第六十二話 褒められ弱い小夜ちゃん
小夜ちゃんは、秀吾に頼みごとがあるようです。
みなさんこんにちは。
小夜です。
「先生、いいかげんに二刀流教えてくださいよ。」
私が、先生にそう言うと、秀兄ちゃんが水を差すようなことを言ってきました。
「まさか、エクスカリバーと、この兼光の大太刀でか?」
「兼光が何か知らないけど、その大太刀。」
「お前ちょっと考えろよな、お前の体格で大太刀との二刀流はどう考えても、無理があるだろ。」
先生も、腕を組んでうんうんと、頷いています。
「先生!先生も同じ考えですか?」
先生は、びくっとして答えます。
「まあ、絶対に無理とは言わないがな・・・難しいことは難しいな。」
「絶対じゃないなら、まずはどうすればいいか、教えてくださいよ。」
「う~ん、そうだな~。」
そこには、腕組みをしながら、首をひねる先生がいました。
するとまた、秀兄ちゃんが余計なことを言いました。
「おまえなあ~いい加減に諦めろよな。今でも、十分すぎるほど強いじゃねえか。」
「うるさいなあ~、秀兄ちゃんは。」
「だってよ、お前の力ならこの二本くらい振り回せるだろうけど、さほど背の高くないお前が、この二本を振り回してる、姿がまったく想像がつかねえんだよ。」
「それは、秀兄ちゃんの頭が貧弱なだけじゃないの?」
私と、秀兄ちゃんが言い合っていると、
「ただいま~、」
「よっこらしょ、ただいまですよ~。」
えっ、まさか、
私が玄関まで行くと、そこには早紀お姉ちゃんと、美紀お姉ちやんがいました。
「えっ、なんで。どうしてお姉ちゃんが・・・まだ、にゅういんしてなくちゃ、いけないんじゃないの。」
「あたしもね、そう言ったんだよ。そしたら早紀の奴、『こんな、味の薄いご飯は嫌、もう帰る。』
って、何を言っても聞かないんだよ。」
「だって、あの病院薄いだけじゃなくて、まずいんだもん。美紀も知ってるでしょ。」
「たしかに、まずいな。あたしなら、その日に逃げ出してたかもな。」
お姉ちゃんは、少なくとも、あと一週間は病院で寝てなきゃいけないと、お医者さんに言われたはずです。
「お医者さんの言う事は、聞かなくちゃ。お姉ちゃん。」
「いくら、小夜ちゃんの頼みでも、それは嫌。家で、おいしくて、栄養があるものが食べたい。」
「もう~、仕方がないなあ~。何が食べたい?お姉ちゃんが食べたいもの作ってあげる。」
「えっ、ほんとに。」
「うん、こんな時くらい、お姉ちゃんのためになにかしたいよ。」
「それじゃ、ロールキャベツが食べたいかな。」
それを、聞いていた秀兄ちゃんが、
「おっ、いいねえ、ロールキャベツ。」
私は、秀兄ちゃんに言いました。
「秀兄ちゃんの分は、ありません。」
「なに~っ!俺だけ無しということか?」
「そうです。秀兄ちゃんは、キャベツだけです。」
「まだ、怒ってるのか?謝るから許してくれよ。」
私は、そんなに心は広くありません。
「それも、生です。」
「なに~っ。生ってなんだ。生って。」
「おいしいですよ。新鮮なキャベツの味を楽しんでください。」
「かわいい小夜ちゃん、許してよ。ねっ。」
か、かわいいだなんて、そんな言葉で私の心は揺らぎません。
こ、この後も秀兄ちゃんは、私をほめちぎります。
「なあなあ、許してくれよ~。」
私は、結局秀兄ちゃんにロールキャベツを、根負けして出してしまいました。
「うまいなあ、このロールキャベツ。その辺の料理人も真っ青だな。いよっ、この料理上手。」
まあ、褒められるのは、悪い気分ではないですね。
褒められ弱いのか、秀が褒め上手なのか?どっちだろ。