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箱入りメランコリ  作者: ランプライト
第一章「シオン」
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第005話「取り残されていく情熱」

配属4日目、

直接上司の「国府津さん」が未だ出社しない為、僕は先月までビジネスプランを担当していた「森さん」から当面の仕事の指導を受ける事になった、


ビジネスプランの業務は大きく分けて4つあった、


一つは各部・課の業務量予算を整理する事、毎月追加承認されるプロジェクトの予算データをサーバーのデータベースからダウンロードして、部別、課別に振り分けて報告する、


一つは各部の業務量実績を整理して予算値と比較する事、実績データは各エンジニアが会社に出入りする時刻をチェックして、作成するレポートや操作するCADや実験装置の入力データから対象プロジェクト別に業務時間を自動集計してデータベースに蓄積される、この実績値が予算を超えると赤字プロジェクトになるので部別・課別に事前に警告を発しなければならない、


三つ目は残業時間管理、組合と取り決めた月間残業上限時間を上回りそうな担当者をチェックして、管理職上司に通達する事になっている、中には五月蠅く言われずにじっくり仕事したくて、セキュリティシステムの就業時間チェックを誤魔化して残業する者がいるらしい、しかしそれは協定違反に繋がるので厳しく管理しなければならない、と言う事らしい、


最期の一つは、将来業務量を予測して会社の必要人員数を見積もる仕事だが、諸々政治的なしがらみも多くて、この仕事は新人の僕には暫くは回ってこないらしい、



森:「ここのボタンを押すと、サーバに新規スプレッドシートが自動作成されて、データベースからデータがダウンロードされる、簡単だろ、」


会社から配布されるA4サイズのタブレット上に映し出された「社内専用ブラウザ」のコントロールパネルを指でタッチすると、…


言われた通り、即座に表計算シートが作成されて、…そのファイルを開くと、部・課別にまとめられた業務量データが綺麗な表になって示される、



シオン:「本当だ、簡単ですね、」

森:「個人別のデータが必要な場合はこのボタンで表の設定を変えて、再実行する、」


…処が途端に、データへのアクセスエラーが表示される、



森:「そっか、個人データへのアクセス権は上司の承認が居るんだった、そうすると「国府津さん」が来てからだナ、…一体いつ来るんだ?」


稲毛:「明日の飲み会には間に合わせるとか言ってたよ、」


振り返ると其処に、どうやら様子を見に来たらしい課長が立っていた、



稲毛:「どう?慣れた?」

シオン:「えぇと、まあ、…」


森:「未だ始めたばかりで、何をやっているのか分からない段階ですよ、慣れるも何もないですって、」


「おっとり兄さん」のセリフは僕を擁護しているつもりなのだろうけど、此れ位の作業は大学で使っていた分析装置の操作やデータ解析に比べれば、全く幼稚とも言える低レベルであって、…全くそう言う意味で慣れるも何もない、


と言う訳で僕は、無能扱いされて少しカチンと来たのを悟られない様に密かに眉を顰める、



稲毛:「課の雰囲気に慣れたかって事だよ、先輩は皆親切にしてくれてる?」


シオン:「はい、皆さんとても親切にしてくれます、」


と言うよりもまだ、何かを頼らなければならない様な場面に遭遇した事が無い、



宮木:「何言ってるんですか「稲毛さん」! 当然ですよ、何しろ経理グループに入った久々若い男子なんですから! 職場の天然男性コラーゲンなんですから!」


と、「ぽっちゃり先輩」が行き成り会話に割り込んで来た、


幾ら先輩とは言え、そんな風に言われるのはちょっと心外な気がする、



宮木:「ところで「稲毛さん」、明日の歓迎会は出席で良いですね、」


稲毛:「まあ、出ない訳にはいかないだろうなぁ、」


宮木:「お金だけ払ってもらえれば別に出てくれなくても良いですよ、「稲毛さん」飲むとセクハラするから寧ろその方が嬉しいです、」


稲毛:「人聞きの悪い事を言わないでよ、新人クンが本気にするだろ、」


言いながら「稲毛課長」は渋い顔で、チラリと「戸塚さん」の方を伺っている、


結局この課長も「そう言う類のおじさん」なんだろうな、…



特段希望に燃えていた訳ではないけれど、どんどんやる気が失せていく様な気がするのは、恐らく単なる気の所為では無いのだろう、

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