三人のお世話
馬車で街道を進むこと数日。
人数が増えただけあって水や食料の消費が増える。
幸いなことにアルゼン国とルーツ国を繋ぐ街道にある村のため、冒険者や商人の為に食料品店がある。
一応宿もあるがそれほど大きくなく、今のメンバーでは一人ベッドに二人で寝ることになってしまう。
そうなると必然的に誰かが男女で寝ることになる。
アラスが喜びそうな展開だったが、リンが用意したテントで男性陣は寝ることとなったのだった。
翌日は雨が振りそうな曇り空。
一同は出発の準備を始めていた。
「うーん!今日でアルゼン国入りになるかな!」
鈴は背伸びしながらそう声を出す。
それにアリツェが反応する。
「あの速度だと…夕方。閉門前には着くと思いますよ。」
「おー!」
そんなやりとりをしているとイルミスが声を出した。
「出発するぞー。各自準備するように。」
「さて、出発するよ。今日もよろしくね。」
アリツェは二頭のブルートフォースに声をかけていた。
馬車に飛鳥を除く女性陣が乗り込むとイルミス達も配置についたのたった。
「出発します!」
アリツェがそう言うと馬車がゆっくりと動き出した。
馬車は村を出ると森のなかに入った。
森の中の街道は馬車が二台ほど通りすがれる様になっている。
しかしそれ以外の場所は手付かずの自然の状態だ。
まだまだ盗賊が出没する地帯を抜けていないため森の中から矢などが飛んでこないか気を張る必要がある。
そんな時車輪から嫌な音が聞こえてきた。
それに気がついたアリツェは一旦馬車を止めると車輪を確認しに行く。
なんと車輪を固定していた金具の一つが折れてしまっていた。
「なんでこんな所で折れるのかなぁ…とほほ…メンテナンスしておけばよかった。」
アリツェはどうしようか途方に暮れているがイルミスは横の木を見ていた。
その木には大きな爪で引っ掻いたような後が真新しく残っていたのだ。
「早めに修理してここを出た方がいい。」
「そうですね。でも換えの金具なんて持ってないですし…。」
『りーん。パーツだして。』
"パーツ見せて。“
『とりあえず変わる~。』
リンが主人格になると馬車から降りて壊れた金具を見に行く。
「金属疲労か?とりあえずこれだけならっと。」
リンは壊れた金具を創造するとアリツェに渡す。
何かあっても創造できる枠が一つあれば事足りる。
「えっ。どこから…とりあえずこれ取り付けて…。」
がちゃがちゃと弄っていると異変に気がつく。
先ほどまで鳥の囀りや虫の鳴き声が聞こえていたのにピタリと止まったのだ。
「アリツェ、そこから動かないでね。」
リンは馬車の上に飛び乗るとスズと変わった。
すぐにスズは銃を創造する。
創造した銃はHK417だ。
これなら5.56mmより威力、貫通力がある。
しばらくの静寂の後ドスンドスンと音を立てて森の奥から何かが来るのがわかる。
アイリスは直ぐにシールドで馬車を保護する。シールド上部からは鈴が音のする方向に銃口を向けている。
「グルアアアアアア!」
「アーマードベアだと?」
アーマードベアとは身にまとう体毛が鉄の様に固く、鎧を着ている様に思われることからアーマードベアと呼ばれる。
物理耐性の高さから魔法で攻撃したほうが効率が良いのだが、あいにくアイリスは馬車の保護で攻撃はできない。
鈴は直ぐに銃弾を撃ちこむ。
さすがにライフル弾には耐えられないらしく、撃たれた箇所から血が噴き出る。
攻撃対象を鈴に変えたのかアーマードベアが馬車へ突っ込んでくるが、シールドに阻まれその巨体をぶつける。
すかさず飛鳥が懐へ入り込む。
「絶影三之型―斬鉄―」
飛鳥が剣術を振るう。
この剣術はリンと試合した時の技だ。
鉄の剣が粘土を斬るように斬られたのを覚えているだろうか。
その剣がアーマードベアに振るわれた。
「それ!」
飛鳥の斬撃で体毛と体が斬り裂かれた。
「グラアアアア!」
アーマードベアが飛鳥を攻撃しようとするがその手は飛鳥を通り抜ける。
「絶影壱之型―残擬―じゃ。残念じゃがさよならじゃ。」
そういうと刀をアーマードベアの心臓に突き刺した。
アーマードベアは苦し気な声を上げながらその場に倒れ伏したのだった。
「おわったのじゃ。」
「駄目だ!アーマードベアの心臓は二つある!」
「なんじゃと?」
その巨体を支え、運動するには心臓が複数必要であるのがアーマードベアのもう一つの特徴なのだ。
一つの心臓を止めても一時的なダメージになるだけですぐに目が覚めてしまう。
アーマードベアを殺したかったら二つの心臓を止めるか頭を跳ねるしかない。
飛鳥の後ろでむくりとアーマードベアが起き上がる。
完全に背を向けていたため行動が遅れ何とか刀で防御することだけは成功した。
飛鳥はその巨体から振るわれた剛腕によって木にたたきつけられる。
「くっは!」
「飛鳥!」
それを見ていたアームとアラスがカバーに入る。
アーマードベアはそれを良しとせずアームとアラスの排除に乗り出そうとした時だった。
森に飛び切りデカい銃声が鳴り響いた。
それと同時にアーマードベアの行動も止まった。
それは鈴の対物ライフル、バレットM82だ。
アーマードベアの体毛や厚い筋肉すらも貫き斜め方向から貫通した。
着弾の衝撃により背中は大きくえぐれている。
これでは放っておいてもそのうち出血多量で死ぬだろう。
「今だ!」
イルミスが叫ぶ。
その声に弾き飛ばされるように剣と薙刀で残りの心臓と首の位置を突き刺す。
アーマードベアは再び苦しげな声を上げ、その場に倒れ伏した。
「今度こそやっただろ。残りの心臓は俺が刺したからな!」
「俺は首の動脈を切断したからどちらにせよ出血でしぬだろうな。」
「妾が止めをさしたかったのじゃが…まぁ良いのじゃ。」
「って飛鳥ちゃん大丈夫なの?」
「妾の剣術には無痛というものがあってのぅ。それで一時的に痛みを消しておる。」
飛鳥は一言アイリスの治療を早く受けたいがのぅっと言っていたのだった。
「馬車直りました!出発できます!」
「では行こうか。飛鳥はアイリスに治療してもらえ。」
「了解じゃ。アイリス殿~治して欲しいのじゃ~。」
森のなかでは火は使えないのでイルミスたち男性陣とリンとでアーマードベアを引っ張り、街道外に放置していくことにした。
その後馬車は出発し飛鳥の怪我も治され護衛の陣形に復帰したのである。
それから四時間ほど進むと街が見えてきた。
アルゼン国の領内最初の街だ。
もちろん領内に入ってから複数の村を経由してきた。
やはり街とは大きなものだ。
「とりあえずあの町で服とか買おうね。いつまでも汚れた服り破けた服じゃいやでしょ?」
鈴が三人に提案する。
「そうですね…でも私たちお金持ってないですよ?」
「お金のことは心配なーし!これでも私お金持ってるんだよ?」
鈴の資金源は最初に寝間着を売った金貨と荒稼ぎした依頼の報酬である。
食料で結構使っているように見えているが、まだまだ残っている。
そして一同は街の門へ到着した。
そこには相変わらず剣を持った渋いオッサンが立っていた。
「身分証と馬車の中身を見せてもらおうか?」
「はい。これは私の身分証です。」
「運び屋のアリツェか。あの乱暴な。」
「え?」
「次だ。」
「パーティリーダーだけ見せればいいか?それとも全員か?」
「いや、一人でいい。何かあったらギルドに問い合わせるだけだからな。」
そういうとイルミスはギルドカードを手渡す。
しばらくギルドカードを見た警備の渋いオッサンはイルミスにギルドカードを返却した。
鈴は雑だなぁっと思っていたのであった。
次に荷物検査が入り馬車の中をオッサンが覗き込んだ。
「ん?この女達は何だ?人攫いではあるまいな?」
この女達というのはもちろん捕まっていた三人の女性だ。
「話せばながーいのですが、実は私ドジちゃって盗賊に捕まっちゃったんですよ。
「また護衛もつけずに走っていたのか。頭大丈夫か?」
「いやぁ…あはは。」
アリツェはその場で起こったこと、そして鈴に三人を含め助けられたことを話した。
オッサンはイルミスに確認をしていたがイルミスも同じことを話していたので容疑は晴れた。
「それで?この箱は何だ?」
「コロシアムの賞金とその他もろもろです。」
「そういえば連絡があったな。よし。通っていいぞ。」
街の中に入ると各自それぞれの行動を始めた。
アリツェはブルートフォースの餌やりと馬車の修理を。
イルミスとアーム、飛鳥は砥石や食料、水を補給しに町へ。
アラスはナンパをするために花売り通りへ。
鈴とアイリス、三人の女性たちは服を買いに服屋へ。
一名さも当たり前のように違うところへ行ったが、いつも通りなんだろう。
鈴達はアイリスの案内で服屋へと街の中を進む。
「ここね。」
「お、かわいい服あるじゃーん!」
「あの。本当に良いのですか?」
「大丈夫!あ、服買ったらその場で着ないでまずお風呂入りに行こうよ!ほら久しぶりだし、それに体汚れてるじゃん?」
「そうね。そうしましょう。あなた達も汚れてるのはいやでしょ。」
「それはそうですけど…そこまでしてもらっていいのか…。」
三人は自分たちのために服や風呂、食事などしてくれている鈴達に申し訳が立たなそうな表情をしている。
当の本人はそんな意識もなくただしてあげたいと言う純粋な気持ちで動いているだけなのだ。
「よしよし。大丈夫だから!中入ろ!」
三人は半場強引に店の中に入れられたのであった。
「いらっしゃいませ。」
店員は挨拶はするが少し表情に曇りが見える。
鈴はそういうのに敏感なのだ。
「汚れててごめんなさいね。」
「え!?わ、私はそのようなことは!」
「なるべく触らないようにするので…。」
「いえ!大丈夫です!」
後では鈴と店員の話が自分たちの事を示していることに気がつきさらに居づらくなる。
やっぱり外で待ってると言おうとしたときアイリスがその口を塞いだ。
「外で待ってるのは無しね。あなた達の服を買いに来たのよ?主役がいなくてどうするのよ。」
「で、でも体汚れてるし、商品汚しちゃうかもしれないし…。」
「あー!あんたらうじうじうっさいわね。これならアラス相手にしてる方がマシだわ。いい?鈴が好き勝手に恵んでくれるんだからそれに甘えてればいいの!」
アイリスはうじうじしている三人に言い聞かせる。
その際にわたしたちが見捨てたらあなた達路頭に迷うわよっと半強制的な言葉をかけたのは内緒だ。
鈴は店内を歩き回り、良いと思った服を着せずに三人に合わせてみる。
「うんうんいいね。村娘が一気に都会っ子に!あ、ぼくっこにはこれがいいかな。」
鈴は取っては戻し手を繰り返し、アイリスは戻された服をきれいにたたんでいるのであった。
それから十数分後服が決まり会計を済ませる。
「七十銀三百六十八銅貨になります。
「ん。八十銀貨でよろしく。」
「はい。お釣りは大きい方から九銀貨、そして三百三十二銅貨になります。」
鈴は釣銭を受け取ると荷物を持って店の外に出た。
それに続くアイリス。
三人は店員に頭を下げながら外へと出て行ったのであった。
「アイリス案内よろしく!」
「お風呂ね。共同のが民家街にあるわ。そこ行きましょう。ただし、この町の共同は混浴よ。」
「え?」
これだけは鈴と三人の声が重なった。
「こ、混浴ですか!」
「恥ずかしい…。」
「ぼく胸小さいから…。」
「ほ、ほら私はお腹があれだから…。」
「行く前からそんなになっててどうするのよ。大丈夫よ。ある意味鈴の方が怖いわ。」
「それどういう意味~?」
「なんでもないわ。」
その後色々と言いわけを付けながら混浴を批判していたがあっという間に共同風呂の前についてしまった。
「つ、ついにこの時が…。」
「覚悟を決めるしかないですね…。」
「そうですね…。」
「みんなー!覚悟を決めろ!私たちは一人じゃないぞー!」
鈴はそういうとぼくっこのルチの肩をつかんだ。
「え?なんで僕つかまれてるの?」
「そんなこと言ってないで入るわよ。」
共同風呂の着替えスペースには子供の服を脱がしている親も見受けられ男性ばかりではないとほんの少し気楽になった。
「あ!バスタオルないじゃん!」
「はっ!?」
「別になくてもいいじゃない。アラスみたいに襲ってくるわけでもないし。子連れの母親だっているのよ。」
そういいながらアイリスはどんどん脱いでいく。
「こうなれば自棄だ!みんな頑張ろう!」
「お、お~…。」
そして共同風呂の中へ。
「oh…sit!」
中に入ってみた物はほとんど男だらけの風呂だった。
ほんの少し気楽になっていた四人は局部を隠す。
初々しいその反応に湯船に浸かっている男たちはニヤニヤと笑っている。
アイリスはそんな視線感じないっと行った風に体を洗い始めていた。
「よく見れば女性なんてバスタオル巻いてるじゃん!私達だけじゃない!?」
「そんなこと言ってないで体洗ったらどう?」
「むー。」
『リン任せた!』
"え?“
スズは強制的に人格をリンと変わる。
恥ずかしさのあまり逃げたのであった。
「は、恥ずかしいです…。」
「僕も恥ずかしい…。」
「私も…。」
「ほら体洗おうね。」
「わわ!」
リンが三人を押して体を洗うように促す。
ちなみにロッカーなど無いので武器の盗難が無いようにアイリスは杖を持ち込んでいる。
この街に長く滞在する予定は無いため宿を取らなかったからだ。
若干の威圧効果があってアイリスの取り巻きと見られた鈴達に声をかけたり絡んでくる男は居ない。
五人は体を洗い流すと、浴槽へ浸かった。
「久しぶりの湯船はいいわね。」
「そうだね。」
「村では掛け流し程度だったのでこれはいいです…恥ずかしいけど。」
"ぐぬぬ。なぜ皆胸が大きいのだ!仲間はルチちゃんしか居ないのかー!“
『また言ってるよ…。』
リンによりスズの嫉妬仮面化は間逃れた!
これからもオリジナルの銃火器や魔法を募集していきます。
何か有りましたらご連絡ください。




