第三十話 稽古開始
憂さ晴らしが始まります。どうなる変態。
みなさんこんにちは。
神野 早紀です。
今日は、変態が門下生になってしまった、最初の日曜日です。
変態門下生には、憂さ晴らしの動く人形になってもらいます。
小夜ちゃんには、秀の方にいってもらってます。
「早紀さんよぉ。この分厚いライダースーツみたいなのはなんすか。」
「少しは本気出さないと稽古にならないから、あんたはそれを着てやりなさい。」
「いいよ、こんなの。」
「だめよ、それを着ないと稽古つけないわよ。」
「わ~ったよ。」
「それじゃ、どこからでも掛かってきなさい。」
あんたが強いのは、知っとるわい。
それでも、自分は防具の一つもないなんて、なめすぎじゃ。
一発でも当たったら骨が折れるかもしれんちゅうのに。
お望み通り骨を折ってやる!
この、外道 正二をなめた報いを、受けやがれ!
「おい、早紀。その辺にしといてやれよ。プルプルしてるぞ。」
「根性があるっていうから、どれ程の者かと思えば、拍子抜けもいいところね。」
「ま、まだやれる。」
「あっそ、私はのどが渇いたから、休憩するわ。」
「やれるって、言ってんだろが。」
「うるさいっ!」
ぼこっ!
あへ
正二は気を失った。
「みんな、お茶ですよ。」
「ありがとうございますわ。」
「あれ、変態さんどうしたんですか、京香さん。」
「あれは、疲れて寝てるだけですわ。」
「へぇ、そんなになるまで稽古したんだ。」
「まあ、弱いから仕方のないことですわ。」
そのあとの稽古で、正二は5度ほど気を失った。
だが、その都度早紀に無理やり起こされ、昼過ぎに始まった稽古で、
気を失ったのは、計8度。
もう意識は朦朧としていた。
朦朧とした意識の中で正二は思った。
なぜこうなった?小夜と一緒に稽古できるんじゃなかったのか。
あれ、意識が遠のいていく気がする。あ、あれ・・・
完全に、気を失った。
「おい、起きろ。学校に遅刻すんぞ。」
「うるせえな、もうちょい寝かせろ。」
「起きろって言ってんだろが。」
美紀は正二のボディに一発いれることにした。
「お前が起きねぇと、あたしが遅刻しちまうだろが!」
ぼこっ!
「うげっ。ゴホッゴホッ。こ、ここは?」
「お前道場で、気を失ってそのままここで寝たんだよ。分かったら、さっさと学校に行け。」
「あい、よいしょ、痛たたた。」
「どした?」
「学校、無理みたいっす。」
「そうか、でも行った方がいいと思うぞ。
『こんなことで、学校休むなんて門下生の資格なしね。』とか嫌味言われるぞきっと」
「くそ、そんなこと言わせてたまるか。痛ててててて。」
「バス停は、すぐそこだ。がんばれよ。」
ブオンブオンブオ~ン
「あっ、ちょ、乗せて、くそ、行ってもうた。」
くそっ、あいつが俺の面倒みるんじゃなかったのか。
あの、がさつ100%の女に、期待するほうが間違いか。
それにしても早紀のやつめ、あの程度の稽古なら、すぐにこなせるように、なってやる。
そして、目に物見せてやる。
正二は知らない、あれはただの憂さ晴らしだということを。
そして早紀は、本気の憂さ晴らしが出来てないということを
そのころ早紀は、
あれで気を失うのか。
気を失った時間がもったいないから、次は少しだけ、手加減するか。
変態門下生が、目に物みせることはできるのか。