第10話 パーティー結成
その後、細かい取り決めがほぼ隆行とギルド長の間で交わされた。
美香は与えられた条件に頷くだけだ。
隆行の様子を見てもどうやら魔王は人間らしいので、交渉できないこともないだろう。言葉さえ通じれば、こんなかわいい生き物たちと無為に争う人なんて、そうそういないだろうから。
と、非常に楽観的に受け止める美香。取りあえず、発行されたギルドタグを貰い、正式に冒険者ギルドに所属することになった。
「地理や風習など、困ることも多いだろうから、魔王討伐まではギルドから、この三人を補佐に付けよう。ダダ、ガット、ズーラ、頼んだぞ」
「……まったく。今更断るわけにもいかないでしょう。よろしくお願いしますね、美香」
「美香の力になれるよう、頑張ろう」
「女同士、よろしくお願いしますね、美香」
これが後に、魔王撃退の立役者として歌われたパーティー「殲滅の毒霧」が正式に結成された瞬間だった。
……本人たちが名乗ったわけではない。
契約が済むと、パートタイムの終わりの時間もあるので帰りはドーアを使って第4倉庫まで戻ることになった。
「では次は4日後、土曜日の朝8時に、アシドまでドーアで飛んで来るので、ドーアの前で合流しましょうね」
「ええ。美香もお弁当を忘れずに。水くらいはありますけど、食あたりは怖いですから」
ダダ達に手を振って、ドーアをくぐると、そこは第4倉庫の中だった。入り口付近に置いていた台車の箱の中には、約束通り倉庫の中で拾えるいろいろなものが入っている。
「今日はご苦労様じゃった。美香さんは疲れとらんかの?」
「大丈夫です。タッキ……隆行さんは大丈夫ですか?」
「これでもS級冒険者じゃからな。ほっほっほ。では次からは美香さんだけで行ってもらうことにして、わしは別の入り口から、少しアシドから離れた地域の魔物の討伐に向かうとするよ。美香さんもケガなどせんように、くれぐれも気をつけてな」
商品を乗せた台車を事務所に運び、タイムカードを押せば今日の仕事はおしまいだ。
行きには持っていなかった冒険者ギルドのタグが、美香の胸元でひんやりと存在感を出している。