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第3話 運命の出会い

 今日、朝礼が済んだ後の美香の仕事は、第4倉庫からの品出しだ。

「今日は4箱分くらいお願いしていいかしら。美香さんが選んでくれた物は、本当によく売れるのよ。私が行っても、こんなコインや革製品なんて見つけられないのに。美香さん、すごいわ!」

 店長がいつものように可愛らしくお願いするので、本当にこの人、自分よりも年上かと疑いたくなる美香だった。


 さて、いつものように台車に空の段ボール箱を乗せ、掃除道具と殺虫剤を持って、第4倉庫へと入った美香。

 中は薄暗いが、入口の戸は必ず閉めるようにしている。ひとつは強烈な外からの光が入らないほうが、かえって中の物が見やすいからで、もうひとつは鍵を受け取るときに店長から言われたからだ。

「この緑のリボンが付いたのは先々代が使っていた鍵なんだけど、もしこれを使うようなことがあれば、ドアは開けっ放しにしないようにって言われてるの。美香さんも、出入りするときには気を付けてね。あんな怪しげな倉庫、誰も覗かないとは思うんだけど、おじいちゃん、心配性だったから」


 今思えば、中からいろいろと出てくるのを防ぐためだとは思うが、店長の鍵で入ったときは普通の倉庫なのは何故だろう。どうやら店長はこの洞窟状態の第4倉庫を知らないらしいし。美香がここに来るのはいつも開店前後で忙しい時間帯なので、つい忙しさに紛れて聞けないでいた。

「まあ、私が考えても分からないか。さて、今日は何があるかなー」


 レーキと殺虫剤を持って奥へと向かうと、薄暗い壁の割れ目から灰色の影が飛び出してきた。

 シューッ!

 まずは殺虫剤で動きを鈍くするのが定石だ。

「今日はネズミね、困ったわ」

 バレーボールより少し小さいくらいの巨大ネズミは、凶暴で殺虫剤だけでは仕留め辛い。しかも、すぐに逃げていく可愛いワンコやトカゲ人間と違って、脅しても逃げずに最後まで襲い掛かって来るのだ。

 噛みつかれたら結構痛いし、病気も心配なので、美香はレーキを振りかぶって、飛びかかってきたネズミを叩き落とした。ケガをしたのか、動きを止めたネズミがキーッと高い声で唸りながら、毛を逆立てる。その毛がうっすらと光を帯び始めた。これは放っておくと、バチバチと静電気を散らすのだ。


「最近乾燥気味だから、火が付かないと良いのだけれど」

 そう言いながら、動きを止めたネズミに向かって、殺虫剤をスプレーすると……

 バチッ!

 音と共に火花が散り、殺虫剤のスプレーが火炎放射器状態になる。美香は慌てて噴射を止めたが、ネズミは一瞬で火に包まれて、やがて動かなくなった。

「……ああ。静電気って怖い」


 はたして怖いのが静電気なのかどうかは置いておいて、美香は巨大なネズミの死骸をレーキで引き寄せて、チリトリに乗せると、いつものごみ入れに放り込んだ。

 こうして、今日も何体かの黒い悪魔ではない何かを退治していたのだが、ふと洞窟の奥を見ると、こちらに近付いてくる影がある。油断なくレーキを握り殺虫剤を構えて射程距離に来るのをいつものように待っていた。

 しかしその姿がはっきり見えたとたん、動じない主婦、高梨美香38歳にこれまでにない衝撃が走った。


 それは、トカゲ人間、2足歩行チワワ、そして鳥人間の3体が手を繋いで仲良く歩いてくる姿だった。


「か……かわいい……」


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