第四十七話 神野一族の実力
エクスカリバーが、小夜をからかおうとしています。
みなさんこんにちは。
神野 小夜です。
華支部長姉さんが訪ねてきた夜に、カリバーがこんなことを聞いてきました。
『おい、小夜。』
「なに、カリバー。」
『あの、華とかいうやつは何者じゃ。』
「あの人は、関西一円の神野一族を取りまとめている、族長さん。」
族長だと答えると、カリバーは、
『なに、あやつが族長だと、冗談はよせ小夜よ。』
冗談だというカリバーに私は、
「冗談なんかじゃないよ。ほんとに族長さんだよ。」
と答えました。
『ほんとなのか、だとしたら嘆かわしいことだ。』
「どういうこと?」
なんだか、失礼なことを言ってるようなので、理由を聞きました。
『どういう理由で、族長になったか知らぬが、あやつの霊力は平凡なものじゃ。
そんな奴が族長?黒巫女の質も落ちたもんだ。』
私は、黒巫女全体を侮辱された気がしました。
「霊力が高くないと族長になれないわけじゃないでしょ。」
『まあ、そりゃそうだ。だが、わしはあんな族長見たことないんでな。』
ぐぬぬぬぬ。
刀の向こうで、嫌みな顔をしたカリバーが、目に浮かびます。
「華姉さんは、とっても綺麗な女の人なんだから。」
『おお~、そうかそうか、綺麗なのか。そりゃよかった。しかし、黒巫女として役に立つのか?』
反論できない。
お姉ちゃんなら、いくらでも反論できるんだろうな。
馬鹿な私が恨めしいです。
そして私は、激おこぷんぷん丸です。
「もういい、この話は終わり。」
『なんだ、怒っているのか。』
「カリバーとは話したくない。」
『怒るな小夜よ。わしは、事実を言ったまでじゃ。』
し~ん
黒巫女を馬鹿にされたら、怒るっちゅうねん。
『おい、小夜よ。無視をするな。』
『おい、刀。あの族長の霊力が低いというのは、ほんとうなのか。』
『そうだ。あの族長の霊力は低いな。』
『そうなのか。しくじったな。あいつを狙うべきだった。くそっ。』
蜘蛛吉まで、好き勝手言っています。
むしゃくしゃした私は、
「蜘蛛吉、外に出なさい。」
『なんだ?もう夜も遅いぞ。何をする気だ。』
「稽古すんのよ。相手をしなさい。」
『そんな、カリカリした状態でいいのか?死んでも知らんぞ。』
なめた口調で、蜘蛛吉が言います。
「やれるものなら、やってみなさいよ。」
『小夜ちゃん、落ち着いて、ネッ』
「ごめん、エクス。落ち着くのは無理。本番でも、こんな状態の時があるかもしれないでしょ。
予行演習に丁度いいわ。」
わしは、裏声のエクスで落ち着くように言ったが、無理のようじゃ。
危険じゃ。
小夜の状態が、いつもの状態なら何の問題もないのじゃが・・・
誰か止めてくれ。
わしは、ちょっとだけからかうつもりだったのじゃ。
だれでもいい、止めてくれ。頼む。
「さあ、来なさいよ蜘蛛吉。手が生えなくなるまで、斬ってあげるから。」
『ふふ、今のお前になら勝てる気がするぞ。』
蜘蛛吉の奴なめきってる。
いつも、斬られまくっているくせに。
蜘蛛吉が攻撃を仕掛けた。
ざしゅっ
小夜は、蜘蛛吉の攻撃を防いだ。
しかし、いつもの切れはない。
切れはないが、攻撃を防いでいた小夜に声が掛かった。
「小夜ちゃん、こんな遅くに稽古?熱心ね。」
「あっ、華姉さん。」
「その刀は、御神刀?」
「はい。」
「そしてそいつが、式神になったっていう妖魔ね。」
「はい、そうです。」
「じゃ、その刀貸してもらえるかな。」
華姉さんは、なぜか御神刀を貸してと言いました。
エクスカリバーを貸すのはいいのですが、もしかして華姉さんも蜘蛛吉を相手にする気なのでしょうか?
危険です。
私は、華姉さんに言いました。
「危険です。こいつは、本当に命を狙ってきます。」
「そっか、そうなんだ。そうこなくちゃね。」
「え~っ!危険だよ~華姉さん。」
その時、私の肩に誰かが手をかけました。
「お、お姉ちゃん。」
その後ろには、美紀おねえちやんに、京香さんがいました。
「小夜ちゃん、大丈夫だよ。」
「で、でも蜘蛛吉、ほんとに命狙ってくるよ。」
「大丈夫ですわ。見てればすぐにわかりますわ。」
3にんとも、余裕な感じで華姉さんを見ています。
あいつは危険です。
いくらお姉ちゃんたちが、大丈夫だといっても、私は心配でなりません。
「おい、蜘蛛野郎。かかってきな。」
始まります。
私はきっと、心配でたまらないという顔をしていると思います。
だって、カリバーが華姉さんの霊力が低いなんて言うからなおさらです。
でも、華姉さんは余裕な感じです。
「かかってこないなら、こっちから行くぞ蜘蛛野郎。」
『霊力低いんだろ。今なら、許してやるぞ。我に謝れ。』
華姉さんに、謝れなんてぬかしてやがります。
蜘蛛吉のくせに。
「あほか蜘蛛、どうでもいいから、さっさとこい。」
『そうか、そんなに死にたいなら、、、死ねやおばはん!』
かちん
「だれが、おばはんじゃ~殺すぞおどれ~~!」
ざしゅっ、さっ、ざしゅっ、すっ、ざしゅっ、すっすっすっ
綺麗な剣裁きです。
華姉さんは怒っているはずなのに、それとは裏腹にとても綺麗です。
怒って刀を振るってるとは、とても思えません。
まるで、剣舞です。
私たち4人は、時間がたつのも忘れて、見とれていました。
「もう、終わりか、蜘蛛助。」
『あんた、ほんとに霊力低いのか?信じられん。』
「そうだ。霊力は並以下かもな。」
『並以下だと?』
「ああ、その分剣技で補っているがな。」
そうなんだ。
剣技だけでも、十分すぎるほど霊力は補えるんだ。
そっかあ。だからの、支部長さんなんだ。
族長の一人だもん、何かすごいものを持ってるはずだよね。
どうだ、見たかカリバー。
これが、神野一族の実力だ。
伊達に華姉さんは、族長やってないんだ。
「どうだった、小夜ちゃん。」
「すごいです。すごすぎます。感動しました。」
「そんなに、言われると照れちゃうじゃない。」
「そんなことないです。すごいです。」
「ありがと。」
華姉さんは、とても謙虚な人です。
「小夜ちゃん、一つだけ覚えていてちょうだい。」
「はい?」
「霊力は、必要だけどそれだけに頼らないようにね。」
「はい。」
「今の小夜ちゃんは大丈夫だけど、霊力の大きい人は力に振り回されることがあるからね。
小夜ちゃんはまだ、ほんとの力の半分も出してないんだからね。」
「はい。」
振り回される?
どういうことだろ。
炭きり練習の時、倒れたことがあったっけ。
そういうことかな?
「それにしても、やっぱり御神刀ね。私の霊力でも、そんなに使わずに済んだわ。」
その時私は、ふと頭をよぎったことがありました。
なぜ、御神刀をかけた試合に出なかったのかと。
私は、華姉さんに聞いてみました。
「華姉さん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど。」
「ん、なに?何でも聞いていいわよ。」
「なんで、御神刀をかけた試合に出なかったんですか?華姉さんなら、勝てたと思うんですけど。」
「それはね、小夜ちゃんがいたからよ。」
華姉さんは、私がいたからだと答えてくれました。
でも、わかりません。私がいたからというのは、どういう事なんでしょう?
「どういうことですか?私が、いたからというのは。私にはわかりません。」
「小夜ちゃんがいなかったら、私は絶対に出たと思う。九州にすごい子がいると聞いて、
小夜ちゃんが小学一年の時に会いに行ったことがあるのよ。」
「ほんとですか。」
「ええ、そのときに小夜ちゃんを一目見て、私はあきらめた。」
私を見てあきらめた?
わかりません。
小学一年の私が、そんなにごつい女に見えたのでしようか?
「私は、神野一族最強の人間が、御神刀を持つべきだと思ったのよ。」
「だったら、すごい剣技持ってる華姉さんが、持つべきじゃ・・・」
そうです。
最強というなら、華姉さんが持つべきです。
「いえ、剣技も霊力もすごい人が、神野最強だと私は思うのよ。それが、小夜ちゃん。あなたよ。」
「私なんて・・・」
「私の眼鏡通り、小夜ちゃんは御神刀の所有者になったわ。
だから、これからも精進して最強でいてね。頼んだわよ、小夜ちゃん。」
華姉さんが、こんなにも私のことを、認めていてくれたなんて。
これにこたえなきゃ、女が廃るってやつね。
「わかりました。私、もっと精進します。」
「よし、いい返事だ。」
私と華姉さんの話が終わるのを見計らったように、お姉ちゃんが口を開きました。
「姉さん、」
「なんだ、早紀。」
「もしよろしければ、どなたか紹介してもらえませんか?できれば、姉さんの弟子で。」
「正式な弟子なんていないが、そうだな。知り合いに、あたってみるよ。」
やた。
どうやら、華姉さんのお弟子さんが来てくれるみたいです。
私も、華姉さんみたいに、まるで剣舞のように綺麗な戦い方がしたいです。
とてもたのしみです。
まるで剣舞だと、おっちゃんも見てみたいのであ~る。




