32:鋳物チュートリアル
突然ですが。バケツに穴が空きました。
バケツって、柔なんだね。まさか穴が空くとは思わなかったよ。
双葉草の収穫をしていたのだけど、底が抜けたんだ。まあ、少し錆びてきたな、とは思っていたけどさぁ。
と、いうことでだ。今日のチュートリアルは鋳物に挑戦しようかと思う。
鋳物師のおじいさんはいくつもの木製の型と砂の山、バケツに入った液体を私に見せる。
「鋳物は木の型で砂の型を作り上げ、砂の型に液体になるまで溶かした金属を流し込むことによって出来上がるのじゃ」
そう言って、彼は木の型を組み立て、砂と液体を練り、木の型を使って型を作り上げていく。
「型が乾かない内に鋳鉄を流さねばならん。型が乾くとひび割れてしまうからの」
型を持って炉に向かう。
「石炭を入れて温度を上げろ! スピード勝負じゃぞ!」
石炭を入れて、鞴を使って熱を上げていく。
「鋳鉄を入れるぞ!」
入れられた鋳鉄は見る間に熔けていく。
「鋳型に流すのじゃ!」
鋳型の口に熔けた鋳鉄を流し込む。
「ふぅ……。後は冷めるまで待つ。その間に鋳鉄について話そうかの」
「お願いします」
工房に備え付けられた休憩所でアイスクリームを振る舞われる。冬だけど、暑い工房だと救われる。
「気づいたかもしれんが、鋳鉄は普通の鉄と違って熔けやすいように黒炭が配合された鉄なのじゃ。昔は道具箱に鋳鉄の欠片とふいごを持って町から町に渡り歩き、鋳物を修繕する職人ーー鋳掛け屋が多くいたそうじゃ」
ちなみに、ここでは鋳鉄の欠片も販売しておるぞ。と、宣伝が入る。
……何とも商魂逞しい。
「さて、そろそろ冷めた頃合いじゃろう」
鋳型を丁寧に叩き割ると黒い鋳物が現れた。
「では光りだすまで研磨しておきなさい」
おじいさんは私に研磨剤や磨き布を渡すと何処かへ行ってしまう。
とりあえず、鋳物のバケツを研く。
研く。
磨く。
うん! こんなところでいいかな!
目の前には鈍く光る鉄のバケツがある。
「ほほう。できたの」
おじいさんが戻ってきた。
「これで鋳物チュートリアルはお仕舞いじゃ。素敵な作品待っとるぞ!」
おじいさんはパチリとウインクして去って行った。
《鋳物チュートリアルが終了しました。
チュートリアル・カウンターに報告してください》
《鋳物スキルレベル0を獲得しました》
ーーー獲得スキルーーー
鋳物スキルレベル0
+VIT1
ーーー獲得報酬ーーー
100C
鞴 小型のふいご
これは、鋳掛け屋をするように、ということですか?




