第二十話 えろげ同盟の絆
小夜ちゃんの心配事がひとつ減りました。小夜の心配事・・・他にもあるのか?
みなさんこんにちは。
神野 小夜です。
昨日お父さんに相談したことが、どうなったか聞こうと思います。
何に使うか知らないけど3万円も渡したのだから。
「お父さん、刀のことだけど。」
「ああ、それなら大丈夫だ。」
「えっ、ほんとに?」
「大丈夫だから心配無用だ。」
「このままだったら、家計を切り崩して、最後は借金生活だったよ。ホッ。」
「わるかったな、心配かけて。」
「ううん、ところでお父さん何してんの?」
「煙突つけてる。」
「えっなんで煙突?」
「前から気になってたけど、蔵を改造してどうすんの?へんな箱はあるし?」
「あれは、鞴ですわ。」
「あっ京香さん。ふいごって?」
「刀を造るのに必要なものですわ。」
「へ~ぇ、そうなんですか。ところでお父さん此処で何すんの?」
がくっ!
「叔父様は、鍛錬場を造っているのですわ。」
「鍛錬場ってなんですか?」
「刀を造る所ですわ。」
「誰が刀を造るんですか?」
「そんなのわたくしが知るわけないでしょう。」
「あっ、それもそうですね。お父さんが刀を造るの?」
「いや、俺じゃないよ。知り合いの刀鍛冶。」
「知り合いの刀鍛冶さん・・・あっそうか!!」
「な、なに?びっくりさせないでほしいですわ。」
「すみません。」
「別にいいですわ。所で何が『あっそうか』ですの。」
「はい、お父さんに相談してたんです。刀のストックがもう少なくなってるって。」
「ああ、そういうこと。封印刀を買うとなると高く付きますからね。
だから、此処で刀を造ろうということですわね。うちでもそうしてますわ。」
「はいっ、そういうことですよね、お父さん。」
「ああ、普通の刀鍛冶が造る美術品じゃなくていいんだ。
封印さえ出来れば極端に言うと、模造刀でも木刀だっていいんだからな。」
「いつ刀鍛冶さん来てくれるんですか?」
「来週には来るはずだ。」
「刀鍛冶さんですかぁ~なんだかワクワクします。」
「そうか、わくわくするか。それはよかったな。」
「はいっ。どっか行っちゃった秀兄ちゃんがいたら、喜ぶだろなぁ。
刀は好きって、言ってたから。」
そこで京香は気づき、力也のおっちゃんの顔を見た。
すると力也のおっちゃんは、口に一本指を立てていた。
それを見た京香は、
「そうですの、秀さんは刀が好きと仰っていたんですの。それは残念ですわね。」
「ほんとですよ。何処ほっつき歩いてるんだか、しょうがない人です。」
すると、力也が京香を手招きしていた。
「何かご用ですか、叔父様。」
「秀のことは、これから先も誰にも言わないでくれ。」
「えっ、なぜですの?」
「みんなの見る目が変わるのは、嫌ということだから、頼むよ。」
「そういうことなら、分かりましたわ。
この神野 京香、この秘密を黒巫女の誇りにかけて誰にも言いませんわ。」
「おお、頼もしい。さすが神野本家の黒巫女だ。」
「任せてくださいまし叔父様。」
「おう、頼んだ。」
その夜、早紀を部屋に呼んだ。
「早紀は知っているのだろう、あの蔵を誰が使うかを。」
「あ、はい。」
「それじゃこの先も、知らなかったで通してやってくれ。」
「どうしてですか?」
「みんなの目が変わるのは、嫌だと思うからな。そうは思わないか。」
「そうですね。そのせいで刀の出来が悪くなってしまっては、いけませんからね。」
力也は夜空を眺めながら思った。
秀。お前の言った通りに、刀鍛冶のことは、誰も知らないということになったぞ。
そのころ秀も、夜空を眺めながら思っていた。
力也のおっちゃん、うまいことやってくれたかなぁ。
秀は秋葉に出発する前に、力也に頼みごとをしていた。
「力也のおっちゃん。早紀におれが刀鍛冶なのを、知らなかったことにしてくれる。」
「まあいいいが、何故だ。」
「いや、俺が刀鍛冶っていうのをみんなが知ったら、
太刀造れ、脇差造れ、って急かすに決まってる。だから、今までの俺しか
知らないってことにすれば、造るにしても俺のペースでできるやん。」
「なるほど、刀鍛冶としての責任がなくなるという事か。」
「もしこれからもばれそうになったら、どんな理由でもいいから、
そうしてもらえたら助かるんだけど。」
「あの連中なら、急かすに決まってるな。任せとけ。
だって俺たちは、『神野えろげ同盟』だからな。」
硬い同盟の絆の話です。