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箱入りメランコリ  作者: ランプライト
第一章「シオン」
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第003話「同期のアイドル」

配属先への初出勤の朝、

僕と「ナギト」は対岸のマリンタワーを遠くに眺めながら、緩緩とカンパニーバスに揺られて学研特区に所在するNAVEの研究開発センターに到着する、


見ると集合時間には未だ余裕が有るミタイだった、心配性の僕はついつい30分前行動をとってしまうのだ、


社員通用門でスマホに映した社員証をかざして駅の自動改札の様なゲートを潜り、


地上階のカフェテリアでカプチーノのショートを買って、それから僕達は、矢印の書かれた掲示板に従って、新入社員の集合場所になっている幾つかのお客様用会議室に辿り着いた。



ナギト:「俺、こっちみたい、帰りに「メッセージ」送るよ、」

シオン:「うん、判った、」


「ナギト」はプロジェクトマネジメントグループ用の会議室の中へと消えて行き、僕は辺りを見回して、電光掲示板に「開発総務部」と映し出された一番端っこの会議室のドアを開ける、



シオン:「失礼します、」


会議室の中には、未だ誰も来ていない、


パソコンのスクリーンを兼ねたテーブルには「戸塚・マドカ」と「二宮・シオン」の名前、…この配属が何の間違いでも無かった事を改めて痛感して僕は、ひとつ大きな溜息を吐く、


スクリーンにはもう一人「平塚・リョウコ」の名前が有った、どうやら開発総務部への配属は3名らしい、


僕はエルゴノミック会議椅子の一つに深く腰かけ、会社支給のタブレットを鞄から取り出して、未だ冷めないカプチーノを一口舐める、


会社からの連絡事項や会議予定は適宜このタブレットに送られてくる事になっていた、社員は毎朝スケジューラをチェックして、アウトプット(=報告)の内容と納期を登録して上司に承認を貰うのがルールだ、


此れまでは研修期間だったのでシンプルに「週報」と登録して上司代わりの人事担当者に承認を貰い、週末に一週間の研修内容を日誌の形でまとめた「週報」を送付して、同じ人事担当者に業務完了の承認をもらっていたのだが、…


これからは、どんな仕事が待っているのだろうか?



マドカ:「失礼します、」


軽快なノックと元気の良い挨拶と共に「戸塚・マドカ」が会議室に入ってきた、


僕は軽く会釈して、それっきり出来るだけ目を合わせない様にタブレットの連絡事項を読んでいるふりをする、



マドカ:「二宮クン早いね、私が一番だと思ってたのに、」


遠慮がちに見た彼女の顔は、やはり世間一般的に見て美少女の部類に入るのだろう、


きちんとした紺のスーツと薄いピンクのブラウスは決して派手ではないのだけれど、彼女のトランジスタグラマーな体形と美貌の所為か、猥雑な情動が湧き上がってくるのをどうしても抑えられない、



マドカ:「何だか緊張するね、」

シオン:「…そうだね、」


「ナギト」ならここで、気の利いたセリフの一つや二つ繰り出すのだろうが、…何もできない僕は、再び臆病に視線を逸らして腕時計の針を覗き込むのみ、



マドカ:「ねえ、二宮クンって、彼女いるの?」

シオン:「いない、です、」


唐突に質問されて僕は更に萎縮し、乾いた唇を少し温くなったカプチーノで湿らせる、



マドカ:「じゃあさ、LINEの交換とかしても大丈夫かな?」

シオン:「別に、構わないです、けど、」


言っている傍から彼女はスマホを取り出して、…二人がスマホを軽くタッチさせると、お互いのIDが自動的に登録される、



マドカ:「何これ可愛い!もしかして猫好きなの?」


僕のプロフィール画像には以前ネットで見つけた「ターキッシュバン」の顔写真が使ってあった、


真っ白な顔にピンクの鼻とアーモンド型の大きな瞳、それに特徴のある耳の周りの茶毛は、まるで困り顔の八の字眉毛の様にも見える、


「戸塚さん」のプロフィール画像には彼女の笑っている顔がそのまま貼ってある、何処かのアイドルだと言われても誰も疑わないだろう、完璧な笑顔だ、



マドカ:「これから同期どうし、仲良くやって行こうね!」

シオン:「うん、よろしく、」


僕は、少し照れて苦笑いしながら、もう一度「戸塚・マドカ」の顔をチラ見する、

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