第3話 小さくなった雪だるま
少しだけ小柄になった雪男は、それでもまだ巨大で、しかもさっきまでよりも少しだけ動きが早くなっている。
休む間もなく、美香たち4人は再び雪だるまの身体から雪を剥ぎ取る戦いを始めた。
「足の付け根を狙って!さっきのように転がしましょう」
ダダが上から指示を出しつつ、隙をみて頭に短剣を突き刺したりしているが、ダメージを負った様子は全くない。本体は雪玉の奥深く、まだ攻撃の届かないところにあるのだろう。
ひとまわり小柄になったおかげで、雪男の足の付け根がガットにも攻撃しやすい位置になった。美香と二人で、すごい勢いで関節を削っていく
ズーラも炎の威力を少しずつ上げてみたが、こちらは思うように効果が出ない。
「ダメ、私の魔法じゃ、あまり効果が出ない!」
「ズーラ、だったら治癒を。美香とガットの腕に」
雪男の纏う雪は冷たい上に締まっていて固く、美香とガットの手は手袋の下で凍えて赤くなっていた。
少し動きが早くなったとはいえ、雪男の動きは遅く、その攻撃は当たらない。
ズーラも少し後方にいたのだが、美香とガットに近付き、タイミングを見計らいながら治癒の魔法をかけた。
そうして雪男を削って足を切り離すこと数回。
徐々に小さくなっていく雪男はついに美香と同じくらいの身長になった。
「よし、次で倒すわ!」
威勢が良いセリフとは裏腹に、美香はもうヘロヘロだ。もう2時間も雪と格闘しているのだから。
そして、そんな美香たちと反対に、身体が小さくなるにつれて動きがよくなる雪男。
最後の一撃と、美香がレーキを構えたその時、急に背を向けて逃げ出そうとした。
「あ、待ちなさーい!」
雪男は小さくなれば逃げるのが普通なので、そのまま逃がしても依頼は完了だったのだが、この二時間の戦いに思考力が落ちていた美香は、反射的に手に持ったレーキを投げつけていた。
レーキに短い足を縺れさせてこけた雪男に、ガットが駆け寄り、ついに頭を切り落とした!
「終わったあ~」
全力で戦って気の抜けた一同がほっとした。その時……
雪男の胴体がむっくりと起き上がり、そのまま駆けだそうとした。
呆気にとられ、動きが止まる一同。
しかしそのまま逃げてしまうと思われた雪男だが、たまたまレーキを投げて手が空いていた美香は、かわりの武器として殺虫剤をポケットから取り出していたのだ。
シュー
美香の手から放たれる毒霧が、今にも走り出しそうな雪男の胴体を包んだ。
再びその場に倒れ込んだ雪男に、美香が駆け寄り、手に持った殺虫剤の缶でザクザクと雪男の胴体を削り取っていく。
「中身を確かめないと!殺虫剤を使ったから、みんなは来ないで!」
遠巻きに仲間達に見守られながら、雪を剥がして、その中には……
灰色の毛皮に包まれてぐったりと目を閉じた、身長50センチほどの幼い顔の少女がいた。