少年少女は昼に備える
今回の作品はスラスラ書けるので続くと思います…たぶん。
「ルミネール」ーーこの世界での一番の都市で多数のギルドの住処となっているこの国の中心街には、ギルドに人気の酒場がある。
昼間から栄えるこの酒場には、強豪ギルドから弱小ギルドまで数多くのギルドが集まっている。今日もその例外ではない。
ーーそんな酒場が、とあるギルドの入店によって一瞬で凍りつく。
『ブラックローズ』ーー禁断のギルド狩りを平然と行う最恐ギルド。特にそのギルドマスターであるブルートという少年は、“死神代行人”の異名を持ち、何人ものギルドマスターをその手で葬ってきたとされている。
ブラックローズは信じがたいことに5人の少年少女のみで構成されている。
『死神代行人』ブルート、『セブンキラー』ランデル、『悪夢の計画者』ユーメル、『神速』マリン、『最恐の魔導士』ユミナ。
それぞれが異名を持っている、異質のギルド。
ーーそんなギルドが昼間の酒場に入ってきたのだから、凍りつくのも当たり前といえば当たり前だ。
5人は静寂となった酒場を全く気にかけず、平然とカウンターに座る。
「マスター、オレンジジュースくれ」
ギルドマスターであるブルートが口を開く。
酒場で酒を頼まないのも、まだ未成年だからだ。
死神代行人が酒ではなくジュースを頼むなんてなかなか滑稽な風景だ。
それぞれ好みのジュースを頼み、5人はグビグビとジュースを飲み干していく。
「うわ、ギルドキラーだよ…」
無知なギルドの一員が呟く。その一言で周りがドヨっとする。
「馬鹿野郎…死にてぇのか…!」
横に座っていた別ギルドの男性が小声で言い、発言主の口を手で押さえる。
その一連の流れを聞いていたのか、ブルートが乱暴にコップを置いた。
その音に周りは思わずゴクリと息を呑む。
そして全員に注目されたブルートが口を開く。
「ーーマスター、美味しかった。会計よろしく」
酒場にいた全員がホッと胸をなでおろす。ブラックローズのメンバーを除いて。
プルートが会計を済ますと、ブラックローズはそそくさと出て行った。
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「ひっどいねー!何あの言われよう」
髪をくるくると指で巻きながらマリンがぶつぶつと言う。
「死にてえのか!だってさー。無駄な殺生はしないっての!」
「まあ仕方ないよね…これが今の僕たちの評価さ」
文句を言うマリンに対して、今の状況を受け入れているかのようにユメールが続ける。
「ほっときゃいいのよほっときゃ!どうせ三下ギルドでしょ」
ユミナが言い放つ。
「ま、事情なんて知るはずもないからね」
ランデルが呟く。
「周りにどう思われてよーが関係ねーよ。次のギルドはこいつら。これを仕留めるだけだ」
「よっ!かっこいいねぇ“死神代行人”さん!」
「茶化すなバカ」
おれは茶化してきたランデルにビシッとチョップを入れる。このギルドでは日常茶飯事だ。
辺りが暗くなってくる。今日の天気予報は昼から雨。ーー予報通りだ。
「ーーよし、行くか」
俺達はターゲットの泊まっている宿屋へと向かう。
こうしてブラックローズは今日もまた動き始める。