16:システムチュートリアル(PCC)
みんなでやってきたのは一軒の料理屋だ。
「定食屋みなと」と書かれた暖簾をくぐり、店主に挨拶する。
「おや、プレイヤーじゃねえか。チュートリアルか?」
「はい。よろしくおねがいします」
「よろしくっつうか、俺そのものがシステムチュートリアルの見本なんだがな」
見本?
「俺はPCCのみなと。今から十年前にエンジョイ・ライフを引退したプレイヤーのコピーキャラさ」
「プレイヤー・コピー・キャラクターですか」
確かに、取り扱い説明書にも載っていた。
「知ってんなら省略するぞ。俺のオリジナルは定食屋を経営する料理人だったわけだ。そら、メニューはこれだぞ」
ざっと見る。
「親子丼とウーロン茶をお願いします」
「あいよ」
親子丼を待つ間、復習をしよう。
プレイヤー・コピー・キャラクター。
PCCと呼ばれる彼らは、引退するプレイヤーの過去ログをたどり、行動パターンをNPCに取り込ませたプレイヤーのコピーだ。
引退後、運営からコピーキャラを創るかどうかの問い合わせが届けられ、承諾すると1ヶ月ほどで現れるそうだ。
ちなみに、両親に問い合わせは来ていない。
しかし、おじいちゃんには問い合わせが来たそうだ。
お兄ちゃんと二人、RPGやってたの!? と驚いたのは3日前のこと。
開始3ヵ月で心筋梗塞で倒れたおじいちゃんはRPGーーしかもPKがあるような心臓に悪いゲームーーをできない体になった。
開始3ヵ月で引退する人はいなかったから、PCC第1号なのだと自慢していた。
死にかけたというのに、何を自慢しているのだろうね?
料理ができた。他の料理も出揃っているようだ。回想は後にしよう。
「いただきます!」




