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第1話 雪男を探せ!

 神社の社の扉はドーアだった。美香の鍵は第4倉庫に紐付けされているので、無意識で使えばどのドーアからでも第4倉庫に通じる。

 これで、晴れて仕事とは関係なくいつでも通れる入り口を見つけたわけだが……


「寂れているし通りからは見えない位置にあるとはいえ……安心して使えるとは言い難いわね」


 美香は予備の入り口として、場所だけ確認するにとどめた。

 鹿野くんもバレて捕まったりしませんように。

 帰りにもう一度、賽銭を入れて願い事をして帰ったのだった。





 鹿野と出会ってから一週間後の火曜日、美香はいつものようにアシドのドーアの前で、ダダ達と合流した。




 前の土曜日は、鹿野と連絡を取って、(くだん)の村で落ち合った。

 解決してからすぐに戻った村人たちの手で、もうほとんど修復ができていたため、畑の開墾を手伝って汗を流す。

 普段運動不足ですぐにヘタレる鹿野だったが、それでも小柄な村人が多いこの村では、一人前の戦力になったようだ。

 休憩中には美香が持ってきた魔物図鑑を見ながら、この世界の人類と魔物について語り合った。


 一緒に畑を耕していたリザードマンの青年が、鹿野に図鑑の絵を見せながらいろいろと説明している。そうだ、言葉は通じても、字はまだ読めないのだった。

 あれこれ楽しそうに聞いている鹿野と、それに身振り手振りで答えている青年に、面白がってまた何人か、鳥族と妖精族の青年も近寄ってきた。

 みんなから寄ってたかって説明されて、混乱するかと思いきや……元々美香とは違いラノベ好きな鹿野は、すぐに色々なことが理解できたようだ。


 平日は学校にも頑張って行ってる。

 そうはにかみながら報告してくれた鹿野の頭をよしよしと撫でる美香。


「頑張ってるんだ。えらいね」


 無理そうなときは、ここに逃げて来てもいいけどね。そう言って、美香も笑った。





 そんな風に鹿野と村人たちも橋渡しも無事終えて、今日は先週行く予定だった雪山の依頼である。

 この冬一番の寒さに震える山村に、雪男が現れて猛威を振るっているらしい。

 その村は、鉱山のドーアから2時間ほど歩いた場所にある。……普段ならば。

 今日は鉱山も雪に埋もれ、一歩歩くごとに倍の時間がかかっている。

 ガットが無口なのはいつも通りだが、今日はズーラも寒さに凍えて口数が少ない。

 しんしんと降り積もる雪を踏みしめて、山村の近くにあるドーアにたどり着くのが今日の目標だ。


「雪男の特徴は?」


「コアになる魔物が動かす、雪で出来たゴーレムのようなものです」


 美香の肩で寒そうに羽を膨らませたダダが説明してくれた。

 雪男は山に住む小さな魔物で、夏の間はどこに隠れているのか、見る事がない。冬になり雪が積もると現れて、身体に雪をまとい、徐々に巨大化していく。

 身の丈2メートルに迫る大きさになると人里に降りてきて、民家を壊し、家の中を荒らすのだ。小さな村では戦える者の人数も多くはなく、撃退するのに苦労する。


 弱点が火なのはわかっているが、大規模な炎の魔法は雪崩の危険があるために使えない。小さな炎では効果も小さく、ある程度雪を溶かされると山に逃げ帰るため、雪男を討伐した例はほとんどない。


「巨大化した雪男は毎年現れるけど、核になっている魔物は謎に包まれてるの。それにしても寒いわ」


 そう言って震えながらズーラが身を寄せてきた。


「例年は2メートルよりも小さいうちに発見して、雪男が体に纏っている雪を削り落として追い返すのですが、今年は急な寒波に見舞われて、先週山で発見された時にはすでに2メートルを超えていました。

 村人たちの手には負えず、冒険者も何組か討伐の依頼を受けていますが、雪に紛れてその後は発見できていません」


「……ちょっと聞いていいかしら。巨大化した雪男ってどんな形?」


「大小の球をふたつ縦に並べたものに、短い手足が付いている、と言えば分かるでしょうか」


「……分かるわ。だってほら、そこに」


 際限なく落ちてくる雪のせいで視界は悪いが、少し向こうの道の脇に大きな雪の塊がある。そしてそれは、むっくりと起き上がってこちらを見た。

 身の丈4メートルもあろうかという、巨大な雪だるまだった。


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