オイオイ、やめてくれよ・・・ 6
第4話
ここは司令部の近くにあるバー。そこには、4人の鋼の少女が1つのテーブルを囲って各々のワインやビールを飲んで話し合っていた。
「どうして私が負けなきゃいけないのよ~」
「す、凄いことになってるニャ」
「エンタープライズがここまで荒れるのはそんなになかったんだけどな」
「悪い酒なんだな、これは」
生徒会長風のエンタープライズが、ヤケ酒で荒れてらっしゃる。これは相当、ストレスが溜まっていたんだなぁ、と感心せざるを得ない。
「せっかく、鋼の少女の有効性を必死に説いて回ったのに初戦で惨敗とかないよ。ねぇ!ヤマトさん!」
「そうだねぇ、大変だったんだねぇ」
「うわーん、ヤマトさんはわかってくれてるー!」
そう言って、エンタープライズは俺に抱きついてきた。全く、このやり取りを何回やって来たか。
最初は、「あんなクソ野郎に任せたのが失敗だったのよ」とか「ちゃんとしたケアがあれば、ネコさんやベルさんに迷惑をかける事はなかったのよ」とか散々、愚痴を聞いてあげたのが原因なのだろうか、これ。
愚痴からの泣き上戸と来て今度は何が来るのか、と思っていると、
「上層部のバカぁ・・・」
と抱きついたまま、寝てしまった。
「あらら、寝ちゃったや。相当、疲れてたんだろうな」
「そうニャ、エンタープライズはここ最近、寝不足だったニャ」
「あぁ。元々、俺達の軍上層部は鋼の少女に対して好意的ではなかったんだ」
「どゆこと?」
エンタープライズの疲れように、ネコとベルがそう言ってきた。そのため、俺はそのことについて疑問に思って聞いてみた。
すると、
「俺達の国は合理主義の孤立主義だからよ。鋼の少女なんて言う非効率な戦闘システムに対して、快く思っていない議員が多いんだ。クソナチが台頭してきた時に、ようやく生産の許可が降りたんだ」
ベルがそこでビールを一口飲んで、言葉をつなげる。
「それで俺達が生産されたんだけど、議員たちの妨害があって生活環境はそれほど良くなかったんだ。それで、今回の戦闘で惨敗したんだ。本当だったらもうちょっと頑張れたんだぜ?私たちはよぉ」
そこまで言うとネコも沈んだ顔になり、ベルも声が震えた。そのため、俺はベルの頭をなでた。すると、今までにそんなことをされてこなかったのか、ベルはかなり驚いた様子でこう言った。
「な、な、何すんだよ!お前!」
「ちょ、静かに静かに。エンタープライズが起きてしまう」
「静かにって、いきなり頭を撫でるのはおかしいだろ!?」
「いやいやいや、ベルが泣いてそうだったから撫でただけなんだけど!?」
俺がそんなことを言うと、ベルは顔を真っ赤にしながらこう言った。
「今度からはちゃんと前もって言ってくれよ。じゃねーと驚くだろうが」
「そいつはすまなかった」
「ふんっ」
そんな感じで3人で飲んでいく内に夜が更けていき、お開きになった。
「ふぅ、前もって日本円を米ドルに変えてきて正解だったな。結構な金額になったし」
「すまん、この借りはちゃんと返すからよ」
「ごちそうさまニャー」
エンタープライズから行きつけのバーに誘われた時に、お金がなかったら大変だなぁと思って両替所に行っておいて正解だったな。俺もエンタープライズもなかなかの飲みっぷりだったし、ネコとベルはあまりお金を持ってこなかったからな。
そのため、一先ずは支払いは俺の財布でして機会があればその借りを返す、という事にした。そうしないと、ベル達の気が済まなかったからだ。
「さぁて帰るぞ、病院に」
「あぁ」
「病院にレッツゴー!ニャ」
そんな感じで、病院に向かっていると背中でぐっすりと寝ているエンタープライズが俺にしか聞こえないような声で囁いた。
「おかーさーん・・・」
(ははは、勘違いしちゃってる)
俺は苦笑しつつ、そう思いながら彼女達を治療している病院に向かった。
~~~~~~
「どうだったかしら~?」
夜明け近くになり、俺達が宿としてる建物に近づくとずっと起きていたであろうアカギと遭遇して、エンタープライズたちについて聞かれた。
「見た感じでは、言いたいことを言ってスッキリした表情だった。今後は気兼ねなく話せそうだ」
「そうだったの。良かったわ~」
「それと聞いた話なんだが・・・」
俺の報告を聞いたアカギはホッとした表情をしたが、もう1つの報告でそれは険しくなる。
「軍上層部の難色で生活環境はあまりよろしくない、と・・・」
「あくまで酒の話だからなんとも言えないけど、彼女達の表情から察するに嘘では無さそうだ」
彼女達の表情は、悲しみに包まれた表情だった。あれが嘘だとすると、俺は人間不信になりかねない。
「わかったわ。長官には私から報告しておくから、ヤマトちゃんは休んで頂戴」
「はいよ。アカギも適度に寝ておけよ?」
「ふふっ、ありがと~」
俺がそう言うと、アカギは笑顔になってお礼を言ってきた。彼女も一晩中、起きていたであろうからそのぐらいの配慮は必要だろうとの判断でそうした。
そして俺は、自分に割り振られた部屋に到着すると服を脱いでベッドに入って寝た。
「ヤマト、起きてるか?ヤマト?」
扉がノックしているのと同時に、俺を呼んでいる声で目が覚めた。
「んあ?あぁ、今起きた。この声はレイか?」
「あぁ。午後1時から会議らしいから起こしに来たぞ?」
「・・・わかった。すぐに行く」
そう言いつつ、時計を見ると12時前だった。そのため、服を着て歯磨きを早めに済ませ、軽めの化粧をしてドアを開けた。
すると、レイは扉の隣で待っていた。
「身支度は終わったか?」
「あぁ、基本的にすぐに終わるような形にしてあるからな」
「そうか」
そう言って、俺はレイと一緒に食堂に向かって歩いているとエンタープライズと鉢合わせになった。
「あっ・・・」
「おはよう、エンタープライズ。と言っても、時間的にはもうお昼だけどね」
俺がそう言うと、エンタープライズは顔を赤らめつつ、こう言った。
「や、ヤマトさんもこれから食事に?」
「あぁ、そうだ。エンタープライズも一緒にどうだい?」
「え、えぇ。いいでしょう・・・」
そんなやり取りを見ていたレイが、驚愕した表情で呟いた。
「あんな険悪だったエンタープライズが、一晩でこんなに丸くなるなんてどんな魔法を使ったんだ・・・」
魔法じゃなくて愚痴を聞いただけなんだけどなぁ、と思いつつもその呟きをスルーして食堂に向かった。
~~~~~~
「改めまして私、エンタープライズを始め、ネコとベルは日本艦隊に組み込まれました。よろしくお願いします」
「よろしくニャー」
「よろしくっす」
エンタープライズ達との宴会から数日後、海軍総司令部からの伝令によってエンタープライズ以下、3名が俺たちの艦隊に組み込まれることになった。
理由としては、アメリカの国内事情や軍令部の方針などがわかる人物を現場に組み込むことによって、流動的かつ効率的に勝利への戦いに臨むようにしたからである。
そして、ハワイ諸島を開戦初日で取ったことによってアメリカ軍は東南アジアへの足がかりを失わせることに成功したため、今後の方針を決定する必要がある。
理由は他にもあるのだが、エンタープライズ達には暫くの間は日本軍として戦ってもらうことになった。
「貴方達がエンタープライズちゃん達ね~。よろしくよろしく~」
「!?」
「アカギ、それはまだやめておけ。彼女達が怖がってるだろう?」
早速、アカギが身体検査(意味深)をやろうとしていたので止めておく。そうしないと、半日ぐらいは付き合わされそうだからな。
「え~、それはないわ~。ヤマトちゃん。ちょっと調べるだけよ~」
「そう言いつつ、色んな所を調べたよな?俺はともかく、彼女たちはやめておいた方がいい」
俺が、アカギの行動を静止させると本人から文句が出たため、適当に受け流しながらおぞましい物を見たかのように怖がっているエンタープライズ達に声をかける。
「すまん、アカギはこう見えてもやる時はやる人なんだ」
「えぇ、わかったわ」
俺がそう言ったが、エンタープライズ達の恐怖はまだ抜けきっていなかった。
自己紹介が終わった後、次の作戦が行われる前に俺は山本長官から作戦を滞りなく遂行するため、ハワイ諸島に駐在する艦隊の総指揮を任されることになった。
本来、俺はそういった人を引っ張っていくことは苦手だが命令のため、仕方なくではあるが皆を引っ張らなければいけなくなった。
そして、年が明けて1942年の1月上旬に晴れて量産された蒼電がハワイ諸島に来た。
「これでハワイ諸島の防衛力も高くなるな」
「そうね~。この戦いは長くなりそうだから、このぐらいの戦闘機はほしいわね~」
「局地戦闘機の蒼電か。私達とは別な戦闘機だな」
「そうだね。それに面白い形をしているし」
「そうか。アカギ達は初めて見るのか」
俺自身は、開戦前に長官の伝手で見せてもらったがアカギ達には伝わったのはつい最近だ。
それほどまでに、この戦いは長くなる。
俺達の予想は当たっていて、アメリカとの開戦から2年以上の年月をかけて講和に導いた。
その間に多くの仲間を失い、多くの悲しみがあったがそれでも前へ前へと突き進んだ俺達の絆は強固なものになっていく。
そして1944年8月15日、偶然にも前世の日本が負けた日と同じ日にアメリカとの講和会議が開かれ、戦争は終結した。
話を作ろうにも第2次世界大戦の日本ではない以上、これ以上作れそうにもなかったので打ち切りにしました。
こんな終わり方はできればやりたくなかったけど、話が作れない以上はこうせざるを得ませんでした。
そのため、別の方法でやろうと思いますのでご容赦して下さい。




