第二十七話 水の泡だね京香さん
いろいろと、たいへんですな、京香さん。
みなさんこんにちは。
神野 京香ですわ。
先日警告したのに、あのバカは、また待ち伏せていましたわ。
次の日からは、毎日登下校のルートを、さりげなく変えましたのですわ。
朝はわざと道を間違えて見たり、
「京香さん、そっちじゃないですよ。京香さんってば。あ~あ、行っちゃった。
京香さんこの頃よく道を間違えるな~うっかり屋さんなんだホントは。」
小夜さんは、わたくしのことを仕方のない人だなぁ、ときっと思っているのでしょう。
今は、それでも構いませんわ。
下校時は簡単。
「おいしいアイスでも食べて帰りましょう。」
このような一言で、ルートは変わるのですわ。
そのようなことをしているうちに、わたくしには嫌な機能が追加されてしまいましたわ。
あっ、300mほど先に、あの男がいるようですわ。
「小夜さん、お腹が空いてしまったので、ハンバーガーでも食べて帰りませんか。」
「いですよ。」
こんな感じで、あのバカのいるところが、分かってしまうようになってしまいましたわ。
嫌な機能ですわ。
消せるものなら、消してしまいたいですわ。
えっ、あの男の気配がいたしますわ。
いったいどこから?
なにやら、校門の方が騒がしいですわね。
あれは、バカ男?
「君、一体ここで何をしているのかね。ここの生徒じゃないね。
話しを聞かせてもらえるかね。」
「ちっ、ポリ公が。」
ダッシュ!
「こら、待ちなさい。」
「うるせぇ、ポリ公。」
一体何がしたかったのやら、バカのすることは理解できませんわね。
一週間後
まだ待ち伏せを辞める気が、なさそうですわね。
わたくしが、やってもいいのですが、暴力は嫌いなので、
ここは美紀さんに任せることにしましょう。
「美紀さん、ちょっとお話があるのですわ。」
「あん、なんだ京香。」
「ちょっと、お耳を・・・」
京香は一連の話を、美紀に聞かせた。
「なに~!そんな奴が小夜ちゃんにつきまとっているやと~。ど頭かちわったる!」
「美紀さん、静かに。大事にならないように、美紀さんだけに教えてるんですのよ。」
「そ、そうやな。すまん。」
「それで、どういう風にいたしますの。」
「居場所は分かるんだな。」
「遺憾ながら、分かってしまいますわ。」
「なら、無問題だ。後はひっ捕まえて、お灸をすえるだけだ。」
「お仕事の方はどういたしますの。」
「休む!」
「そうですか。どんなお灸か見てみたい、気もしますわ。」
朝早く家を出たわたくしは、美紀さんに、
「あの男ですわ。」
「そうか、後は任せろ。」
ブォンブォン
「おい、そこのおとこ。」
「あん、なんじゃひ~~!」
男は美紀さんに、車の窓を覗いた瞬間に、引きずり込まれて、行ってしまいましたわ。
これで何の憂いもなく、学校に行けますわ。
と、京香は思った。
だが、そう上手く事は運ばなかった。
「ただいま~。」
「ただいま帰りましたわ。」
「美紀お姉ちゃん、お客様ですか?お茶いれますね。」
「いや、そんな上等なもんじゃないよ、小夜ちゃん。」
「美紀さん、それでどうなりましたのっ!」
京香は目を疑った。
「こんにちは、お邪魔してるっす。」
京香は混乱した。なぜあの男がここにいて、自分に挨拶しているのかと。
「ど、どういうことですの、美紀さん!なぜ、あの男がこ、ここにいますの!」
「ああ、いい根性してたんで、連れてきた。」
「いい根性って、あなた何考えてますの!。」
「だいじょうぶ。」
「何が大丈夫なんですの?」
「こいつには、もうあんなことさせないから。」
「それじゃなぜ連れてきたりしたんですの。」
「ああ、それはな・・・」
朝、美紀に空き地まで連れ去られた外道 正二は、
「お前、なにもんじゃ。」
「そんなのどうでもいい。小夜ちゃんに近づくな。」
「なんじゃわれ、さしずすんなや~~」
ボコッ!
あんぎゃっ!
5分ほど失神していた正二は、
「ふふ、やるやないけ、そんじゃこれでどうじゃ~!」
めきっ!
おぼっ!
正二は、失神した。
「い、いかん、いかん、ちょ~なめすぎとったわ。あっあれなんじゃろ。」
「あん、UFOでもおんのか?」
「引っかかりおった。バカが、死にさらせ~~~!」
ばきぃっ!
あぎょっ!
正二は失神した。
1時間ほどそんなことを、繰り返していた。
「おい、もう諦めろ。」
「い、いやだね。」
「お前足がプルプル震えて、小鹿みたいだぞ。」
「う、うるせぇ。」
「仕方ねぇな。お前の根性に免じて、小夜ちゃんちの道場に出入りするのを、みとめてやる。」
「どういうことだ。」
「小夜ちゃんと一緒に、稽古できるいう事や。それでどうだ。」
「ほ、ほんとか?」
「ああ、ほんとだ。そのかわり、家にいる人間には敬語を使え。」
「わ、わかった。」
がくっ!
「そんな感じで、連れてきて傷の手当してやってる、というわけだ。」
「なにが『というわけだ』ですの~!せっかく小夜さんに、
近づけないようにしていましたのに~~~~!」
「よ、よろしくっす。」
「うるさい!!!」
外道 正二の、根勝ちということ?