第6話 反省点を改善
ドーアでダダ達三人をアシドに送り届けてから、そのまま再びドーアをくぐり、帰りはほんの2分程で第4倉庫に帰り着いた。
仕事を済ませて家に帰った美香は、しばし考える。今日の、初めての戦いらしい戦いについて。
大事には至らなかったが、美香の殺虫剤は他の三人を危険にさらした。そしてまた、不用意に洞窟に入っていきなり出口を塞がれたのも、反省すべき点だろう。
どうすればよかったのか。
……
……
……そうね。次、頑張るわ。
数分間、軽く反省した後、気持ちを切り替えた。
学校から帰ってくる子どもたちを迎えるべく、これからの時間は家事にいそしむのだ。
日曜日は、家族と寒々しい冬の公園で遊んだ。と言っても、ほぼ虫と爬虫類探しなのだが。最近勘が鋭い美香は石の下に冬眠中の蛇を見つける事ができた。子どもたちと一緒に静かに観察し、蛇が気付いて起き出す前にまたそっと石を被せておく。
その日の夕方から月曜日の空いた時間に、次の冒険に向けての全員の装備を考え、準備しておいた。少しは自己負担になるが、仲間の安全を考えれば手抜きは出来ない。
そして翌日の火曜日、美香の考える最強の殺虫剤対策装備を持って、3日ぶりにむこうの世界に向かった。
アシドのドーアの前ではいつものように三人が並んで待っていた。その元気そうな姿に、思わず「はー、良かったわ」と声が漏れる。
今日はこのまま鉱山まで、小屋のドーアを使って一気に飛ぶ。
「今日は荷物が沢山ですね、美香」
前回と違ってパンパンに膨れ上がったリュックを見て、ズーラが話しかけてきた。
今日はリュックだけではなく台車の上に掃除道具を突っ込んだコンテナボックスを乗せて、持って来ている。
「この前はちょっと準備不足だったって反省したのよ。さあ、一度小屋に行って装備を確認しましょう」
ガラガラと、台車ごと荷物を小屋の中に持って入り、リュックを下した。中身を取り出して三人に手渡す。
「さあ、これを着てね」
「これは……」
「この前みたいに殺虫剤やイブリースの死体で汚れたら大変でしょう?気分も悪くなるし。だからこれを用意したの。ほら、こうやって着るのよ」
ダダの羽根、ガットとズーラの尻尾は収めることができなかったが、それ以外の殆どがカバーできる純白の装備。
それは給食セット。
前ボタンで着やすい割烹着は、邪魔にならないように裾を短めにして、代わりにぶかぶかのズボンを用意した。ウエストがきゅっとゴムで締まっていて、邪魔にならないように足首にもゴムが入っている。尻尾は外に出せるように、お尻のところには切れ込みを入れてみた。
頭にはゴムの入った丸い帽子。そしてマスク……
「……美香、この装備は何かおかしくないですか?」
「え?どこか合わないところがある?ダダのは私が作ったのよ。動きにくい?」
「いえ……そういうのじゃないんですが」
飛び跳ねたり剣を振ってみたりして、動きを確かめる三人に、目を細める美香。
自分も大きな白い割烹着を取り出してコートの上から着ると、ポケットに殺虫剤を入れ、台車を押しながら鉱道へと向かった。