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14:杖工チュートリアル

 魔道ギルド近くにある杖職人の店に入った。


パーン!


大きな爆発音を皮切りに、足元でいくつもの閃光が炸裂する。


「ぎぃやああああっ!」



 杖店から逃走した私は魔道ギルドのお兄さんに保護され、杖職人のおじいさんがNPCの皆さんに説教されているのを見ている。


 事情聴取によると、彼は私が杖作りに興味を持っていると魔道ギルドのお兄さんに聞き、チュートリアルを今か今かと首を長くして待ち、店を掃除し、店内を飾り付け、パーティグッズを用意していたそうだ。

どんだけ楽しみにしてんだよって話である。

ちなみに、爆発音は爆竹だそうだ。


 改めて自己紹介だ。

魔素材屋のおばあさんと魔道ギルドのお兄さんが立ち会いのもと、はっちゃけすぎた杖職人のおじいさんと向き合う。

「初めまして。チュートリアルをお願いした喜楽(きらく)です」

「ようこそ、ウッディー杖店へ。奥に作業場があるから中へどうぞ」

ウッディーさんに続いて中へ入ると、木の臭いがした。杖だものね。

火薬臭の漂う、色紙チェーンや空中に浮かぶ色とりどりの淡い光りがあるの店がおかしいんだ。


 作業場には大量の薪と釜戸、なんかスポイトみたいな形のでかいの、広い机に工具。

カンナもあって、そこから木の粉独特の臭いが発されているようだ。

なんで杖屋に釜戸があるんだろう?


「さて、まずは杖の芯を選ぼう。この中から自由に選んでみなさい」


おじいさんは机にお盆を置く。中には細々としたものが並んでいた。

芯と言ってもなぁ。


「PPはありますか? 鑑定スキルを取ればどのようなアイテムかを知ることができますよ」


お兄さんの助言に成る程と頷く。

「鑑定チュートリアルも受けて見たかったのですけどね」

「古代の銅剣をじっくり見るそうですよ」

メニューからPPを使って鑑定スキルをとりながら言えば、チュートリアル内容を教えてくれた。

「ああ、それならいらないか」

飛鳥時代と思われる銅剣は見たことがある。

昔、中学校の体育館を建て直す際に出土したものを神社の資料館で見せてもらったのだ。

どう見てもサイズや傷み具合しか違いは分からない。って、そうじゃないんだよ!


ーーー獲得スキルーーー

鑑定スキル

アイテムの名称を鑑定する。商売系スキルをとるとレア度や時価などがわかる。

INT+1


すごいな商売系!

さて、本題に入ろう。芯にする素材の鑑定だ。

私は長い毛をつまみ上げ、鑑定する。

およそ60㎝の毛は白く艶やかで指に巻きつけてもつるりと逃げる。


『???』


【鑑定スキルのレベルが上がりました】

ん? あれ?


「何をしておるんじゃ! リュウバのたてがみをチュートリアルで出すやつがあるか!」


おばあさんがおじいさんに怒鳴り付けている。

おじいさん、またやらかしたんだね?

それにしても、りゅうば、の、たてがみ。鬣だから馬。りゅう馬。竜馬、かな?

確か三蔵法師の馬で、西海白竜王の娘だとかいう伝承のあれだよね。

確かにチュートリアルで出てくるようなモンじゃねぇなあ。

【鑑定スキルのレベルが上がりました】

これ、見てるだけでレベルが上がるんですけど。どんだけ先のアイテムなんだろ。


次へいってみよう。こんどのものは何かの牙だ。牙はとても大きく10㎝ほど。付け根が2㎝ほどの直径なので犬歯が発達した生き物なのだろう。


『ロングスネークの牙』


蛇かぁ。


「それではこれでお願いします」

未だにおばあさんに叱られているおじいさんに声をかける。

「おっおお。ロングスネークの牙じゃな。竜馬のたてがみは良いのかね?」

「加工できると思っていたのですか?」

「チュートリアルに来たものが加工できるようなアイテムではなかろうて」

「むぅ。これを使えば第一ボスも一撃で倒せる杖ができるというのに」


こんな序盤ーーしかも始まりの始まりでそんな装備いらない。


「少しずつ強くなって、敵わない敵に勝てるよう努力するのが面白いところじゃないですか。ボスを一撃必殺するようなものはいりません」


私は序盤のレベル上げや鬱蒼とした荒れ地を開拓するのが好きだ。

終盤の敵とのレベルが離れすぎて楽勝だとか、興した町が都会になって惰性化したりすると萎える気質である。


「だから、今の自分に手に入れることができるようなアイテムで、自作の装備を使い、段階的に強くなるのがいいんです!」


「俺TUEEEはいらないんじゃな? 宜しい。ならば準備していた神木は取り止め、樫の木にしよう」

神木使う気だったの?


「それでは作業を始めようぞ!」


 真面目モードに入ったおじいさんは私の隣に立ち、チョークを手にすると机に向かう。

「まず、円を描く」

グルリと綺麗な円を描く。

真似てみたものの、綺麗な円を描くことができない。少し0に近く細目に見えるのが気に入らない。

「慣れじゃよ、慣れ」

ニッと笑い、作業を続ける。

「同じ円を2つ描く。円はΔ(デルタ)のように配置なさい」

私が描き終えると彼は頷く。

「隣り合う円を線で結び、奥に描かれた円から垂直に線を描いて結ぶ」

歪まないように注意しながら、線を描いて結ぶ。

「左に『芯』、右に『棒』、奥に『杖』と書く」

「漢字なのですね」

「漢字は一文字で意味を成し、解釈を違えることも少ないからの」

成る程。

「芯に芯材となるロングスネークの牙を、棒に樫の棒を置く」

「円からはみ出しても大丈夫ですか?」

「円は漢字を囲んで限定させるためのものじゃ。漢字だけで作業すると芯と棒、杖がごっちゃになって芯材がくっついた棒が杖として現れることもある。棒の方が小さい場合は芯材に棒がはまったりな」

聞き捨てならないことを聞いた。

「棒より芯材が大きくても中に入る?」

「そういうもんじゃ」

ふぁんたじー。

「芯と棒の上に手をかざして魔力ーーMPを注ぎ、線の上を通って杖の上まで持っていく」

おじいさんの手は光り始め、線の上を通り、交差する箇所で手を重ねて杖の上まで移動する。真似してみよう。

【使用するMPを選択してください】

キリよく40を注いでみよう。

《MP:44》→《MP: 4》

手が光り始める。線を辿って杖の上まで持っていく。

「仕上げじゃ」

図面が光り始める。少しずつ強くなる光が徐々に治まり、机の上には樫の棒があるだけだ。

チョークで描かれた図面もロングスネークの牙もなくなっている。

鑑定してみよう。

『樫の杖

 樫でできた魔法の杖。芯材にはロングスネークの牙が使われている。攻撃力+20』

序盤で+20とか良いものなんじゃあないだろうか。

いやまて。ロングスネークはいつ頃出てくるようなモンスターなんだ?

基本、この手のゲームは始まりの町で出るモンスターは小さなものが多いはずだ。


ーーー獲得スキルーーー

杖工スキルレベル0

魔法の杖を加工する。

INT+1


ーーー獲得報酬ーーー

100(コイン)

樫の杖


考え事の最中だというのに!

まあいい。杖を手に入れることはできた。

「これでチュートリアルは終了じゃ。魔法の杖は棒だけでなく、剣の柄でも作れるぞ。いろいろと試してみなさい」

「はい。ありがとうございました」


《杖職人への道

 杖工スキルレベル100(MAX)》

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