第六十話 秀吾の刀鑑賞講習会
秀吾が、秀の刀の出来を見るようです。
こんにちはみなさん。
神野 小夜です。
今うちには、私の剣の先生である、秀吾先生が来ています。
秀兄ちゃんの、父親だから会っていくと思い私は、
「秀兄ちゃん呼んできますね。」
と気を利かせたつもりでした。
でも、先生は、
「呼ばなくていい。それより、あいつが鍛えた刀はどこにある?」
「和室のほうに、今は置いてあります。」
「そうか、案内してくれ。」
「わかりました。こちらです。」
私は八畳の和室まで、案内しました。
「小夜、この部屋のカーテンを閉めて、出来るだけ暗くしてくれ。それから、蠟燭を一本頼む。」
「わかりました。」
何のために暗くするのかわかりませんが、先生のいう通りにしました。
なにか、儀式でもするのかな?と私は思っていました。
そして、先生の言う通りにすると、部屋の中は薄暗くなっていました。
「刀は、どれだ?」
「はい、これです。」
「ああ、すまんな。どれどれ。」
す~っ
先生は、ゆっくりと刀を抜くと、刀を立てて眺めていました。
一通り眺めおわったのか?今度は、刀の切っ先を蝋燭に向けて、覗き込むようにしています。
そして先生は、『ほ~う丁子乱れか。』とか、『地は柾目か。』とか感心しているようでした。
私には、何に感心しているのか、チンプンカンプンです。
私はもう、先生が何に感心しているのか、知りたくて知りたくて堪りません。
「先生!何か見えるんですか?私にも教えてください。」
一緒にいた、華姉さん、京香さんも同じ気持ちだったのか、
「「私たちにも、教えてください。」」
と先生に頼みました。
すると、
「なんだ華。お前も知らないのか。まあ、女はこういうことにあまり興味はないという事か。」
「どういう意味ですか?」
なんだか、華姉さんがちょっと馬鹿にされた気がしたのか、先生を睨みつけていました。
「怒るな華、さっき俺がしていたようにして、刀を見てみろ。そしたらどういうことか、分かるから。」
「わかりました。」
華姉さんは、先生から刀を受け取ると、まず、刀を立てて眺めています。
「波紋が、波打っているだけですけど。」
華姉さんは、不服そうな顔で、先生の方を見ます。
「まだ、終わってないだろ。文句は、そのあとで聞いてやる。」
「はあ、わかりました。」
華姉さんは、そのまま刀の切っ先を蝋燭のほうに向けて、覗き込みました。
「なっ!」
「見えたか?」
「はい、波紋がこんな風になってるなんて、知りませんでした。」
「波紋だけじゃなく、刀の地金のほうもよく見てみろ。」
「あ~っ、柾目ってこのことか。」
「華さん、私にも見せてください。」
「あっ、ごめんごめん。はい、どうぞ。」
私のほうが、さきだったのに。
最後にされてしまった。
まあ、お楽しみはあとということで。
それにしても、刀一本でそんなに驚くことなんかが、あるのかなあ。
不思議です。
「えっ、こんな風になっていたんですの?」
京香さんも、華姉さんと同じように、驚いています。
う~っ、私も早く見たい。見たい見たい。
「刀の刃紋が、こんな風だなんて、初めて知りましたわ。」
「だからこそ、出来のいいものは、美術品にもなるんだよ。国宝級のやつなんて、感動ものだぞ。」
「そういう事でしたのですね。勉強になりましたわ。ありがとうございます。」
「京香さん、私にも早く見せて。」
「あっ、ごめんなさいですわ。きっと、びっくりしますわよ。」
私はようやく、刀を手渡されました。
ほんとに私も、同じように驚くのかなあ。
私は、半信半疑で刀を立てて眺めます。
「そのまま、ゆっくりと上から下まで、よく見るんだ。」
「はい。」
秀吾先生が、私に刀の見方を教えてくれます。
もう、みんなのを見て、分かっているのですが、先生のいう通りにします。
「何か見えたか?」
「波打ってる波紋の中に何かが見えたような気がします。」
「そうか、それじゃ切っ先を蝋燭のほうにやって、覗き込んでみろ。何が見える?」
先生のいう通りにして、刀をのぞき込みます。
「なっ、なにこれ。波紋の中にうにうにしたものがある。」
「うにうにか、そりゃいい。それが、丁子乱れだ。地金のほうはどうだ。?」
「えっと~、あっ、まるで木の板みたいな感じです。」
「それが、柾目だ。わかったか?」
「はい、わかりました。刀ってこんなにも綺麗なものだったんですね。」
刃紋というのは、ただ波打ってるだけかと思っていましたが、とても綺麗です。
「ほかにも、いろいろあるんですよね。」
「ああ、刀匠にもいろいろいるからな。」
「ちょっとまっててくださいよ。エクスカリバー持ってきます。」
私は、エクスカリバーがどんな刃紋なのか、知りたくなりました。
「エクスカリバー?なんのことだ?」
「御神刀のことですわ。小夜さんが、名づけましたのですわ。」
「小夜が・・・まあなんだ、あいつらしいといえば、あいつらしいともいえるか。元凶は、あいつしかいないだろうが。」
「叔父様、それがそうでもないみたいですわ。」
「どういうことだ?」
「力也のおじさまも、一役買っているようですわ。」
「そっか、それが力也さんの教育方針というわけか。小夜が幸せならそれでいいけどな。力也さんも相変わらずという事か。」
そんな会話をしていると、小夜がエクスカリバーを持ってきた。
「先生、まずは先生見てください。」
「それで、私たちに解説してください。」
「わかった。」
先生は、また同じようにエクスカリバーを、眺め始めました。
すると、先生はこんなことを呟きました。
「さすがに、これはすごいな。あの話もあながち嘘でもないようだ。」
「なんのことですか?嘘じゃないって。」
「まあ見てみろ。」
「はい。」
私も、さっきと同じように刀を眺めました。
刃紋の形は、似ているような感じですが、ちょっと小さめのような気がします。
でも、秀兄ちゃんには悪いけど、私はエクスカリバーのほうが好きです。
「童子切安綱という刀があってな、そっくりなんだなこれが。贋作のわけがないし、神野一族にその刀について言い伝わってきたことがあって、安綱の真打のほうが神野一族に、その時の幕府のえらいさんから
譲られたというんだなこれが。今まで、胡散臭い話だと思っていたが・・・。違うとしても、こいつは
正に名刀だな。」
「安綱という刀も、すごいんですか?」
「ああ、国宝だ。」
「「「ええ~っ!!」」」
私たち三人は、その話を聞いて、ものすごく驚きました。
そっか、エクスカリバーは、国宝にも劣らない名刀なんだ。
名刀なら、少々乱暴に扱っても、刃こぼれなんかしないのかな。
わしの名前は、龍神切りエクスカリバー。
小夜の奴が名づけよった。
龍神切りだけにしてくれればよいものを。
ぞぞぞっ
な、なんじゃ、寒気がしよった。
何か悪いことでも、起きなければよいが・・・
何があろうとも、がんばれエクスカリバー。




