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第2話 黒い悪魔

 半年前、ヒマワリマートのパートの面接を受けたのは、ようやく子供達が小学校に上がって、自由な時間ができたからだ。店長は38歳の美香よりも少しだけ年上に見える優しそうな女性で、それもこのスーパーを選んだ大きな理由だった。


 その日はレジの扱い方を習い、掃除と品出しを習い、翌日緑色のリボンがついた鍵を渡された。それが第4倉庫の鍵だった。

「裏の崖に扉が一つあってね、その中からいくつか荷物を取ってきて欲しいのよ。ほら、先々代の売り場があるじゃない?あそこに陳列する商品なの。いろんなものが乱雑に置いてあるけど、何でもいいから適当に美香ちゃんの好きなものを選んで店まで運んできてね」


 内緒だけれど、あそこ、黒い悪魔が出るのよ。美香さん、大丈夫?殺虫剤と掃除道具も一緒に持って行って、出来ればついでに掃除して欲しいわ。と可愛らしく言う店長に、子供を二人も育ててたら、黒い悪魔くらい平気ですよ。と、安請け合いして初めて入った第4倉庫。


 思ったより広々とした洞窟内は先が見えないくらい奥まで続き、所々の壁の窪みに無造作に置かれたいくつもの商品。子供サイズの小さな甲冑や不思議な文様の木の箱、錆びた短剣、ネックレスには短いけれどブレスレットには長い微妙なサイズのアクセサリー、壺の中に入ったいつの時代の物かも分からない古銭。

「こんなの買う人、いるのかしら?」

 美香が呟くと、それに応えるように奥からキーっと鳴く声が聞こえた。

「ひっ」

 慌てて殺虫剤を持って天井を見ると、30センチくらいの身長の、蝙蝠の様な真っ黒い羽を持った悪魔のような動物が3体も、美香に襲い掛かってきた。

「キャー」

 目を閉じて、その悪魔に向けて殺虫剤を振りまく美香。

 スプレーのボタンは1分くらいは押しっぱなしだっただろうか。暫くの間聞こえていたギャアギャアと言う声もなくなり、美香はそっと目を開けた。

 地面には3つの黒い塊が落ちている。

 どう見ても、ゴキブリではない。

 ふとそばの壁を見ると、大きな穴が開いていて、穴の上に突き出た岩に赤いリボンが結ばれている。

「あ、そう言えばゴミは赤いのに入れといてねって言われたっけ」


 投げ出していた掃除道具を持ってきて、美香はその黒い塊を穴の中へと捨てた。

「なるほど、黒い悪魔って本当にいるのねえ。びっくりしたわ」


 そういいながら、すぐに黒い悪魔のことは頭から離れ、骨董と言うべきか、ガラクタと言うべきかと悩みつつも、さっさと商品を選んでいった。

 38歳、2児の母は、こんな事位では動じないのだ。


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