第三十六話 早紀、こんなになっちゃった理由
小夜が、実は霊力がうまく使えない。どうする早紀。
みなさんこんにちは。
神野 小夜です。
霊力がうまく使えないことが、早紀お姉ちゃんにばれてしまいました。
でも、お姉ちゃんは隠していたことも怒らずに、一緒に原因を探そうと言ってくれました。
ほんとに優しくて、大好きなお姉ちやんです。
でも、霊力がうまく使えなくなったのは、いつどこでこんなことになったのか、
私にはさっぱりわかりません。
自分のことなのに、わからないのかといわれても仕方がありません。
小さいころに、霊力を使おうとして『あれっ、なんかおかしい。』と思った程度だったので。
今度、使うときはきっと大丈夫だと、楽観的に考えていたので。
はっきりとしていることは、私がまだ小さかったということ。
それ以上は、私にはわかりません。
お姉ちゃんは、いったいどうするつもりなんだろ。
神野 早紀です。
大変な事実が判明したのです。
小夜ちゃんが、実は霊力がうまく使えないという、ショッキングな事実がです。
ただ、霊力が少ないだけじゃないの?と思う方もいるでしょう。
そんなことはありません。
小さいころに試したことがあるのです。
母がぴょんぴょん飛んで、
「うさぎさんだよ~小夜ちゃんも、ぴょんぴょんうさぎさんになろう~。」
と言って、小夜ちゃんを誘ってみたのです。
母は、ただ飛んでいたのではなく、霊力を脚に集中させて2m近く飛んでいたのです。
すると、小夜ちゃんは、
「わたしも、ぴょんぴょんうさぎさんになる~。」
といって、余裕で母より高く飛んでみせたのです。
そんな小夜ちゃんが、霊力が少ないなんてありえないのです。
意識もしないで、母より高く飛んで見せた小夜ちゃんがなぜ?
謎です。
とりあえず、考えられるのは、小夜ちゃんの勘違い。
まあ、考えるだけでは解決しないので、行動しましょう。
「小夜ちゃん。こっちに来てちょうだい。」
「お姉ちゃん、何かいい方法が見つかったの?」
「どうかわかんないけど、こいつをいっぺん木刀でなぐってみて。」
「お~い。待てまて待てぇ~~い。」
「なによ、秀。」
「おい、聞いてないぞ殴られるなんて。」
「そうだっけ。でも、今聞いたでしょ。」
「なんだそれ。そんなんで、納得できるか!」
「小夜ちゃんのためよ、納得しなさい。」
「俺を殴れば、小夜のためになるのか。そんなばかな。」
「おい、小夜。お前もそう思うだろ。思うよな。いいや、思え。」
「なに小夜ちゃんを、脅してるのよ。痛い目に会いたいの。」
「脅しているのは、お前だ。」
「お姉ちゃん、秀兄ちゃん殴るのはさすがに、かわいそうだよ。」
「そうだ、お前のどうかしている姉に、もっときつく言ってやれ。」
「それよそれ。その気持ちを利用するの。」
「どういうこと?」
「小夜ちゃんは、殴りたくない。でも、殴らなきゃいけない。
すると、小夜ちゃんのこころのどこかで、殴らなきゃいけないならせめて、
少しでも痛くならないようにと、眠っていた霊力の使い方を思い出すかもしれない。」
「ああ、なるほど~。いけるかな?」
「いけるいける。さあ、小夜ちゃん殴ろう。いけ~~。」
「いけ~、じゃねぇよ。おい、思い出さなかったら俺はどうなる。頭かち割れるだろうが。」
「そうだよ、お姉ちゃん。」
早紀は、舌打ちするのをこらえた。
「あっ、よく考えたらそうなるね~。」
「よく考えなくとも、そうなるわ。」
「そんなことする前に、聞いてみたのか。」
「そんなこと~?まあいいわ、今だけは許してあげるわ。それで誰に聞けっていうの?」
「自分たちの親に聞いてみたら、手がかりくらい見つかるかもしれないだろ。」
「そうだよ、お姉ちゃん。大事なこと忘れてたよ。まず、お母さんに聞かなきゃ。」
私は、秀の奴に指摘されるまで気づかなかった。
小夜ちゃんのことになると、私は正常な判断がつかなくなるようだ。
そう、正常な判断ができなくなるほど、小夜ちゃんを私が愛している証拠なのだ。
そして、さっそく母に聞くことにした。
「もしもし、お母さん。私、早紀。ちょっと聞きたことがあるんだけど。」
「聞きたいこと。いいわよ~さあ、何でもお母さんに聞きなさい。さあさあ。」
「はいはい、わかりました。聞きたいことってのはね、実は小夜ちゃん、
霊力がうまく使えないみたいなんだけど、何か知ら」
早紀が、何か知らないと言おうとした瞬間に、母はそれを遮る。
「あっ。」
「かあさん、何今の『あっ。』は、なに?」
「へっ、何って何?」
「さっき、あっ、て言ったよね。あっ、て。」
「言ってない、言ってない。空耳じゃない?」
「ほんとのこと言わないと、今すぐそっちに、帰るから。」
「わかった。わかりました。全部話すから、怒らないでね・・・」
そして、母はすべてを語った。
「子供があんなにすごい力を持ってるのは危険だと思って封印したけど忘れてたってこと~~
あんたそれでも、人の親か!」
「ごめんなさい。でも、そこまでひどいこと言わなくても・・・」
「そこまでひどいことを、小夜にしたのよ、かあさんは。」
「だから、ごめんなさいっていってるじゃないの。」
「私に誤っても仕方ないでしょ。小夜に、あやまりなさいよ。」
「わかってますよ。」
「なに、その反抗的な言葉遣いは。」
「ご、ごめんなさい。反省してますから許して。」
早紀が小夜のこととなると、ああなってしまう理由がこれだ。
こんな、おっちょこちょいじゃ済まないようなことをしでかす母の代わりをいつもしてきた。
早紀は、母のフォローで気の休まる時もなかった。
そして、小夜が絡むと必要以上なことをやるようになっていた。
母には、悪気はない。
頼むから、もう少しちゃんとやってよ~
といつも思う、早紀だった。
小夜は小夜で、
「よくあるよね~こういう事。」
と電話の向こうの母と、楽しそうに会話をしていた。
なんだか早紀が、かわいそうに思えてきた。早紀に幸あれ。