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第7話 幻のゲート

 上畑がトラックに乗ってエンジンをかけた。

 作業を終えて遠巻きに門を見ていた冒険者たちが、大きなエンジン音に驚いて後ずさる。

 美香もまた、進路の邪魔にならないように脇に避けた。


「じゃあ、上畑さん、気をつけて。向こうに戻れたら、連絡くださいね!」


「ああ、高梨さん、いろいろとありがとう。戻ったらメッセージ送るからなー」


 トラックはゆっくりと進み、その鼻先でスイングドアを押す。

 開いたドーアのむこう側は、土ぼこりで全然前が見えない。そのままゆっくり前進したトラックはやがてドーアを通り抜けた。

 そしてスイングドアが反動で閉じたその後には、もうトラックの姿はこの世界のどこにもなかった。


 トラックを通した大きなドーアは、その役目を終えたのか、それとも単に蔓草の強度が足りなかったのか、すぐにほどけてバラバラに壊れた。

 美香の手の中には、茶色いリボンの鍵がまだ残されているけれど。





 全てが終わって夕方、美香は近くの村に元々あったドーアを使って、アシドに帰った。そこに居た冒険者の大半と、国軍の半数も一緒に連れて。

 残った者たちはこの後、避難した村人たちが戻ってくるのを助ける仕事があるのだ。


 全員が通り抜けて、最後にダダと美香がドーアを通る。ぱたんと扉が閉まればそこは、いつもの見慣れたアシドの街壁の前だ。

 ドーアから出てきた大勢の人たちが受付でごった返している。

 むこうの道には避難して来ていた人達が、思いがけず早くに家に帰れることになって、慌ただしく西へと移動している。


 美香達4人とギルドマスターは申し訳なく思いながらも、先に顔パスで通らせてもらい、冒険者ギルドの所長室へと向かった。


「さて、今回の事の顛末を聞かせて欲しいのだが」


 そう言いながらも、ギルドマスターは、魔王が現れてからのことを美香に語った。

 今日の早朝、平野の穀倉地帯で大きな魔力の揺らぎが観測された。時期的にも危険が大きいだろうからと、付近の住民は割と早い段階で近隣の村に避難して様子を見ていたようだ。

 巨大なトラックが現れて畑をぐるぐる回りはじめたので、これは魔王に違いないと、美香が呼び出されたのだ。


 美香も呼び出されてから今までのことを簡単に報告した。

 魔王が美香の世界から来たこと。しかし来たくて来たわけではないこと。知らない場所にいきなり飛ばされて、混乱しながら帰り道を探していたこと。

「ここからは私の推測なのだけれど……」


 美香は思ったのだ。

 魔物は魔力が多く溢れていれば、たくさん生まれる。

 つまり魔力が異常に増える時期がこの大発生。魔力を観測出来れば、その時期や場所、規模も想像できる。そしてそれに連動して魔王が現れるという事は、魔王が現れると予想される場所こそが、魔力の増加が最も激しい場所なのだろう。そこまではおそらく間違いない。


 そんな場所で美香が拾った鍵がある。


 ドーアの一貫性のない形、大きさ、材質、そして鍵穴の形。

 それに対して鍵は常に一定の形だ。不思議なことにどの鍵穴にも合う。まさに魔法の道具。

 そんな鍵が、美香の世界から現れた巨大なトラックのそばで見つかった。

 つまり向こうの世界と繋がるほどその場にあふれていたエネルギーが凝縮してできたのがカギだというのが、一つ目の美香の推測。


 もしくは二つの世界を結ぶ目に見えないゲートが元々あちらこちらにある。それが魔力の増大により、ドーアと鍵というその辺に普通にある二つのアイテムを利用して使えるようになったというのが二つ目の推測。


 どちらが正解なのか、または他にもっと納得できる仕組みがあるのか。

 今ここで答えは出ない。ただ、無事に危機を乗り切ったのを喜ぶだけだ。

 そして魔王や鍵の謎を解き明かすのは、おそらく美香ではないのだろう。

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