいだな。もう少し……)


 少しして、女が身体を動かした。

「あ、気が付いた!?」

 ルイは照れたように慌てて胸元から手を離し、ベッドから立ち上がった。

 女はルイを見るなり、ベッドから起き上がった。

 そして、慌てたようにフードをかぶる。

「だ、大丈夫?おかしいところない?」

 ルイは、動揺を抑えるように言った。

 女は壁際に背中をつけ、そのままドアのある方へとズリズリと横歩きに移動した。

「あ、あはは……。そんなに警戒しなくても……」

 ルイは苦笑いをした。

 そして続けて言う。

「ここは、バスさんの家だよ。ガドリさんが君を運んでくれたんだ」

 女は驚いた顔をした。

「ガドリ……、ガドリが?」

「うん。今、下の部屋にいるよ。だから、まだ休んでて大丈夫だよ……」


 女は少しの間、何か考えるようにドア横の壁際に立ち止まっていたが、急に肩を落とし、フードを脱いだ。

 そして、ルイに軽く頭を下げ言う。

「テオ様のご友人……でしたか」

「え?あ、うん……。(なんで急にわかったんだろ?……あ、さっきガドリさんが言っていた感応通信ってやつ?)」

「私は、ルテニと申します。この度は大変失礼をいたしました……」

 ルテニは気まずそうな顔をして言った。

「え、あ?いや……。こちらこそ、テオさんの部下の人だと思わなくて……――」

 ルイも苦笑いをして答えた。

「――で、身体の具合はどうかな……?どこか変なところ、ない?」

「……ありません。ご心配をおかけして申し訳ございません」

 ルテニはそう言うと、背後のドアノブに手をかけた。


 不意に、ルテニが立ち眩みを起こしたかのようによろけ、僅かに開いたドアにつかまった。

「だ、大丈夫?」

 ルイは慌ててルテニの傍に駆け寄った。

 その肩を支えようとした途端、ルテニがルイに手のひらを向けそれを制止する。

「大丈夫です。ありがとうございます……」

 ルテニはそう言うと、そのまま部屋を出て少しふらつきながら階段を降りて行った。

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