第十四話 私が姫路に行く理由(早紀)
この人も小夜ちゃんが絡むと、なんでもするんだなあ。
みなさんこんにちは。
神野 早紀です。
私は北九州で昼は不動産関係の仕事を、
夜は荒生田神社の黒巫女としてやっていました。
しかし先日、妹の小夜ちゃんから連絡があり、
小夜ちゃんとあの垂れ乳女、あ、すみません汚い言葉が出てしまいました。
小夜ちゃんと、神野 美紀が同じ屋根の下で暮らすことになったということでした。
私はその話を聞いた時、悪い冗談だと思いましたが、
小夜ちゃんがそんな冗談を言うわけがありません。
頭が真っ白に二日ほどなりましたが、頭を切り替えいろいろ考えた結果、
私が姫路に行くのが一番という結論に至りました。
幸い姫路に支店があったので、少しばかり無理を言って
姫路支店に回してもらえることになりました。
そして仕事の引継ぎを済ませて、早く姫路支店に行こうと思っていました。
でも引継ぎをする相手というのが、物覚えの悪い後輩でした。
説明した後に確認すると、『さっぱりわかりません。』という始末です。
メモをしなさいというと、『メモのここの所どういう意味でしょう』
と、何を書いているかさっぱり分からないメモを私に見せに来るのです。
そんなこんなで、1日で終わるはずの引継ぎに5日もかかってしまいました。
今度こそ姫路に向かえます。
車はあった方がいいと思い、車で行くことにしました。
そしたら今度は、パンクはするわ、エンジンから煙は出るわで、
1日あればいけるところを、また5日かかってようやく姫路に着きました。
私は昔から急いでる時に限って、こんな感じなのです。
『私が一体何をしたというの。』と、神様がいるなら、
言ってやりたいことがよくあります。
しかし姫路に着けばこちらのものです。
あの自称姉とかほざいている、神野 美紀から私が小夜ちゃんを守るのです。
変態の毒牙から小夜ちゃんを守るのは私しかいません。
でも私のいないところで、なにをされたのか小夜ちゃんは、
あの変態を慕っている節があります。
『あれは変態だから近づいてはダメよ』といっても
人を疑うことを知らない心優しい小夜ちゃんなら、
『何を言ってるの、美紀お姉ちゃんはいい人だよ』
っていうに違いない。
下手をすれば『そんなことを言う姉さんは嫌いです。』
なんてことになりかねない。
やはりここは、極力近づけさせない。
最低でも二人きりにさせないように、気をつけねばなるまい。
しかし一人では限界がある。
あいつを使うしかないな。
「お~い秀、ちょっとこっち。」
「えっ、なんか用?」
「小夜ちゃんと美紀のやつを近づけないようにしてほしい。
お金なら弾むから。」
秀はこちらに取り込んだも同然。これでなんとかなるなるかな。
「無理無理無理、そんなことしたら『何故、邪魔をする。』とか言って、
ボコられるに決まってる。」
「あんたそんなに美紀のやつが、こわいの?」
「怖いに決まってるよ!」
「それじゃ、二人きりにしないで。それだったら出来るでしょ。」
「まあ、それならなんとか誤魔化せるかな。」
「それじゃあ頼んだわよ。もし私を裏切るような真似をしたら、
分かってるわよね。」
「分かってるからそんな目で見るな。こわいこわいよ。」
秀は、美紀と早紀に挟まれて大丈夫なのか?