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第9話 ギルドからの依頼

 ギルド長の話をまとめると、次のようになる。

 この世界には定期的に魔王が出現する。魔王が現れる時期は必ず、先ぶれとして各地で魔物の被害が頻発する。

 賢者の予言によると、魔物を抑え、魔王を退けるには美香の助けが必要らしい。

 美香には、冒険者登録をして魔物を倒しつつ実力をつけて、やがて現れるであろう魔王と戦ってほしい。

 せっかく一緒に来てくれたので、出来れば隆行にも魔物退治を頼みたい。


「えっと、魔王と戦えと言われても、多分それは無理じゃないかと思います。戦ったことなどないし。魔物は殺虫剤でどうにかなるとしても、ここには週に二日だけ、一日6時間しか来れませんので」


「美香の仕事についてはダダから報告を受けている。ダンジョンの最下層の魔物の始末と、美香の世界に持ち出すものはこちらで集めて箱に入れておこう。移動はドーアを使えば時間短縮になるだろう」


「ちょっとよいかの?外の世界に持ち出すアイテムは元々美香のテリトリーにあるものじゃ。報酬にはあたらんぞ。さらに言えば、美香は我が社と契約してここにいるので、ダンジョン奥のドーアから持ち出したものを美香の報酬に当てることは出来ん。美香自身に対して、どんな報酬を準備してくれるのかの?」


 ギュギュウっと唸って、ギルド長はしばらく考え込んだ後、何かを決心したかのように話し始めた。


「それではこうしよう。ダンジョンの最下層で採れるアイテムはすべて、美香が持ち出す箱に入れる。これは美香の仕事の肩代わりだが、こちらからお願いした依頼なので費用は国とギルドで負担する。美香が討伐した魔物に関しては相応な報酬を、こちらの世界の美香の口座に振り込もう。それとは別に、魔王が現れた時討伐の依頼を受けてもらえるなら、ダンジョンとは別の、美香の世界に通じるドーアの鍵を貸与しよう。魔王を討伐した暁にはその鍵を譲渡しアシドに美香の住居を用意しよう。そうすれば美香はこちらにいつでも来れるようになり、報酬で物を買って自分のドーアから持ち出す事ができるだろう」


「つまり、魔王討伐を引き受けることが前提と言う訳じゃな」

「……まあ、そうなるが。しかしこの世界でこの世界の金を使って飲み食いや買い物をするのは今のままでも問題無いだろう」


「あの、ちょっと聞いてもいい?……私のいた世界に通じるドーアがいくつも発見されているの?」

「ええ。ごくまれに、鍵を見つけた人が行ってしまうのです。行った瞬間に命を落としたものも多く、あるいは捕まって檻に入れられ奴隷にされるとか。恐ろしい魔境と聞いています。数少ない生還者の情報をもとに、それらのドーアは閉ざされ、鍵は基本的にはその国の王家で保管されています」


 奴隷?奴隷……コボルトの……首輪をつけて……檻……なるほど!


「確かに魔境かもしれないわね!」

「やはり……そんな魔境から来たというのに、ダンジョンボスが美香で幸いだった。ぜひとも協力をお願いしたい」


 この世界の家と金、第四倉庫ではない自分専用のドーアがあれば、子どもたちを連れてきたら喜ぶわね。

 けれど魔王って……


 返事をしようとすると、手を振って隆行が止めた。

 このまま交渉を引き受けてくれるようだ。

 あまり深くは考えずにさっと答えてしまう美香には、有難い助っ人だった。



「ひとつ確認じゃが、魔王は殺さなくても退けてこちらの世界の被害を抑えればいいんじゃな?」

「もちろんだ。魔王を殺した例は過去にほとんどない。それに魔王はおそらく美香の世界から来るものだ。討伐するというより、美香がどうにか魔王を鎮めて美香の世界に封印してくれればと期待している」


「私の……っていうことは、まおうは人間……オーガなの?」

「いや姿かたちは様々だが、オーガとは似ても似つかぬ巨体の魔王が多いようだ」


 凄く太った人かしら?

 人間ならある程度話が通じるかもしれないわね。翻訳アプリを入れといたほうがいいかどうか……


「それでどの程度の被害で抑えられたら依頼完了とみなされるのかの?」

「そうだな……魔王が現れてから3日以内、ふたつ目の町が壊滅するまでに」




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