第四十一話 馴れ馴れしいお化け
声がします。いったい誰の?
小夜に、稽古相手の妖魔ができる数日前。
みなさんこんにちは。
神野 小夜です。
実は、ここのところ誰かが私の名前を呼ぶのです・・・・
こ、こわいです~~
すみません、取り乱しました。
こんなことがありました。
私が、素振りをしていた時の話です。
「九百九十七、九百九十八、九百九十九、千。ふ~」
『い、さや、』
「なに、秀兄ちゃん。」
し~ん
「そこに、いるんでしょ、秀兄ちゃん。」
し~ん
「冗談やめてよ、私お化け苦手なの知ってるでしょ。」
『おい、小夜。』
秀兄ちゃんじゃない。だれ?こんな声の人知らない。
『わしの声が、聞こえ』
「ぎゃ~~~!!お化けが、お化けが、ぎゃ~~~!!」
『おい、こら、わしを置いて逃げるな。』
こんなことがあったのです。
お化けはこわいです。
どうしたらいいのでしょう。
でも、お化けにしてはなんだか、馴れ馴れしい感じです。
わしの名は、えくすかりばー。
神野一族に伝わる、御神刀じゃ。
そして、今の主は、神野 小夜じゃ。
その主は、最近までわしの声が聞き取れなかったが、どうやら今は聞こえておるようじゃ。
しかしあのバカは、わしの声をお化けだと思っておる。
どうしたものかと、わしは考えた。
うん、これしかなかろう。
「ねえ、エクスカリバー、最近変な声が聞こえるんだよね。どうしたらいいと思う。」
小夜は、まるで人形に話しかけているようだった。
『ねえねえ小夜ちゃん、変な声ってどんな声なの。』
小夜に誰かが話しかけてきた。
あの、変な声のお化けじゃない。
まるで、腹話術のような声だ。
近くには、みんながいる。
どうやら、小夜にしか聞こえてないようだ。
「だ、だれ?」
『わたしは、えくすかりばーだよ。』
「うそっ」
小夜は、何事もないように立ち上がった。
「小夜ちゃん、もうすぐ小夜ちゃんの好きなテレビ始まるよ。」
「うん、でも宿題があるから。」
自分の部屋につくと小夜は、
「ほんとに、エクスカリバーなの。信じられない。」
『ほんとだよ。わたしは、エクスカリバーだよ。』
「ほんとなんだ。なんだかうれしいな~アニメか漫画みたい。」
『うれしそうだね、小夜ちゃん。』
「うん、うれしいよ。刀とお話できるなんて、夢のようだよ。」
『そんなに、うれしいんだ。よかった。それはそうと、わたし変な声の正体知ってるよ。』
「ほんとに。だったら教えてエクスカリバー。」
『いいよ、それはね、』
「うんうん、それは、」
『それはね、・・・・わしじゃ。』
「ぎゃ~エクスカリバーが、エクスカリバーが。」
『そこまで、驚かなくともいいじゃろ。さすがに傷つくぞ。』
小夜は、エクスカリバーを両手で持ち上げた。
そして、涙を浮かべて言った。
「かえして、私のエクスカリバーを返してよ~。」
『違うぞ小夜。わしがエクスカリバーじゃ。』
「うるさい悪霊。はやく、この刀から出ていきなさいよ。」
『だから、おぬしは勘違いしておるぞ。わしこそが、エクスカリバーじゃ。』
「何言ってんの、エクスカリバーはもっとかわいい声してるもん。出てけ悪霊。」
『悪霊悪霊、言うな。わしは嘘など言わん。』
「ほんとに?」
『そうじゃ。わしが、わしこそが、えくすかりばーじゃ。』
「わかった、信じる。」
『そうか、一時はどうなることかと思ったぞ。」
「それじゃ、あのエクスカリバーはどこに行ったの?わたし、あのエクスカリバーがいい。」
『なぬ~っ。まだわからんのか。あれも、わしじゃ。』
「うそ。信じない。さっきのエクスカリバーと変わってよ。」
エクスカリバーは思った。
このままじゃ、埒が明かん。いったん、声を変えるか。
『小夜ちゃん。』
「エクスカリバー!」
『小夜ちゃん、よく聞いて、あのね・・』
「もうどこに行ってたのよ、エクスカリバー。もうどこにもいかないでね。」
『あ、あの、だからよく聞いて、あのね小夜ちゃん』
「おっさんエクスカリバーは嫌だよ。もう、どこにもいかないでね。」
だめだこいつ。
仕方ない。
しばらくは、声を変えていくしかないな。
エクスカリバーが、仕方なくあきらめたとき、小夜はエクスカリバーに頬ずりしていた。
わがままだね、小夜ちゃんは。