18:システムチュートリアル(生産ギルド)
職人街と卸売通りの中間に生産ギルドはある。
レンガ造りのギルドは総2階で魔道ギルドよりも小さい。生産は日常に関わるから冒険者ギルドより大きいと思っていたので意外だ。
中に入れば床にはモルタルだろうか? 白く平らな床面には色とりどりのモザイクタイルが埋め込まれて中央にある生産ギルドの紋章を象り、放射状に並んでいる。
なんで床に凝っているんだ!?
ああ、いや。凝っているのは床面だけではない。
よくよく見れば扉の縁回りには唐草紋様が彫りこまれ、ホールの照明にはシャンデリアがある。
調度品に凝っているのは生産者の意地ということだろうか? そういえば、みなとさんも出汁ひとつでかなりの情熱を向けていた。
色鮮やかなモザイクタイルを踏むのは躊躇われるのだが……玄関で立ち止まっていても仕方がない。カウンターに向かおう。
生産ギルドのチュートリアル。カウンターを担当するのははち切れんばかりの筋肉を持つ大男だ。
今までチュートリアル・カウンターの受付が若者だった分、40くらいの壮年男性に違和感を感じる。
「生産ギルドへようこそ。ここは様々な生産職を統轄するギルドだ」
視界の端に流れるログに、首を傾げる。
「統轄? 統括ではなく?」
統轄は多くの機関を管理・支配することであり、統括は様々な人・物をまとめることだ。
「気がついたか」
ニヤリと彼は笑う。
「鍛冶。と、一口に言っても様々な鍛冶がある。大別すると武器、鎧、兜、盾、生活用品、機械部品とかな。それらを職とする職人は鍛冶ギルドに所属し、鍛冶ギルドは生産ギルドに組み込まれているんだ」
「なるほど。同業者のギルドをまとめたものが生産ギルドなのですね」
でも、素材屋は何に分類されるのだろう?
「素材屋はどこに入っているのですか?」
「商業ギルドに決まっているだろう。工房だけなら生産ギルドだが、商売しているなら商業ギルドに加入するのが義務だ」
それはまた、ややこしい……
「素材を採取、採掘ーーまあ、自分で取りに行くような奴は冒険者ギルドや魔道ギルドに加入して、近辺でできるクエストを受注したりもするな」
「なるほど。打撃一辺倒の戦士でない限り、
複数のギルドに加入した方が良いのですね」
「その通りだ。さて、チュートリアルはどれを選ぶ?」
彼は小雑誌を取り出して、こちらに回す。
「えっと」
「取り扱うスキルが多すぎてな。目次に大まかな分類があるからそこから選んでそれぞれのページを参照してくれ」
仕方がない。目次から……は?
『採集系(採取・伐採・採掘)
服飾系(布系・絹系・革系)
農林系(農耕・牧畜)
鍛冶系(鍛造・冶金)
製錬系(製鉄・ガラス)
木工系(弓矢・道具)
: 』
うっわぁ……。これ、極める事ってできるの?




