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第1話 パーティー始動

「おはようございまーす」


「あら、美香さん、おはようございます。今日は第4倉庫と仕入れの日ね。いつもありがとう」


 台車と装備(掃除道具と殺虫剤のこと)をとりに事務室に入ると、いつもニコニコな店長がいた。


「相変わらず売れ行きは上々よ。先々代は仕入れは受け取るだけだから大丈夫だって言ってたけど、無理なこと押し付けられてない?」


「はい、大丈夫です」


「じゃあ、何か困ったことがあったら言ってね」


「はい」



 忙しそうに店舗に戻る店長を見送ってから、第4倉庫へ行った。何も考えずに戸を開けると、そこはいつもの洞窟だ。台車を運び込んで戸のそばに置いてから、背負ってきたリュックの中に予備の殺虫剤を2本入れる。

 右手のレーキは手に馴染んだメインウエポン。防御力の高い厚手の黒いウールのコートを着て、大きなポケットに殺虫剤のスプレー缶を突っ込めば準備オッケーだ。アシドのドーアをイメージしながら、もう一度戸に鍵を差し込み回した。


 ドーアの向こうにはアシドの街壁が見える。その手前には今日もダダ、ガット、ズーラの三人が仲良く並んで待っていた。




 ドーアの出口で見張りの人にギルドタグを見せ、名前を記録してもらった。美香の話は聞いていたらしく、サッと見てさらさらと読めない字を書いている。


「ねえ、ダダ、そのうちこちらの文字を教えてもらってもいい?」


「もちろんですよ」



 これから美香たちは、パーティーとして初めての依頼を受けて鉱山に向かう。


「アシドから歩いて三時間ほどの場所にある鉱山なのですが、しばらく前からイブリースが大量発生して採掘が止まっているのです」


「イブリースと言えば、あの黒い悪魔みたいなものよね?」


「はい。これを……」


 ズーラが一冊の本を手渡してきた。


「この国に住む住人が子どもの頃に学習する、魔物図鑑です。危険度、発生地、避け方、倒し方などが書かれています。美香はまだ字が読めないので、これで見た目だけでも覚えてくださいね」


 イブリースのページには、黒い羽と尻尾を持った奇怪な生き物が描かれていた。周りにはいくつもの注釈がついているようだ。早く文字を覚えよう。本好きの美香はそう決心した。


 アシド近郊は魔物や危険な獣も定期的に討伐されているので、比較的安全に歩くことができる。今日は徒歩で鉱山の近くのドーアまで行く事にした。


「乗り物もあるんですが、この辺りの人には美香の事を覚えて欲しいので、徒歩で移動しようと思います。いいですか?」


「ええ。私もこの世界をもっと見たいから」


 ダダが先頭を歩き道案内、無口なガットが後ろを警戒しながらついてくる。美香は同性のズーラと並んでこの世界の事を聞きながら、珍しい風景や道行く人々を、目に焼き付けていくのだった。



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