第二十八話 喧嘩の火種男 外道正二
外道正二を連れてきた美紀。一体どうするつもりなのか。
みなさんこんにちは。
神野 京香でございますわ。
今、わたくしの目の前には小夜さんをつけまわしてた、バカ男がいるのですわ。
美紀さんに、この馬鹿男をどうにかしてもらおうとしたのに、
よりによってバカ男を家の方に連れてきてしまいましたのですわ。
ホントに何を考えているのかわかりませんわ。
これはもう、怒られるのを覚悟して早紀お姉さまに報告しなければなりませんわ。
もう、なんてことをしてくれるのでしょう。
もうこれからは、美紀さんは頼らない事にいたしましょう。
「小夜ちゃん、こいつここの門下生にしてもいいかな。」
「うちは、どこの流派でもないし、正式な門下生は取らないことにしてるよ。」
その調子ですわ小夜さん、ここは、はっきりと断るところですわ。
「正式な門下生なんて方っ苦しいやつじゃなくていいんだよ。
テキトーに木刀振らせてりゃ、いいんだよ。」
「私一人じゃ決められないし、お姉ちゃんにも聞いてみることにしようよ。」
「さ、早紀のやつに?小夜ちゃんが言うなら仕方がないか。」
「ところで、そちらの方のお名前はなんて呼んだらいいの、美紀お姉ちゃん。」
「へっ、おいお前、小夜ちゃんに自己紹介してねぇのか?」
「自己紹介はしてないけど、名前は名乗ったっすよ。」
「えっ、どこかでお会いしたことありましたっけ?」
ぷぷっ。忘れられてやがりますの。ぷぷぷっ
「会いましたよ、公園で説教してくれたじゃないですか。」
「説教?した覚えがないので、どうでもいいことだったのかな。」
がび~ん
外道 正二は、あまりのショックで、茫然としていた。
ぷぷぷっ、ざまぁみやがれですわ。
「ご、ごめんなさい。私物覚えが悪くて。」
「い、いえ、お構いなく。」
「小夜ちゃん、謝んなくていいよ。小夜ちゃんにとってお前はその程度ということだ。」
「そ、そっすね。忘れられないよう頑張ります。」
こんな、どうでもいい会話をしていると、
「ただいま。」
「お帰りなさいおねえちゃん。」
「うん、ただいま、小夜ちゃん。」
いつもより早く、携帯で連絡していた早紀お姉さまが、お帰りになりましたのですわ。
「京香ちゃん、一体何が大変なの。何が起こったの?」
わたくしは、全てをお話したのですわ。
「すみませんですわ、早紀お姉さま。美紀さんなんかに頼んだせいでこんなことに。」
「そうね、」
ぎくっ!
ああ、早紀お姉さまに嫌われてしまいますわ。
わたくしは、どうしたらいいのでしょう。
早紀お姉さまに嫌われてしまったら、わたくしは、わたくしは・・・
「私に話してほしかったけど、京香ちゃんのせいじゃないわ。
京香ちゃんはこれが最善策だと、思ったのでしょう。」
「はい、早紀お姉さまのお手を煩わせなくとも、美紀さんで大丈夫だと・・・」
「だったら悪いのはアホの美紀よ。何がいい根性してるよ、バカ美紀が。」
「美紀、道場に来なさい。」
「あん、指図すんな。」
「いいから来なさい。」
「何すんだ、コノヤロー!」
「それは、こっちのセリフよ。何なのこの男は!
小夜ちゃんにどういうことしてたか、知ってるんでしょ!」
「うぐっ、そ、それは・・・」
「もうしないってんなら、許してやってもいいけど。」
「そ、そうか。」
「許してやってもいいけど、なんで連れてくんのよ。なにが門下生よ。バカじゃないの!」
「ば、バカだと。」
「ええ、そうよ。ちょ~大馬鹿よ。」
「お姉ちゃん、なんかそっちが騒がしいけど、もしかして喧嘩してるの?」
「喧嘩なんかするわけないじゃない。」
「だよね~二人は仲良しさんだもんね~。いま、お茶もってくから。」
「お茶はいらないよ~ちょっと、道場で稽古してくるね。」
「は~い。」
「美紀、さっさと来なさいよ。あんたは痛い目に合わないと分からないみたいだから。」
「痛い目に合わせられるならやってみやがれ。」
「おい、あの二人行っちまったけど、俺はどうしたらいい?」
「一緒にいって、美紀さんの応援でもしてきたらいいですわ。」
「そ、そうか。」
そうですわ。
早く行って、あの二人に巻き込まれて、痛い目に合うがいいですわ。
二人の声と、悲鳴が聞こえますわ。
「なんであんたは、そんなにバカなの~!」
「バカバカうるせえんだよ!」
「うぎゃ~たすけて~~!」
「京香ちゃん、なにかあったのか。妙に道場が騒がしいけど。」
「秀さん、お疲れ様ですわ。バカ男をどうするか、決めているだけですわ。」
「バカ男?俺のことじゃないよな?」
「心配いりませんわ。秀さんの何百倍もバカな男のことですわ。」
「今おれ、ディスられた気がする。」
外道正二は、道場に通えるのか。