運送業
「ぅん~…。」
「お?起きた?」
鈴が顔を覗き込む。
「い…。」
「ん?い?」
「いやあああああああ!」
「へぶし!」
鈴は馬車の女性から見事な右ストレートを顔面に受けたのだった。
そのまま後ろに倒れこむ鈴。
他の女性達がなんとか彼女を落ち着かせることに成功した。
「す、すみません…助けてもらったのに殴ってしまって…。」
「べひゅにいいんだにょ。だいひょうぶひゃから。」
「その顔で言われても説得力ないのですが…。私がやってしまったのですが…。」
「ひょう?」
このままでは恐縮しすぎて話が進まないためアイリスが鈴の治療を始める。
殴られて晴れていた頬は徐々に元に戻っていく。
「それで?どうして護衛付けなかったの?」
「だって遅くなるじゃないですか。」
「で、この結果と。」
「そ、それは…その…。あ!荷物!馬車に積んでた荷物知らないですか!?」
「知らないなぁ。」
「まずい…あれ届けないと私破産だよ…。」
「たぶんあの部屋にあると思うから取りに行こうか?」
鈴はそうは言うが既に夕日が沈みかけている。
夜の森は魔物もあって危険なのだ。
地球の比ではない。
しかしここで鈴がLEDランタンを創造する。
前回同様謎仕様で電源が不要である。
突然ものが出てきたことに驚く馬車の彼女。
「あ、そうそう。」
「な、なんですか?」
「名前聞いてなかったね。私鈴っていうの。あなたは?」
「私は運び屋のアリツェ。アリツェ・ハルドラと言います!」
「アリツェさんね。さ、行こうか?」
「はい!」
「イルミスさん。ちょっと荷物取ってきます。」
「夜の森は危ないからな。気をつけて行ってこいよ。」
「了解サー!」
鈴は片手にLEDランタン、もう片手に46式5.56mm自動小銃着剣済みを創造している。
46式とは六十年ほど前に国防軍が正式に採用した最新の自動小銃である。
日本人の体型に合わせて作られた46式は片手でも撃て、メンテナンスも簡単で命中精度もかなり高い。
資源があまりない日本にとって弾丸などの資源は重要だ。
そこを補うように命中精度を上げた結果がこれだ。
アリツェはちらちらと銃を見ている。
初めて見る物に興味を示しているようだ。
ランタンで道を照らしながら奥へ奥へ進んでいく二人。
時折魔物の遠吠えと思われる声が聞こえるが鈴はそんなの無視して進んでいく。
アリツェは若干びっくりおっかな鈴にくっついて進んでいるのであった。
しばらくして元盗賊の集落に到着すると、何やら四足歩行の魔物がうろついているのが目に入った。
魔物たちはイルミス達が倒した盗賊の死体を貪り食っている。
茂みに隠れているとはいえ気が付かれるのも時間の問題だろう。
鈴はランタンを消すと人格同調を発動させる。
赤外線ゴーグルを創造するとそれを装着し、アリツェに自分の後ろに居るように指示を出す。
「今見えてるのは五匹か…。距離は二十メートルくらい?とりあず見えてるのだけ殲滅しよう。」
鈴は狙いを定めると、引き金を引いた。
太陽が沈んだ森の中に銃声が轟いた。
鈴は正確に魔物を狙い撃っていく。
突然の銃声と仲間が殺られた事に動揺したであろう魔物は音のした方を向くも、銃弾が無慈悲に命を奪う。
「うわわ!あ!右に一匹居ます!」
直ぐに右に銃口を向けるが既にこちらに飛びかかってきていた。
しかし、46式は着剣されている。
飛びかかってきた魔物は刃に突き刺さり、鈴の腕に魔物の体重がぐっとかかった。
前に居た五匹は倒してあるので残った弾丸すべてを突き刺さっている魔物へと撃ちこむ。
その際血が掛からないようになるべく腕を伸ばした形で撃った。
反動で若干腕が痛いが、戦闘には支障はないレベルだ。
「よし。奥へ行こう。」
「は、はい!」
鈴はリロードを行うと再びランタンを創造する。
殲滅したとはいえブラックウルフみたいなことがあるかもしれないため警戒しつつ囚われていた一番奥の家を目指す。
「ひえぇぇ。死体がたくさん…うぇっぷ。」
「五十人ぐらい居たからね。アリツェさんは死体みるの初めて?」
「は…はい。何分逃げてましたのでまともに見たことがないのです。」
「そっか。それじゃあこの光景はちょっときついかなぁ。その光景に慣れてる自分もどうかと思うけど…。」
あまり悲惨な光景を見せないようにランタンの光量を下げつつ早歩きで奥の家に進む。
「ここだね。」
「ここですか。」
「中に死体一体あるから注意ね。」
「はい…。」
鈴とアリツェは四段ほどある階段を上がるとドアのない家の中へ入る。
中にはリンが殺した盗賊の死体と金の山、牢屋が置いてある。
アリツェは中に入ると一直線に端に置かれた木箱のようなものに向かっていった。
「ありました!これです!」
「おー。よかったね。それ持てる?」
「任せて下さい!力ならありますから!」
数分後…。
「お、おかしいな…持ち上がらない…。」
「変わろうか?」
「いえ!荷物は私が運びます!」
更に数分後…。
「うぐぐぐぐぐ!」
「あのー。変わろうか?」
「わだぢがもっでいぐんでず!」
「はぁ…。」
また更に数分後…。
「駄目だ…持ち上がらない…運送業失格だ…もういや…死にたい。いっそ殺してくださいお願いします。」
「(ネガティブになってる…。)じゃ、じゃあランタン持ってくれるかな?わたし持つから。」
そう言うと銃を方に掛け箱を持ち上げる。
箱は結構重く、大人一人分はありそうだ。
アリツェはランタンをしぶしぶ持つと外にでる。
そして入ってきた茂みから皆が待っている街道近くまで戻るのであった。
「ただいまー。」
「戻ったか。銃声が聞こえたから何かあったのかと思ったぞ。」
「魔物が六匹程盗賊を貪り食っていたのでそれを始末しました。奥の家に行くのに障害になるので。」
「そうか。…ところでアリツェはなんでそんなにしょぼくれているんだ?」
「いやぁ~あはは…。」
鈴は事のあらましを説明する。
アリツェが荷物を持とうとしたが持てずに勝手にネガティブになってしまった事。
「イルミスさんも持ってみますか?」
「どれ。…ほう。結構重いな。女性には辛そうだ。」
「やっぱり私は運び屋として向いていないんだああ!うわああああん!」
「これはひどい。」
「なんというか…思い込みが激しい人だな。」
そこへアラスとアームが帰ってきた。
「戻ったぞ。」
「戻ったぜっと。」
「戻ったか。どうだ?馬車は直せたか?」
「多少ヒビが入ってるが車輪の方はただ外れただけだから直ぐ直ったぜ。」
「そうか。」
「だってよ、アリツェさん。」
「本当!?やったー!また運べるー!」
「…さっきとテンションちがくない…?」
「私の特技ですからね!」
「あーでもよう。車輪は外れた部品付けただけだから無理するとまた外れるぜ?どこかで直してもらわないと…所で君可愛いね。名前はなんて言うの?」
「あ、はい。アリツェと言います。」
「アリツェちゃんか…どうだい俺と―。」
「おっと手が滑った。」
アームが手が滑ったと言っているが、実際に出たのは足だ。
「ぐほぉ!?それ手じゃなくて足じゃね!?」
アームは隣に居たアラスの暴走を未然に防いだった。
「アリツェさん。もし良かったらこの三人も次の街まで運んでくれるかな?」
「別に大丈夫ですけど、スピードが落ちるので良かったら護衛してくれると…お金無いですけど…。」
「イルミス。どうするの?」
「これも何かの縁だ。付き合おうじゃないか。」
「本当ですか!これでもう怖い思いしなくていいのね…!あ、でも乗れて五人ですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。馬車には彼女たち三人とアイリス、鈴が乗るんだ。すまないが飛鳥には歩いてもらう。」
「妾は問題無いのじゃ。」
「鈴はなにかあったら馬車の上から援護を頼んだ。」
「了解サー!」
「アイリスは馬車をシールドで守ってくれ。」
「分かった。」
イルミスは各自の役割を素早く決める。
陣形的には前衛アーム、アラス、イルミス、飛鳥。
後衛アイリス、鈴となる。
アイリスは馬車を守るシールドを展開し、鈴は馬車の上でシールド範囲外から射撃支援。
護衛で効率的にこのメンバーを動かすにはちょうどいいのだ。
それにこの区域では盗賊も多い。
護衛対象の弓などの対策もしなければならないからだ。
しかしこの区域一体の盗賊の半数はイルミス達が殲滅してしまったことはまだ知らない話である。
「とりあえず今日は休むとするか。動き出すのは明日にしよう。」
「賛成です。お腹減りました。」
「鈴ちゃんのお腹はどうなってるのかな~?」
「私の胃袋はブラックホールです。」
「ブラなんだって?」
「気にしないでください。」
そういうわけで一同は街道近くまで戻ると今日の野営の準備を始める。
リンは大型テントセットを創造すると、それを組み立て、寝床を用意した。
光源は木を折って巻としたものを数本アラスやアームが用意していたので今日はそれに任せることにする。
テントなかでは女性陣が夕食を取っていた。
夕食と言ってもただの干し肉だが。
鈴いわく 食えれば何でもいい! らしい。
イルミス達男性陣は外に追い出されている。
なぜならまだ女性たちはこの大きいが六人も入れば狭いテントに少しオドオドしている。
狭い場所に監禁されていたためだろうか。
そんなところに男性陣が混じったら大変なことになるだろう。
彼女達の心のケアも大事だ。
「あ”ー!女の子に囲まれて川の字でねたかったぜぇ…。」
「お前はトラウマを植え付ける気か。」
「やだなぁ。俺は一緒に寝たいだけだぜ?あわよくば―。」
「それこそトラウマものだ。」
「なんだよ~最後まで言わせてくれよ~。」
アラスはアームに文句を言っている。
喋っている途中で口を挟まれたからだ。
それに対してアームは何も思っていないようでまたアラスの病気的な何かが始まったとしか思ってない。
イルミスはいつもの
事だと横目で夕食を食べていたのだった。
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「さて皆さん!荷物は馬車に乗せましたか?」
「大丈夫だ。出発してくれ。くれぐれも置いて行かないでくれよ。」
計十人分の荷物と運ぶ荷物、女性陣六人と御者一人を合わせれば八人ほどの重さがある。
しかし馬車を引くブルートフォースは通常の馬とは違う、二頭もいる。これだけ荷物を積んでしまったら荷物の重さで多少の速度の低下はあるが、問題ないレベルだ。
しかも今回はイルミス達の護衛が付くため安全性は格段と上がっている。
馬車内ではアイリスと鈴が三人のメンタルケアーをしている。
ただ話しているだけなのだが、それだけでも捕まっていた時の恐怖や絶望感を一時的にでも忘れる事だろう。
二人ともなるべく明るい話題で場の雰囲気を盛り上げていく。
「でね!リール国の王都でね、ビーチボールとビーチフラッグやったんだよねー。」
「びーちぼーる?びーちふらっぐ?なんですかそれ?」
「よくぞ聞いてくれた!これはね、私の国でやる遊び?運動なんだ。ビーチボールは正確に言うとビーチボールバレーって言うんだけど浜辺でボールで遊ぶんだ!」
鈴は人格同調を使うとビーチボールを創造する。
それを優しく投げる。
あわててそれを手に取るが思った以上に軽く驚いていた。
「え?凄い軽いです。」
「透けて見えるしカラフル…。」
「僕にも触らせてください!」
珍しい物だけに三人のとりあいが始まった。
「ほらほらビーチボールはにげぶはあああ!」
「あ。」
三人がビーチボールを押し合ったため勢い良くビーチボールが鈴の顔面に飛んできたのだ。
「す、すみません。」
「いやぁ。元気でいいねぇ。私はもうそろそろおばあちゃんだからねぇ。」
「何言ってるのよ。貴方まだ十七歳でしょ。」
「十代が花なのよ!後三年でおばあちゃんだよ!」
「それを言ったら世の中の女性はどうなるのよ…。」
アイリスは今の発言に呆れを出しているが、三人はくすくすと笑っているのであった。
一方外では…。
アラスがかったるそうに歩いている。
「あー。俺もあの中に混ざりたかった。」
「おなごならここにもおるじゃろ?」
「もちろん飛鳥ちゃんもいるけど~やっぱり男としては囲まれてハーレムを築きたいじゃない?」
「そういうものなのかぇ?」
「そういうもんだぜ?なぁ、イルミス?」
「俺に話をふるな。それはお前だけだ。」
「枯れてるなぁ。」
突如話をふられたイルミス。
いつもならアームに話が行くところだが、あいにく反対側に居るためイルミスになったのだ。
「ふむ。ではイルミス殿には枯れぬ様に水をあげなくてはのぅ。」
「それいいね!」
「飛鳥…お前まで悪乗りするな…。」
「冗談じゃ。ハハハハ!」
いつ見ても仲の良いパーティである。
オリジナル銃火器 46式5.56mm自動小銃 を出しました。
未来から来たのに古い武器ばかり使っているので未来っぽい武器を出してみました。
しかし銃というものはあまり変わらないので86式のスペックアップみたいな感じになりました。
もちろん着剣することもできるので近接戦闘も一応できます。




