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第11話 村人と和解

 ここに住んでいた村人のほとんどは、アシドの町に避難している。そして村長と数人の男たちだけがここから20分程離れた村にいて、時々この村の様子を見に来ていた。


「ダダ、村の人達をここに連れてきてもらってもいい?」


 自分たちから出向いても良いが、大きな体の鹿野と美香が行けば、また余計に脅すことになるだろう。

 ダダは歩けば20分の道のりを、まっすぐに飛ぶので10分足らずで到着できる。

 30分程で帰ってくるだろうから、その間にお弁当を食べて待つことにした。


「鹿野くんはお昼ご飯は持ってるかしら?」


 鹿野はポケットをパタパタと叩いて、


「あ、これが昼ごはんです」


 とシリアルバーを数個取り出した。

 美香は呆れた顔で見たが、最近の若い子の食事なんてこんなものかもしれないとも思う。

 飲み物は無かったので、ガットの水筒の魔道具からもらった。


「水が……凄い!魔法だ」


 美香はもう慣れたもので、昨日の残りご飯を詰め込んだだけの弁当箱を出して、さっさと食べている。


「あの……おばちゃんは毎日ここに来てるんですか?」


「いいえ、スーパーのお仕事で来てるの。あ、これ内緒にしてね?」


 だから週に二日だけよ。

 と美香が言うと、鹿野が自分も連れて行って欲しいと頼んできた。


「それは無理ね」


 美香の返事は、取り付く島もない。


「鹿野くんは平日は学校があるし、この世界での最初の仕事は冒険じゃなくてこの村の壊したところを直すことだと思うのよ」


 そう言われれば、返す言葉もない。ガックリと項垂れる鹿野の所に、恐る恐る、この村の人達が近付いてきた。


「オークを鎮めてくださったと伺いました」


 村長は妖精族の女性で、虹色の透き通った羽を持っている。髪もまた同じようにキラキラと美しい。輝く髪や羽に目を奪われがちだが、よく見ればくりくりっと丸い目が可愛い、愛嬌のある顔のおばあちゃんだ。

 村長の他に、鳥族の男が二人と、リザードマンの男が一人いる。


「初めまして、オーガの美香。私はこの村の村長のリリです。ありがとうございます」


 そう言って、美香の前まで来て、頭を下げた。

 美香もまた鹿野を促して、一緒に頭を下げた。


「この子はオークではなく、私の世界の仲間なの。この村の皆さんには迷惑をかけました。すみません」


「……ごめんなさい」


「いえ、これ以上暴れるのをやめてくれたらいいのです。殲滅の毒霧の皆様にはお世話になりました」


「……殲滅の毒霧って」


 小さい声で呟いたのは、鹿野だ。

 今度はダダとガットとズーラが、赤い顔をして俯いた。

 なぜもっと早く、無難なパーティー名を決めておかなかったのだ。

 もう手遅れ……



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