魔弾
イルミス達は宿に向かって歩いていた。
結局三人共ギルド職員になる道を選んだのであった。
「何とかなってよかったよー。」
「そうじゃのぅ。これでやっと鈴殿と勝負ができるのじゃ。」
「あはは…覚えてたのね…。」
「なんじゃ。乗り気じゃないのぅ。」
「いやだって、私弱いよ?」
「スキルアップじゃよ!」
「スキルアップって…。」
そんな話しをしているとアラスが茶々を入れてきた。
「鈴ちゃんと飛鳥ちゃんなんなら俺とベッドの上で勝負し―あだ!。」
アイリスの杖がゴツンとアラスの頭に打ち付けられた。
「はいはい。一人でやってなさい。」
「アイリスちゃんでもいいんだずぇ!?」
今度は横から杖を振られ脇腹に杖が食い込んだ。
「うるさい!私を巻き込まない!」
そんなこんなでアラスをいじりながら宿へ到着した一同は部屋を取るべく宿の中に足を踏み入れた。
受付にはブラウンの髪色をした女性が立っていた。
「いらっしゃいませ。クマノミの宿へようこそ。お泊りですか?」
「ああ。六人いるが大丈夫か?」
「少々お待ちください……はい。団体様の部屋が開いております。そこで大丈夫でしょうか?」
「そこでいい。いくらだ?」
「一人三銀貨なので十八銀貨になります。」
「十八だな…よし。十八銀貨だ。」
「確認しました。お部屋のカギはこちらになりますのでなくさないようにお願いします。」
そういうと部屋の鍵をイルミスに手渡した。
それを受けとると一つ質問をする。
「食事は今からでも大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。」
「六人分頼めるか?」
「わかりました。六人分お部屋にお届け致します。」
「わかった、ありがとう。」
そういうとイルミスは五人に声をかけて部屋へと向かっていった。
この宿は安いが建物自体が大きく、コストパフォーマンスが優れている。
角にはどちらにどの部屋があるかを示す案内板が打ち付けられている。
「部屋は…こっちか。」
「この宿大きいね~。」
「利用率が高いからその分大きくなるし安くもできるのよ。」
「なるほど。」
“わかってるの?”
『失礼な!わかってるよ!』
「ここだな。」
どうやら部屋についたようだ。
団体部屋だけあってほかの部屋より大きいのがわかる。
鍵を開け、中を覗くと奇麗に整えられたベッドが八つ。
まだ咲いたばかりであろう花が飾られていた。
「おー。広いですね。」
「まあ、団体部屋だからな。」
「でもベッド小さいですね。」
「あまり大きいと部屋がベッドで埋まってしまうからだろうな。」
「とりあえずお腹すきました。」
「少し待ってれば来るだろうから我慢しておけ。…と言うか、さっき干し肉食べてなかったか?」
「あ、見てました?」
鈴はイルミスが来たとき口の中に干し肉を詰め込んでいた。
その場面をばっちりみられていたのであった。
「俺は見て無いようで見てるからな。」
「はっ!まさかのイルミスさん変態発言ですか!?」
「…なぜそうなる。そこで胸とか隠すな。」
「何じゃ何じゃ何の話をしておる?」
「実はイルミスさんが変態さんだったのだ!」
「なんじゃと!イルミス殿もアラス殿と同じだったとな!」
「ん~?お二人共呼んだかい?」
「アラスお前は呼んでないぞ。と言うか来るな。ややこしくなる。」
アラスは弄る物を見つけたような目つきになり鈴達の方へ擦り寄っていった。
「カクカクシカジカなんだよ。」
「ほう…イルミス!ついにお前も目覚めたか!いや!元々目覚めていたのだ!このムッツリめが!」
イルミスはどんどん状況が悪化していく現状に呆れを抱いていた。
そこにアイリスが混ざってきた。
ついでにアームも来ている。
「何やってるのよ。」
「ああ、いいところに来てくれた。一言言ってくれ。」
イルミスはやっとこの状況が収まると思っていた。
しかし、最初の話から脱線していたためアームとアイリスに伝わった情報が間違っていたのであった。
「なんてこと…常識人だと思っていたのに。」
「イルミス…お前ってやつは…。」
「おい?何か変な誤解してないか?」
いつの間にか五対一になってしまった。
そして若干鈴達は引いている。
事の発端である鈴は引くに引けない状態になっている。
"これどうすんの?“
『あいや~大変なことになったね。』
"私しらないよ。“
『えー!そんなー!』
するとそこへノックの音が部屋に響く。
鈴はそれがチャンスと思い直ぐ様ノックに答えたのであった。
「あ、はーい。誰ですかー?」
「お食事お持ちしました。」
「今開けますね。」
鈴は扉を開けると運んできた人たちを中に入れた。
長方形のトレーに二人分の食事が乗せられており、三人で運んできてくれた。
トレーをテーブルに置くと食事を配膳していく。
配膳し終わると、トレーを片手に部屋から出て行った。
「それでは失礼いたします。」
ドアを静かに閉め再び静かな空間とかした。
「さ、さあ!食べよう!ご飯だああ!」
「そうね。食べようかしら。」
「何か納得いかん…。」
食事を楽しむと、鈴達はベッドに入った。
食器は部屋の外に重ねておいておく。
ついでに就寝するので照明の魔道具をオフにする。
「久しぶりのベッドだー!ちょっと硬いけど気持ちー!」
「明かり消したんだから早く寝なさい。」
「はーい。」
そして次の日。
それは騒がしく始まった。
「もう食べれない…。」
そんな寝言を言っていると寝返りをうった。
しかしベッドが狭かったためそのまま床に落ちてしまった。
ドンっと言う音とともに鈴が起き上がる。
「…あいたた…。頭打った。」
ベッドからの落下と言う不運なアクシデントによりいつもより早く起きてしまったため鈴は何をして過ごそうかと考えていた。
『起きろー!』
“そんなに叫ばなくても起きてるよ。”
『暇だから相手して。』
"そんなに暇なら相手居るじゃん?“
『誰だっけ?』
"妾じゃ!“
『あ、玉藻さん居たんだっけ?』
鈴はすっかり忘れていた。
それには分霊と言えど玉藻も憤慨である。
"ひどいのぅ!一回こっちに来るのじゃ!その精神叩きなおしてやるわ!“
『あの、それ、一度死にに来いって言ってるんじゃ?』
"当たり前じゃ!“
『うわぁ…。』
"それじゃスズ変わってね~。“
『しょうがない…。』
スズはリンと変わると精神空間で玉藻と対峙する。
「ふふふ。今日はとっておきがあるんだよ。」
「なんじゃ?」
「人格同調発動。デザートイーグル創造。弾薬、魔弾フライクーゲル創造。装填。」
魔弾フライクーゲルとはゲルマン、ドイツ民話伝承に伝わる弾丸のことだ。
この弾丸は自由に動く弾ともいう意味で悪魔の力によって必ず当たる弾。
人格同調を使ったのはスズの創造だけでは作れないからである。
リンの概念の創造が必要だったのだ。
弾丸のサイズも.50AEに合わせて創造してある。
「どれ。前とどれくらい変わったのか見せてみ。」
「いくよ!」
スズは引き金を引いた。
玉藻は以前と同じく銃弾を手で掴み捨てようとしたが、銃弾はそれを回避すると玉藻の額目掛けて飛んで行く。
「のわ!」
相変わらずチートな悪意反射結界によって銃弾は止められたが銃弾は尚も進もうとし、結界に食らいついていく。
玉藻はその銃弾を掴み捨てようとしたが銃弾は向きを変えると高速で玉藻の後頭部目掛けて飛来する。
そしてスズは二発目を撃ちこむ。
「それずるくないかのぅ!」
「結界張ってる玉藻に言われたくない!」
「それもそうじゃな。」
そうして三、四と魔弾を撃ちこむ。
「あー!小蠅みたいに鬱陶しいのじゃ!」
玉藻は胸元から扇子を取り出すと、目にも留まらぬ早さで魔弾に打ち付けた。
一瞬鋭い閃光が発し、魔弾が床に落ちた。
「…あれ?」
「ふん。悪意がこもっているならそれを排除してしまえば良い話じゃ。」
「なら連射だ!」
スズは魔弾をすべて撃ち尽くし、再び創造して装填する。
今のペースでは撃ち落とされる魔弾より、撃ち込まれる魔弾の方が多い。
「ああ!鬱陶しいのじゃ!」
「ふふふ。悪意反射結界はどこまで持つかな~?」
スズはニヤニヤとゲスい顔をしながら引き金を引いている。
玉藻はうっとおしい魔弾は一つずつはたき落としていた。
「いい加減にイライラしてきたぞ。」
「ふふふ。それそーれ。」
そんなやりとりをベッドの上で聞いていたリンは思っていたことがあった。
それは。
「あー。スズ死んだな。」
擬音で表すとブチっと言うのがあっているのか。
玉藻ははたき落とすのをやめると扇子を開いた。
「消え失せろ。」
そう言うと扇子を振るう。
風が玉藻を中心に、魔力の渦が発生した。
それはすべての弾丸を捉えると、すべてを巻き込み無効化してしまったのだ。
「うそん!?」
「妾はここまでイライラさせたのはリンに続いて二人目じゃ。」
「だ、弾丸を創造し―うっ。頭が…。」
人格同調の限界時間が悪いタイミングで来てしまった。
「切り裂け鎌鼬。」
玉藻が扇子を振るうと突風が発生し、見えない斬撃がスズを襲った。
「あれ?」
スズはその場に倒れこむ。
何が起きたか理解できていないのだ。
そして徐々に自分の身に何が起きたのか理解し始めた。
「あ、あれ?なんで腕と足があんなところに…これは血?う、うわあああああああ!?」
人の手足というものは斬られても脳がまだそこに手足があるように錯覚させる。
故にスズの理解を遅らせた。
「妾を怒らせた罰じゃ。死ぬがよい。」
「や、やめ―。」
グチャっという生々しい音が発せられた。
それは空気圧によりスズの頭が潰された音だった。
「ふう。スッキリしたのじゃ。」
"スッキリしたならスズ元に戻してよ~。“
「そうじゃな。ほれ、生き返れ。」
バラバラのグチャった体は一瞬の発光と共に元通りに復元された。
スズは起き上がると両手両足を確認してほっと息をついたのだった。
「また死んだ。悪意反射結界せこいー!アレがなければ一発で私の勝ちだったのに!」
「妾の能力を使って何が悪い。」
「勝負にならないじゃん!」
「あの長い爆発する奴を撃ちこめばよかったじゃ。」
「あんなの至近距離で撃ってたら死ぬわ!」
"あの叫ばないでくれない?頭痛いんだけど。“
その後玉藻は満足したと言って戻ってしまった。
リンもスズに人格を戻すと皆が起きるまでの話し相手になっているのであった。
「…ん~。朝ね…。」
「おはよう。アイリス。」
「…まだ寝てるのかしら。鈴が起きてる。」
「ちょっと!私だって早起きできるよ!」
「それじゃ明日も起きなさい。」
「あ、それ無理。」
若干デジャヴを感じる会話だ。
以前にも同じような事があった。
「さて飛鳥でも起こすかしら。飛鳥起きなさい。」
「後半刻…。」
「起きなさい。」
「後半年…。」
「…。」
アイリスは鈴と打ち合わせすると、両耳から例のワードを唱えた。
それはステレオとなり飛鳥の鼓膜へ伝わる。
クワッと目が見開き飛鳥は飛び起きた。
「嫌じゃあああ!?」
「ふふふ。」
「ぷふ…あはは!」
「お主達…また妾のトラウマを…!」
飛鳥の大声にイルミス達も起きだした。
「何だ今の大声は。」
「朝から元気だな飛鳥は。」
「おっはよー!鈴ちゃん飛鳥ちゃんアイリスちゃん!今日も元気に俺とちゅっちゅし―」
「<蒼白の炎よ、燃え上がれ。水よ、炎と混じり熱湯となり敵を撃て。ホットウォーターショット。>」
「あづうううううううううう!」
「アラス殿はいつもどおりじゃな。」
「この季節寒くなってきてるからお湯かぶるのは熱いよねー。」
「これでも温度は調節したのよ。」
アラスは床で目にお湯が!など言いながら転げまわっているとアームに音がうるさいと言われ目をこすりながら立ち上がってきた。
「アイリスちゃん、それはひどいぜ…。」
「アラスも朝から元気ね。」
「おう!俺は女の子の前でならいつでも元気百倍だぜ!」
「所で鈴殿。」
「うん?」
「いつ試合をしてくれるのかのぅ?」
飛鳥は若干目をキラキラさせて鈴に迫っている。
そんな鈴は若干引き気味に答えた。
「そんなにやりたいならコロシアムにエントリーすればいいんじゃないかなー?」
ちらっとイルミスを見る鈴。
イルミスはその目線に気がつくといつも通り否定する…と思っていたが。
「コロシアムか。俺も参加した事ないな。一度参加するか。鈴は銃なしで剣のみで戦うこと。」
「え”?いつもなら否定するところじゃないの!?」
「ふっ。」
鈴は悟ったのだ。
これは昨日のお返しなのだと。
そんなこんなでコロシアムに闘士として参加することになった。
出るメンバーはアイリスを除く五人だ。
登録は宿を出た直後に済ませた。
登録自体はギリギリであったのだ。
午前までの受付で有ったのを知らず、鈴が食堂で食べ過ぎた為危うく受付時間を過ぎるところだったのである。
これからもオリジナルの銃火器や魔法を募集していきます。
何か有りましたらご連絡ください。




