19:紡績チュートリアル
とりあえず、今自分にないものから始めよう。
何がないか。防具でしょう!
と、いうわけで紡績チュートリアルを選択。
いや、布系で縫製とかもあったんだけどね、糸作りから始める紡績が目に映って……うん。
好奇心の赴くままに! ってことだよ。
向かう先はレンガ造りの小さな工房。その名も『製糸工房』そのまんまだ。隣には大きな工房、『染色工房』がある。
中に入ると、女性達がカラカラと糸車を回していた。その内の一人がキリが良かったのか手を止めてこちらへやって来た。
「紡績チュートリアルだね? 生産ギルドから聞いているよ。アタシはアイラ。アンタは?」
「喜楽です。よろしくお願いいたします」
それじゃ、説明するよ。と前置き、彼女に連れられて糸車の前にきた。
糸車の傍らには綿花の山が積まれている。
「始めに、綿の繊維の向きを揃える」
彼女を真似て、1つずつ繊維を揃えていく。
「繊維を糸車に取り付ける。繊維の端と端を繋げながら、車の先にあるボビンに巻き付けるんだ」
端と端を繋げながらって事もなげに言うが、慣れない作業に四苦八苦する。
「そう。巻き付けたね。後は繊維を持って糸車のペダルを踏むんだ。繊維の持つ力によって糸の張りが変わってしまうから、同じ力で最後までやるんだよ。商品にならないからね」
最後まで同じ力って! キツいですよ!
そんなことを思いながらも頼んだのは自分であり、皆さんその作業を延々と続けているのだ。弱音は吐けない。
古来、糸紡ぎや機織りは女の仕事とされてきた。ご先祖様達はこんなハードな仕事をずっとしてきたんですね。
「そら。とりあえず、この山を片付けな。じゃ、アタシはもう戻るよ」
「戻るんですか!? アイラさん!」
「これくらいできなきゃ、スキルなんて覚えらんないよ。頑張んな」
アイラさんを見送り、私は綿花の山を見る。やるしかない。
とにかく、この綿花の繊維を揃えよう。
次に、糸車へとセットする。ボビンに巻き付けたら綿花を引っ張りながらペダルを……
わああっ、持ってかれる 持ってかれる!
持っていかれないように強く握り、引っ張る。糸車はやがて回転速度を落とし、止まった。
いつの間にか隣で作業していた女性が来ていた。彼女は糸切りハサミでパチリと糸を切り取り、ボビンを外す。
「やり直し」
「はい……」
何度もやり直し、ついに1つのボビンを巻ききった。安心してホッと息を吐く。
さあ、この調子で綿花の山を糸に変えよう。
《紡績チュートリアルが終了しました。
チュートリアル・カウンターに報告してください》
《紡績スキルレベル0を獲得しました》
《イベント:服飾師への道が発生しました》
『服飾師への道
紡績スキルレベル50
機織スキルレベル50
染色スキルレベル50
製紙スキルレベル50
彫刻スキルレベル50
裁縫スキルレベル50
宝飾スキルレベル50』
やっぱり、道は険しいんだよ。
それにしても、服飾師の道に何故製紙スキルが必要なんだろう?
あ、型紙? 型紙作らないと量産できないとかそういうこと?
それとも、絵柄をつけるのに型紙使うとか?
そう考えると必要に思えてきた。
ーーー獲得スキルーーー
紡績スキルレベル0
糸を紡ぐスキル
+DEX1
万能魔術天系『スピニング』任意の太さの糸を紡ぐ。
流石の万能魔術。便利だね。
ーーー獲得報酬ーーー
100C
チャラク
小型の手回し糸車。木製。重さ5㎏。
ああ、うん。使わせていただきます。




