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第8話 魚を持って帰ろう

 体長70センチを超える竜魚を11匹のせると、小さめの荷車は丁度いっぱいになった。

 リザードマンが引っぱるのに適したサイズの荷車だが、今日はメンバーの中で一番力があるという事で、夫が引いている。


「……ママ、これ……思ったより、つ、ら、い」


「サイズが合わないから仕方がないわね。後ろから押すから、頑張って!」


 荷車の後ろのふちに花を座らせて、美香がゆっくり押す。夫婦の共同作業だ。

 ちょこんと座っていた花が山積みの魚を見て、こてっと頭を(かし)げた。


「これ……冷やす?」


 冷やしたほうが良いけど……という美香の答えを聞いて、うんと頷いた花。魚の上に手をかざして、魚の表面を撫でるように手を振った。小さな手のひらから白い(もや)のようなものが出て、魚の表面を伝い下に落ちる。

 その靄に触れた所が薄く凍った。


「まあ!花、すごいわね。魔法が使えるの?」


「冷やす、練習するの。子どもの仕事。ママはもっとすごい!」


 自慢げに言った後で、母親の事を思い出したのだろう、うつむいてしまった。


「そう……春になったら、お家に帰りましょうね」


 涙こそこぼさないものの顔色の晴れない花に、美香は胸の中でもう一度言った。きっとお家に連れていくわ、と。



 夫は中途半端な姿勢で荷車を引きながら洞窟の中をゆっくり進み、ドーアをくぐってアシドへと出た。

 アシドの受付さんも、大きな魚に改めてびっくりだ。

 街中に入れば道も綺麗になって、荷車は軽く前に進むようになる。夫は腰を叩きながら、「あとちょっと!」と気合を入れなおした。




「どうだ、竜魚は討伐できたか?」


「それが……」


 ギルド長に聞かれて言葉を濁すダダだったが、黙っている訳にもいかず事の顛末を話した。


「これ以上の大きさに進化だと!?しかも、その途中で凍らせて放置……」


 渋い顔で(うめ)くギルド長。氷は早々に解けるようなものではなかったので、職員が後日確認に向かい、状況を見て依頼料や今後の対応を決めることとなった。


「依頼料は後日だか、この素材は今日買い取ろう。一匹あたり、鱗のサイズが大きいので鱗だけで6万、ヒレと骨は使えるので4千G、肉は一応食べられるので千Gだ。1匹辺り合計6万5千Gになるが、十一匹と先に受け取った一匹、全部で十二匹買い取ればいいか?」


「思ったより肉が安いのね、美味しくないの?」


「あまりな。少し癖があるんだよ。それが好きだっていう酒飲みもいるがな」


 ふうん、と言った美香は諦めたと思いきや5匹分の肉を持って帰ることにした。

 本日の臨時収入、77万5千Gプラス巨大魚の三枚おろし」を十切れ!

 大きな袋に入れて、花が冷凍の魔法をかけて……


 さあ、どうやって食べようかしら!


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