第6話 今日も第4倉庫へ
それから2か月、美香の手術は無事終わり、術後の組織検査の結果は初期の、ステージ0だった。入院期間も短く、担当医からもすぐに仕事復帰の許可が出た。
「高梨さん、本当にここの、ほらこの辺りだけが癌細胞で、他はもう体中調べたけど、びっくりするほど超健康体ですよ。まあ、癌細胞はこの先どこに出来るか分からないから、油断しないで定期検診に通ってくださいね。それにしてもこの写真だけど、最初に見つけた時よりも癌細胞がずいぶん小さくなっていたので驚きました。あまりそういう事ってないんですが、良かったですね」
担当医が首をかしげながらも太鼓判を押してくれた。
手術からまだ1か月しかたっていないが、美香は順調に回復していった。今日から仕事にも復帰できる。
「店長、帰ってきました!またよろしくお願いします」
「美香ちゃん!良かったわあ。ほんと、美香ちゃんが選んでくれた商品のほうが売れ行きがいいのよ。復帰して早々で悪いけど、第4倉庫に行ってもらってもいいかしら?」
「はい。もう運動も無理をしなければ大丈夫って言われてるくらいですから」
「じゃ、いつものように、殺虫剤忘れずにね」
たった2か月休んだだけだが、店長のウインクが懐かしくて、また涙が出そうだった。
「はい。じゃあ行ってきます」
台車を押して、緑色のリボンが付いた鍵を使い、美香は久々にその扉を開けた。
扉の向こうには、ごつごつした岩壁の、奥の知れない洞窟があった。
「おかしいわねえ。店長と見た時には、確かに普通の倉庫だったんだけど」
首をかしげながらも、今日も美香は第4倉庫の奥へと、レーキを握って進むのだった。