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第10話 また今度、一緒に来よう

「さあ、出来たよ!みんな運ぶのを手伝ってね」


 大きさの違う皿には、それぞれの食べれそうな大きさの魚と野菜が盛りつけられている。

 魚は綺麗な黄金色に焼かれ、良い匂いが部屋中に広がった。

 ガットが買っていた丸い小さなパンが、テーブルの真ん中に置かれた。


「いただきまーす」


 先ほどまでの美香の料理は無かった事かのように、みんな自然に手を合わせてから、勢いよく食べ始めた。


「う、うまい」


「やっぱりパパの料理は最高ね!」


「もしや、美香のパパさんは名だたる料理人なのですか?」


 ダダが大き目な野菜にソースをつけて口にほおばりながら聞いてきた。よほどソースの味が気に入ったようだ。

 夫は嬉しそうにはにかんで笑い、美香はにこにこ笑いながら否定した。


「いえ、パパは普通のサラリーマン……えっと、書類書く仕事の人よ。でも料理は上手なの」


 休日の昼に家族が喜ぶからと始めた料理は、思いのほか夫の性格に合っていたらしい。最初は皮をむいたり切ったりと手伝っていた美香だったが、最近では放っておいても大丈夫になった。

 味も回を重ねるたびに向上し、今では子供たちも休日は豪華な食事にありつけると期待している。


「本当に、パパの料理は最高だわ」


 美香はふふふと笑いながら、あっという間に皿を空にした。




 竜魚が聞いていたよりもずっと癖がなく食べやすい魚だった理由は分からない。考えられるのは、住んでいた場所がとても美しい水だったこと。または普段食べられるよりもずっと大きくなっていたので、その過程で変質したということ。

 どちらかが正解なのか

 その答えは今、滝壺の中で凍っている1メートル越えの竜魚が持っているのかもしれない。


 冒険者ギルドから売り出され誰かの家で食べられた竜魚は、きっと近いうちにアシド中の評判になるだろう。




 思いがけない討伐依頼ですっかり時間を使ってしまった美香たちは、食事を終えるともう、帰宅時間が迫っていた。

 慌てて持ってきたお土産を広げて、みんなで大騒ぎだ。着せ替え人形にされた花は、恥ずかしそうに頬を染めている。

 ズーラは花に着せた猫耳フードのパーカーに興味津々。自分がもらったビーズとワイヤーのネックレスは早速身につけている。

 ガットは興味深げにスノードームを揺らし、ダダも自分専用のビーズクッションに寝転んでご満悦だ。

 小さい家だがそれなりの広さがあるリビングは、こうして少しずつ物が増えて、ギュウギュウに暖かさが詰まっていくのだろう。


「そうか、ここがママの隠れ家になるんだね。俺も時々遊びに来てもいいかい?」


「もちろんよ、パパ。今度は大きな鍋とフライパンを持ってくるからまた何か作ってね!」


 美香のセリフに、嬉しそうに頷く夫だった。

 こうして美香の初めての、プライベートでの異世界タイムは、穏やかに幕を閉じた。


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