表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
ルーツ国の披露宴
87/217

魔道具



「そういえば魔道具は有ったか?」

「はい。これになります。」


ルンガーダは胸ポケットから魔石がはめられた五インチほどの板を取り出した。


『スマフォみたい。』

"そうだね。魔石がくっついてる以外はそう見えるね。“


それをアゼリアに手渡す。


「どれ早速起動させてみるか。」


アゼリアは魔道具を起動させた。

すると声が聞こえてきた。


《誰だ。》

「ルーツ国王女アゼリアだ。貴様は闇ギルドの参謀か?」

《チッ。始末しなかったな。それで?お・う・じょ・さ・ま、が何の御用で?》

「貴様らの作戦は失敗したな。さっさと次のアジトの場所を教えろ。」

《ふん。所詮あいつらは捨て駒さ。場所を教えるわけ無いだろ。あほか。》

「偉いセリフもそのうち吐けなくなるから今のうちにはいておけ。」

《お前ら平和ボケしている奴らに俺たちが負けるはず無いだろ?》

「今に見ていろその顔に穴開けてやる。」

《おぉ、怖い怖い。…話は終わりだ。今後この通信は遮断する。》

「いいぞ。もうお前たちと話すことはない。なぜなら次は無いからだ。」

《言ってろ。》


そう言うと魔石から色がなくなった。


「だそうだ。パーラ魔法隊長。この魔道具の解析と複製を頼む。」

「ハッ。」


鈴は手渡される瞬間に魔道具の表面が目に入った。

そこにはこの世界ではありえない文字が書かれていたのだ。


「…英語?ちょ、ちょっと貸してください。」


鈴はパーラから魔道具を借りると裏表を確認する。


「やっぱり。これ英語だ。」

"こういう記述はプログラムって言うんだよね。“

『そうなの?まぁカッコとか数字とか一杯入ってるし。』


鈴が真剣に見ていると隣に居たルンガーダが話しかけてきた。


「鈴殿はそれがよめるのか?」

「これ英語って言う言語です。記述は術式のように書かれていてよくわかりませんが…。」

「鈴、英語とはどこの国の言葉だ?」

「え、それはもちろん―」

『ハッ!』

"どうするの?“

『違う大陸の言葉ということで誤魔化す!』

"パーラがいるよ。突っ込まれたら終わりだよ?“

『ぐぬぬ…。』

「鈴?どうした?」

「えーっと、あれ?何で知ってるのでしょうか。」

「記憶が戻ったわけでは無いのだな。」

『ごまかせたー!』


鈴はなんとか誤魔化すことができた。

若干目が泳いでいたが距離もあり見えなかったようだ。


鈴はパーラに魔道具を返す。

パーラも始めてみたのか裏表をひっきりなしに見ている。


「で、その魔道具には英語で術式が書かれていると言うのだな。パーラ魔法隊長は読めるか?」

「さっぱりです。ただ、魔力の流れを追っていけば解析は可能かと思われます。複製自体は直ぐにできますが。」

「できてもあっちとつながっては意味が無い。」

「やはり解析からですね。」


話を進めていると宰相が部屋に入ってきた。


「大変ご迷惑をお掛けいたしました。」

「宰相傷は大丈夫か?」

「大丈夫でございます。ご心配おかけいたしました。」

「そうか。」

「まだ城内で侵入者を発見できておりません。近衛騎士団はいつでも抜刀できるように!アゼリア王女様をお守りしろ!」

「ハッ!」


アゼリアの回りにいる近衛騎士達は一斉に返事をするといつでも抜刀できるように剣の位置を正した。


「鈴、ルンガーダ銃士隊長、パーラ魔法隊長は各部屋に戻っていいぞ。各自装備の点検、身の回りには気をつけるように。」



*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


「外が騒がしいな。何かあったのか?」

「ちょっと聞いてくる。」

「アーム頼んだ。」


アームは部屋から外に出ると走り回っている兵士を呼び止めて事情を聴いた。


「どうしたんだ?」

「城内に侵入者です。現在警戒と侵入者探しをしております。なるべくお部屋から出ないようにしてください。」

「わかった。ありがとう。」


そういうと兵士と別れアームは部屋へと戻る。


「どうだった?」

「なにやら侵入者が城内にいるそうだ。」

「まーた闇ギルドなんじゃねーの?」

「城に侵入する馬鹿なんてそいつらしかいないじゃないか。」

「とりあえずアイリスと飛鳥を呼んでおくか。みんなで固まっていた方がいいだろう。」

「そうだな。」

「乱交ぱ-」


そこまで言いかけたアラスの腹に拳がめり込んだ。

勿論近くにいたアームの仕業だ。


「ぐ、ぐふぅ…。」

「よし。呼びに行ってくる。」


そういうと再び部屋を出て隣の部屋の扉をノックする。

すると中からアイリスの声が聞こえてきた。


「どなたかしら。」

「俺だ。」

「アームね。ちょっと待って、今開ける。」


アイリスは扉の鍵を開けるとアームを部屋の中へと入れる。

そして現在も寝ている飛鳥の姿があった。


「いつまで寝てるんだ…。」

「今日は起こさないことにしたの。」

「とりあえず…だ。この城に侵入者がいるらしい。」

「何それどこの馬鹿なの?」

「推測だが、闇ギルドの連中じゃないかと疑っている。」

「ふーん。そうねそいつらならやりかねない。」

「取り合えず飛鳥を起こしてくれ。皆で部屋に固まろうと思っているんだ。」

「そうなのね。それじゃ起こすわよ。」


アイリスは寝息を立てている飛鳥の鼻をつまむ。


「………ふが…ふが…ふがふが!」


呼吸を封じられた飛鳥は酸欠気味になり飛び起きた。


「ぶはぁ!な、何をするのじゃ!殺す気か!」

「起きたわよ。」

「それじゃ行こうか。」

「ちょっと待つのじゃ!服を!服を着させてほしいのじゃぁ!」


イルミスの部屋に集まった一行は城内の状況が落ち着くまで同じ部屋にいることとなった。

それを利用して修業の続きを行うこととなったのだった。


「これ!アラスまた乱れておるぞ!」


飛鳥は急ピッチで服を着てきていたので細かいところが気に入らずアラスを注意しながら直していた。

それにもかかわらず飛鳥の魔力には乱れが一切なく無駄がない。

これにはアラスも言い返せない。


アイリスはとにかく二重詠唱合体(ダブルスペルコアレス)の練習をしていた。

今日もポーションを作る作業だ。


何度も何度も魔力を練って水魔法と治癒魔法を同時に発動させる。

アイリスの作るポーションが効果があるのは水魔法と治癒魔法を同時に使うところにある。

水、いわゆるH2Oに魔力的因子が加わることにより原子レベルから魔力のつながりが起こりやすくなる。

仮にこれをマギH2Oとなずけよう。

マギH2Oに治癒魔法の魔力が結合され治癒の効果を逃がさない水ができあがるのだ。

要は原子と原子の隙間を魔力が補填し、すり抜けなくなる。


アイリスは試行錯誤でこれができているが理論は知らない。

もっと練度が上がれば理論も分かるかもしれない。

しかし一部の魔法に精通している人物たちはその理論に気が付いている。


しばらく時間が経ち、隣の部屋からがちゃがちゃドアノブをいじる音が聞こえてきた。

さらにアイリスを呼ぶ声もする。


皆修業や練習に勤しんでいるため誰も呼びにいかない。

そのためかこちらの部屋にも呼び声が掛かった。


「イルミスさんいますか?」

「……入れ。」

「失礼しますー。って皆修業中か。」

「む、鈴殿か。色々話をしたそうなイルミス殿がおるし、一旦休憩にするかのぅ。」

「だはー!これはきついわー。」

「鈴報告を聞かせてもらってもいいか?」

「はい。」


鈴は任務であったことを話し始めた。

作戦情報が漏れていたこと。

それにより奇襲、待ち伏せがあったこと。

洞窟に一時閉じ込められたこと。

シュバルツに会ったこと。

途中よそ見してこけたこと。


「最後が締まらないな。」

「背後からドスンと聞こえてきたらそっち見てしまいますよ…。あ、そうだ。アイリスのポーション擦り傷に効いたよ!ありがとね。」

「よかった。あんな未熟なポーションでも効果があったのね。ちなみに今の方が完成度が高いわよ。」

「おー。」

「いろいろ考えて作ったから普通に治癒かけるより飲んだ方が効果が高いかもしれない。体の自然治癒能力を底上げと治癒を同時に掛けるからね。」

「それはすごい!」

「で、だ。この騒ぎについて詳しい内容は知っているか?」

「あ、はい。知ってます。」

「話してくれ。」


鈴はあったことをパパッと簡潔に話す。


「黒い侵入者、しかも不死身か…シュバルツが関係しているんだな?」

「たぶん…。アイリス憶えてる?あの村に行ったときすごい回復力を持った屍人形が居たこと。」

「覚えてるわ。灰になるまで燃やし尽くしたからね。」

「今回の侵入者もルンガーダ銃士隊長と私でフルオートで上半身穴だらけにしたのに立ち上がったからね…いつみても気色が悪い…。」

“SAN値直葬。”

『本当にそれ』

「でもあの時も思ったけど、剣で切っても回復するっておかしいのよ。あんまり闇魔法に詳しくないんだけど、リビングデッドで作られる屍人形はそんな回復能力なんて持ってないのよ。」

「うんじゃあ何か改造されてるのか?」


アラスが推測を述べる。


「そうだと思う。でも今回は屍人形じゃない。屍人形はそんな動きできないから。」

「ならその任務で行った村は実験に使われたんじゃないか?」

「今回のは生きた人間を使った人体実験ってことですね。」

「そう考えるのが妥当だな。」

「自分の私利私欲のために村ごと実験材料にするなんて狂ってるな。」

「ネクロマンサーなんだぜ?狂ってなきゃやらないぜ。」

「そうですね…。次は燃やしてやります。」

「そうね。灰になるまで燃やしてあげましょ。」

「そうと決まれば修業あるのみじゃ!」

「よし、再開するか。」

「えーもうちょっと休もうぜー。」

「一番できていないアラス殿が何をいっとるか!」

「スミマセン。」

「それで良いのじゃ。」


その後各自修業を行い、時間を過ごした。

鈴は部屋のベッドでぐっすり寝ていたが。


夜になると使用人が夕食を持ってきてくれた。

城の食事とだけあって豪華である。


「鈴、夕食よ。」

「ご飯!?頂きます!」

「食いつきがいいわね…。」


一方アゼリアは運ばれてきた食事を毒味と言う形で運んできた使用人自らがランダムに選ばれた部分を食べさせられていた。

侵入者のこともあり城内には未だ警戒令が敷かれていた。

アゼリアの寝室の前には近衛騎士が二人、中には三人とこれでもか、っと言うような警備である。


すべて宰相が指示した内容なのだがアゼリアにとっては少し窮屈に感じていた。


「(…こうも人がいると寝にくいぞ…。それに食べにくい)」


アゼリアは苦労していたのだった。


翌朝。

警戒令の中、目が覚めた。


イルミス達の客室もベッドが3つしか用意されていないためイルミス達男達は床で寝ていた。


「やっぱり床は硬い。腰が痛いな。」

「ごめんなさいね。私達がベッドつかっちゃって。」

「いや良いんだ。気にするな。」

「さて、城なんだからお風呂はあるはずよね。」

「あるだろう。俺たちも行ってくるとするか。」

「私は二人を起こして行くわ。」


イルミスとアイリスは寝ている四人を起こす作業に入った。

アームとアラスは良いとして、飛鳥と鈴がまた起きない。

アイリスは呆れ顔だ。

飛鳥には秘密(トラウマ)の言葉を、鈴には水を。


「いやじゃああああぁぁぁ!」

「うわっぷ!冷た!」

「おはよう。」

「おはようじゃ。…アイリス殿それはやめてほしいのぅ…。」

「アイリスおはよー。毎回濡れてる気がする。」

「お風呂行くわよ。」

「お風呂じゃー!」

「おっふろ!」

「それじゃ俺たちも行くか。」

「混浴キタコレ!」

「そんなわけないでしょ。」


六人は部屋の外へ出ると、その辺を歩いている使用人に風呂場まで案内してもらうことにした。


「まさかの混浴。」

「そんなバカな。」

「うひょおお!混浴キタコレ!」

「兵士たるものこのような事で精神を乱していては駄目だということで改装工事の時に混浴になりました。…使用人の間では不評なんですけどね…。」

「最悪ね。」

「だのぅ。」

「私にまかせろー」


六人は脱衣所に入ると、鈴が人格(パーソナリティ)同調(シンクロ)で保健室でよく見る仕切りを二つ創造する。

仕切りを繋げて女性陣はその内側で服を脱ぐ。

男どもは仕切りの外である。


「チクショー!」

「アラス…。」

「アーム!お前枯れてんのか!」

「いや、そういうわけじゃないが…。」


そんな会話が聞こえてくる中女性陣は体にバスタオルを巻いていた。


「アラス、アーム。覗いたら燃やすわよ。」

「見たら修行メニュー増やすのじゃ。」

「私はどうしようかなー。リンがボコボコにします。」

"えっ?私?“


そして仕切りを消すと風呂場へ入っていった。


「まず体を洗おうかしら。最近入ってなかったからね。」

「じゃ、仕切り出すね。」


再び鈴が仕切りを創造し男女の壁を作る。


「ふう。これで安心して洗えるわね。」

「そうじゃな。」

「……。やっぱり理不尽。」


鈴は二人の胸と自分の胸を見比べていた。

ぺたん。そんな擬音が似合う鈴の胸。


「くっ!こうも世界は理不尽なんだ…!」

「鈴は何を言ってるのかしら。」

「わからぬ。」


一方仕切りの外では…。


「おのれ…!おのれ…!仕切り!」

「ほらさっさと洗え。汗臭いぞ。」

「へいへい。」

「おっと石鹸が落ちたな。アラス拾ってくれ。」


イルミスが石鹸を手から落とす。


「こいつだな。おわ!手が滑った!」


石鹸はアラスの手から離れ仕切りの下を通って行ってしまった。


「これは…!理由を付けて向こう側へ行け―。」

「石鹸そっちに滑らすわよ。」


そう言うと石鹸がアラスの足に当たった。


「畜生!」

「アラス早く取ってくれ。」


女性陣は体を洗い終えると仕切りを消し、湯船に向かった。


「ひさしぶりだなー。」

「そうね。」

「最後に入ったのは妾の家以来じゃな。」

「それにしても飛鳥の肌って綺麗だよね。」

「何か秘訣があるのかしら。」

「普通に生活していただけじゃよ?」

「やっぱりアルニカの食生活が影響しているのかも?」


女性陣がいちゃいちゃしてるところに男性陣が湯船に入ってきた。


「タオル一枚!ふがー!」

「落ち着け。」

「そうだぞ。お前は獣か。」

「変態という名の紳士だ!」

「…。」

「…。」


こうして男性陣には生殺しとも思える入浴だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ