12:杖術チュートリアル
冒険者ギルドのチュートリアルにやってきました。
「こんにちは。杖術チュートリアルをお願いします」
「はい。分かりました。杖術ですね? それではこちらをどうぞ」
お姉さんにアイテムボックスを手渡される。
「中には杖に分類されるさまざまなものが入っています。この杖術は魔道ギルドと合同のチュートリアルなので、魔術を使うときは魔道ギルドでお試しください」
いつぞやも、というか初日に来た訓練場でアイテムボックスを開ーーいや、ここではチュートリアルの看板を探してからにした方がいいな。
杖術の看板を探しがてらどこにどの立て札があるかも見て行こうか。
見たところで次回利用するまで覚えているか? と聞かれたら、覚えていない気がするけど、まあいいさね。
取り敢えず、円形に描かれた白線の端にある看板を見に行こう。
『武器のチュートリアルは白線の内側で行いください』
武器のチュートリアルは総括でここらしいです。
少し離れた場所にある設備を見やる。
だとしたら、あのアスレチックな設備はなんだろう?
気になるので行ってきます。
杖術チュートリアルは後でやります。
時間はまだあるから大丈夫!
ダメそうなら熊野古道の杖でリアル訓練します。
いいえ、しました。リアル訓練はしました。
部活帰りのリアル訓練はキツかったです。
ライブラリで話したら、リアル師範がいてVR道場に連れて行かれてしごかれました。
読書の時間が減ってちょっと不満です。
意識を切り替えよう。
看板によると、アスレチックゾーンでは野外戦闘の模擬訓練をするようだ。
当てる的と当ててはいけない的があり、どこからかゴムボールが飛んでくるので、それを避けたり弾いて防いだりしながら山の向こうにあるゴールにたどり着くと、なんとチュートリアルでスキルレベル1を獲得できるそうだ。
取り回しの練習で0を獲得するより野外戦闘の模擬訓練で1を獲得した方がいい。
リアル訓練とリアル師範にしごかれた杖術だからできることだねぇ。嫌な思い出だけど、やって良かったのかな。
さあ、始めよう。
スタート地点につく。どちらかと言えば田舎なところで生活しているので斜面や鋪装されていない道は慣れている方だと思う。
部活じゃあ足腰鍛える名目で学校脇の小道から20m下の駅前まで山道を走って上り下りしてるからね。
こういう場所は直線的に上るより、安全な足場を選んで上るほうがいいんだ。
さて、アイテムボックスを開こう。
中身は魔術のチュートリアルで使ったような杖に、灰色の魔法使いを彷彿させる2mの長い杖。
名探偵も使ったステッキ、イギリスではステッキ術は軍で鍛練するそうですよ。
リストバンドに固定された10㎝程度の小さなこれは、他の武器を振るいながらを想定したものかな?
私が扱うのはこちら。1m程の杖で胸程の高さがちょうどいい。身長低いとか言わないでね。私はまだ二次成長が始まらないんだから。
当てる、当てる、当てない、避ける、当てる、弾く。当てる、当てない、弾いたボールを当てる、避ける、当てない、弾く、弾く、離れた場所に当て的を発見。来たボールを地面に打ち付け、跳ね上がったところを打ち付けて当て……当たらなかった。当てない、弾く、弾く、当てる、当てない、弾く、当てる、当てる、当てない、避ける、頂上!
当てない、当てない、当てる、避ける、弾く、当てる、当てる、当てない、避ける、弾く、弾く、当てる、当てる、避ける、弾く、当てる、当てない、避ける、弾く、当てる、当てない、弾いて避けて当てる、弾く、当てない、当てる、避ける、当てない、当てる、弾く、ゴール!
《杖術チュートリアルが終了しました。
チュートリアルカウンターで報告してください》
《杖術スキルレベル1を獲得しました》
《カウンタースキルレベル1を獲得しました》
《受けスキルレベル1を獲得しました》
《杖術師への道
杖術レベル100(MAX)》
カウンタースキルと受けスキルまで獲得した。
カウンターがスキルってところに驚きだよ。受けはまあ、受け身とかあるからね。
とにかく、報告しよ……魔道ギルドでもやってこようか。短い杖はともかく、長い杖はどのように魔法を使えば良いのか分からない。
指すにしてもやりにくいし、ねぇ。
お姉さんに声をかけて魔道ギルドへ向かう。
ギルド前に設置されたベンチでぼんやりしているお兄さんに声をかける。
「こんにちは。杖術チュートリアルを受けに来ました」
「ああ、こんにちは。また来てくれるとは思わなかったよ。プレイヤーは1度来てそれっきりな奴が多いから」
「まだまだ未熟なので度々来ますよ。覚えたいスキルはたくさんありますし、魔道ギルドの施設も気になります」
「それは良かった! 誰も来ないし、魔道ギルドは私と冒険者ギルドに行ったミレイしか居なくてね。とても暇なんだ。お客さんは大歓迎だよ!」
愚痴るとか。NPCってなんだろう? 本当に人が入ってないのか不思議。
だけど、考えてみるとNPCには学習能力が備わっているんだよね。
開始当初からチュートリアルできるほどの性能があるNPCに23年の学習。人生の先輩に当たるんだ。人間臭くなるわけだ。
リアルに出たりしないだけで、この世界で暮らす見た目20歳くらいの40半ばなお兄さんなんだ。おじさんと言った方がいいのか? いや、違和感半端ないし徐々に外見年齢を追い付き追い越しするのだ。お兄さんでいい。
「どうしました?」
「いえ、余所事を考えてました」
少なくとも、公園で遊んでいた子どもたちが年上とか考えてはいけない。
訓練場について、お兄さんはゴーレムを召喚する。
藁とか木ではなく、石でできたザ・ゴーレムなヤツだ。
「さ、これを的にして好きなだけ攻撃していいですよ。杖先を向ける方がいいのですが、杖を向けずに魔法を使ってみてください」
「杖先から出るのではないのですね?」
「意識すればできますよ。始めの内は近いところからしか撃てませんが、レベルが上がると遠くで発現させることもできます」
へぇ。そうなんだ。
「それでは行きます。『ウォーター』!」
地についた杖の先から水が吹き上がる。
私はお兄さんを巻き込んで頭から水を被った。
「すみません」
「いいえぇ。まだ始めたばかりなのだし、練習あるのみ、ですよ。上手くできるようになったら乾かす魔法をかけるので、気にせずどうぞ」
「ありがとうございます」
そして、私は 13回の失敗を糧に、意識すれば魔法を使えるようになった。
乾かす魔法『ドライ』によって、びしょ濡れだった服はカラッと乾く。
「ありがとうございました」
「いいえぇ。またいつでも来てくださいね」
暇なんだな。
おっと、インフォがきている。
《攻撃魔術師への道
攻撃魔術レベル100(MAX)》
《防御魔術師への道
防御魔術レベル100(MAX)》
《付与魔術師への道
付与魔術レベル100(MAX)》
《万能魔術師への道
万能魔術レベル100(MAX)》
魔道ギルドから冒険者ギルドに戻り、チュートリアルの報告をして報酬を受け取る。
そろそろ自分の杖が欲しいのでお姉さんに訊ねる。
「杖を作るスキルを覚えたいのですが、ここでできますか?」
「生産ギルドもありますが、性質上魔道ギルドでもできますよ。私は魔道ギルドの職員でもあるのでこちらで連絡しておきます。マップをお貸しください」
お姉さんにマップを手渡す。
いつも通りお姉さんはチュートリアルの場所に印をつけた。
「生産ギルドの場所もマークしておきました」
「ありがとうございます」
ーーー獲得スキルーーー
杖術レベル1 +DEX1
カウンターレベル1 +STR1
受けレベル1 +DEX1
ーーー獲得報酬ーーー
100C
樫の枝




