偶像達と対峙する歌手(idols VS singer song writer)【singer side:花野美知】
【singer side:花野美知】
歓声が聞こえる。
でも、この声はライバルであるアイドル達に向けられたものだ。
デビュー前に辞めた私と違い、彼女達は様々なメディアで取り上げられている。
無名に近い私を知っている人は
「え?」
いた。
しかもその人は審査員席にいて、私に向かって手を振っている。
……勘違いじゃなければいいな、と思いつつ手を振ると、その男性は嬉しそうに手を振り返してきた。
私は嬉しくて思い切り手を振り返した。しかし、隣の人から諌められて手を振るのを止めたので、私も手を振るのをやめた。
それに、この事が原因として失格になってしまえば、復讐を果たせない。
季節外れの花火により華々しいスタートを切ったこの大会だったが、開始序盤は盛り上がりに欠けていた。
直前で数名、予選上位通過者の出場辞退が発表、これにより大会プログラムの大幅な変更が行われた。
私の出番は当初3番目の予定だったが、なぜか最後から2番目に変更された。
「何かおかしい」
そう思いつつも、その疑問を考察することは、耳障りなアイドルの歌声によって妨害された。
「本当に、彼女も予選通過者なの」
その曲は、聞き覚えがあったが本当に同じ歌なのがと思うくらい音程が取れていなかった。
案の定、点数は20点を超えるのがやっとであった。
「勝てる」
私は、そう確信し自分の出番に向けて最後の調整を行うため控え室に向かった。