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異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
ルーツ国の披露宴
85/217

洞窟に入るとまず足元に僅かだが熱線を感知した。

大勢の人が出入りした跡だ。


洞窟内のすべての松明が消されているため真っ暗だが次第に銃士隊のメンバーは目が慣れてくる。

慣れた所で大きな空洞の入り口までやって来た。


「ストップ。」

「鈴殿どうした?」

「熱源がある。それも沢山。」

「俺には見えないが…。」

「なら顔だけ出してるのかな。なら…。全員耳を塞ぎ目を瞑ってください!」


鈴はM4とナイトビジョンを消すとM84スタングレネードを創造し、ピンを抜く。

そしてそれを空洞内の真ん中へと投げ込んだ。



*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


「(足音が聞こえてくるな。入ってきたら八つ裂きだぜ。)」

「いいか?中央まで入ってきたら矢を放て。」

「分かった。」

「ん?あいつらどうして止まった?」

「おい、何か投げ込まれたぞ。」

「何だこの音は?」


その時投げ込まれた物が大きな音と共に光を発したのだ。


「ぐああああ!目が!目がああ!」

「前が…前が見えない…音が聞こえない!」



*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


パンっという音とともに洞窟内に大音響の音と100万カンデラ以上の閃光が走った。

暗闇に目が慣れていることもあり完全に目が見えなくなっているのだ。

洞窟内ということも合って音が乱反射し余計にうるさく感じた。


「突撃!」


鈴はM4カービンと発炎筒を創造するとホールへと入っていく。

その際発炎筒を真ん中に投げ光源とする。

何も光源が無いよりかはマシだ。


「お前ら!突撃だ!いつまで耳押さえているんだ!」

「りょ、了解!」


鈴達はホールへと突入して行く。

ホールでは目を押さえのたうち回っている構成員が沢山いた。

中にはスタングレネードを直視しなかったが音に耳をやられ混乱している者も入る。


そこへ銃声が鳴り響く。


「今のうちに制圧してください!」


鈴はのたうち回る構成員やめちゃくちゃに剣を振り回している構成員を銃撃し、確実に仕留めていく。


銃士隊の隊員達も暗いながらも仕留めていく。

あっけないことで一分ほどで中に居た全員を仕留めてしまった。

一時的に失明、難聴を起こしている相手など赤子の手を撚るようだ。


「殲滅完了しました!」

「よし、松明に明かりをつけろ。」

「了解!」

「あ、火はこれ使って。」


鈴は発炎筒を手渡す。

兵士はそれを受け取ると松明に発炎筒の炎を引火させて行く。

ホールはすっかり明るくなり、隅々まで見渡せるようになった。


「だいぶ明るくなったな。」

「そうですね。あ、何か証拠になるような物を見つけたら持ってきてください!


「了解。」


銃士隊に指示を出すと鈴も辺りを探し始めた。

しかし辺りには酒が入っていたと思われる使い捨てられたジョッキや汚れた皿があるだけだ。

ホール内を綿密に探したが出てくるのはあまり物の食料など。


『うーん。このホールは飲み食いに使われてたのかな?』

“これだけ探してもこれしか出ないと言う事はそうじゃないのかな?”

『だとするとやっぱり扉の中を調べるしかないか。トラップとかないよね・・・。』

“これだけ早く逃げたんだからトラップは仕掛けられないんじゃないかな。”


鈴は銃士隊に扉の中を調べるように指示を飛ばす。


「銃士隊はツーマンセルで扉の中を調べるように!大きな扉は私とルンガーダさんで行きます!各自行動開始!」

「了解しました!」


鈴とルンガーダは他の扉より大きく、立派な扉の前に移動する。


「たぶんここがボスの部屋っぽい?」

「俺もそう思うぞ。・・・よしあけるぞ。」


そう言ってルンガーダはドアノブに手をかけた瞬間魔法使いの三人が反応した。


「これは・・・魔力?どこから―」


そこまで言うと洞窟の入り口方面から爆発音が聞こえてきた。

そして土埃が通路から溢れ出してくる。


「な、なんだ!?」

「ほ、報告します!入口にて魔法とみられる爆発が発生!その影響により洞窟の入り口が崩れました!」

「なん・・・。」

「一番から十五番は入口の復旧作業にあたるように。」


「りょ、了解しました。」

「十六番から二十番は先ほどの指示通りに動いてください。魔法使いの方で土を使える人は復旧の方へ。」

「了解です!」

「・・・冷静だな。」

「こんな時に冷静にならなくてどうする?」


しゃべり方で分かるだろうが、現在リンが出ている。

スズは混乱中の為中に引っ込んでいるのだ。


「そうだな。すまない、鈴殿。」

「それより中を調べよう。ルンガーダ。」

「そうしようか・・・鈴殿何か変わったか?」

「私はスズではなくリンだよ。私は二重人格者。」


「二重人格だと、初めて聞いたな。」

「教えるまでもないと思ってね。」

「作戦には支障はないからな。それより奥を調べよう。」


二人は扉を開け中に入ると当然のことながら空っぽになった棚が並んでいた。


「資料持ち出されていたか・・・。綿密な奴らだ。」

「ルンガーダ。注意して。」

「ん?・・・・・・そうだな。」


鈴の持っている玉藻のお守りが反応しているのだ。

何か、悪意を持った者がこの部屋の中にいる。


「出てきたらどうだ?」


しかし反応はない。

リンはお守りを頼りに光が強くなる方へ向けて歩き出した。

そしてお守りを持った手で何もない空間を殴りつけたのだ。

その瞬間お守りが強い光を発した。


「くっ…。悪意反射結界ですか。厄介なもの持っていますね。」

「誰だ!」


何もない空間に突如人影が現れたのだ。


「こいつは幹部のシュバルツだよ。」

「覚えていて頂いて光栄です。そちらの方は初めてですね。シュバルツ・ゼイノスと申します。」

「そんなことはどうでもいい!」

「おやおや、私も嫌われたものです。」


ルンガーダは魔導ライフルをシュバルツに向けるが平気な顔をしている。


「それが新しい兵器ですか。しかし無駄ですよ。今の私は魂ですからね。本体は既に移動済みです。」

「チッ。」

「そんなことよりさ、支配魔法使う幹部いないの?」

「ガーランドさんですか。彼はもうここには居ませんよ。そういえば彼、貴方の支配に失敗して愚痴ってましたね。」

「ガーランドか。覚えたよ。」

「おや、覚えられてしまいましたか。まぁ、女性の方に名前を覚えられて彼も幸せでしょう。」

「何言ってるんだこいつ。」

「ではここには何もなくただの待ち伏せだったということか。」

「そういうことになりますね。この部屋に入った途端入り口崩れたでしょう?あれ私がやったんですよ。」

「なんだと!」

「これであなた達が餓死でもしてくれたら私のお仲間にしてあげます。」

「ふん。誰がなるものか。」

「威勢がいいですね。それでは私は退散させていただきますか。少々その結界は厄介ですので。」

「待て!逃げるのか!」

「えぇ。逃げます。それではさようなら。」


そう言うとシュバルツの気配は完全に消えてしまった。


「くそ。逃げられたか。」

「そうだな。とりあえずこの部屋も隅々までさがしてみよう。」

「ああ。」


しかし、隅々まで探したが、書類の一枚も残されていなかった。


「どうだ?」

「無い…か。こっちもないよ。」

「徹底してやがるな。入り口がどうなったか知りたい。一旦行ってみるか。」

「そうしよう。…あ、スズが治った。スズに変わる。」


そう言うとリンとスズが入れかわった。


「よし。もう大丈夫です!ルンガーダさん見に行きましょう!」

「まるで別人だな。」


そう言いながら部屋を後にする二人。

二人は入り口まで戻ると、岩で塞がれてしまった入り口を何とかどけようとする隊員達を見つけた。


「作業はどうだ?」

「はっ!岩が思いの外固く魔法の効きが悪いそうです。どかそうにもバランスが不安定な為引き抜く際に岩に潰されるおそれがある為作業は難航しています。」

「そうか。困ったな。」

「うーん。ダイナマイトで吹きとばせそうだけど大丈夫かなぁ。」

「なんだ、そのダイナマイトとは。」

「爆弾の一種なんですけど、ようは爆発魔法を起こすような感じです。」

「よし、それを使おう。お前ら一旦ホールまで下がるんだ!鈴殿設置任せるぞ。」

「え!は、はい。」

『どうしよう。適当に岩の間にダイナマイト押しこめばいいかな。』

"いや、私に聞かれてもわからないよ。多分それでいいんじゃないかな。“

『洞窟ごと崩れたらどうしようねーアハハ…。』

"いや、笑い事じゃないと思うよ?“


鈴は岩の間に一つのダイナマイトを差し込むと導火線を引っ張りながらホールに戻っていく。


「行きます。」


鈴はダイナマイトの起爆スイッチを捻る。

瞬間爆音と共に通路から土煙や岩の破片が飛んできた。

皆直線上には居なかったため被害はなかった。

洞窟も崩れること無く鈴はほっとしていたのだった。


鈴とルンガーダが入り口を覗くと、光が見えた。

ダイナマイトがきちんと入り口を塞いでいた岩を吹き飛ばしたのだ。


「よし!出られるぞ!」

「うおおおおお!」


銃士隊のメンバーが喜びの雄叫びをあげていた。

鈴は通路にヒビが入っていないか心配でそれどころではなかった。


「なるべく早く出ませんか?」

「ああ、すまん。皆行くぞ。」

「了解!」


鈴達は元闇ギルドアジトを後にすると後方から地鳴りのような音が聞こえてきた。

後ろを見てみると砂埃が上がっていた。

おそらくダイナマイトが強すぎたため亀裂が入っていたのだろう。


「で、出ててよかった…。」

「…そうだな。」


後ろを向きながら歩いていた鈴は小石につまづきこけてしまった。


「いで!」

「鈴殿!?」

「あー。大丈夫膝擦りむいただけだから大丈夫ですよ。」

「すぐに魔法使いに治癒させよう。」

「いや大丈夫です。」


鈴はそう言うとバッグからアイリスから受け取ったポーションを取り出した。


「それは何だ?」

「ポーションです。」

「ポーション?それじゃ怪我は治らないだろう。」


この世界でのポーションの定義は薬草を水に溶いて新陳代謝や自然治癒力を高める働きしか無い。

飲んで直ぐに怪我が治るなんて言うポーションは無いのだ。


「このポーションはうちのパーティの魔法使いが作った特別製なんですよ。」


そう言うとポーションの蓋を開けそれを飲み干す。

すると怪我がじわじわと治り始めているではないか。

その様子を見ていた魔法使いもルンガーダも驚いていた。

特に魔法使いが反応を示した。


「さっきの水に魔力を感じました。でも水自体は普通の水のはず。治癒を水にかけてもそんな効果はでない。まさか水と治癒を同時に掛けたというの?それなら納得いく…。魔力同士の結合効果、更にそれを必要とする二重詠唱合体(ダブルスペルコアレス)…。」

「済まないが城に帰ってからにしてくれないか?」

「あ、す、すみません…。」

「職業柄ってやつですね。」


魔法使いがあれやこれやと推測を立ててるうちに鈴の怪我は完治していた。

一行は再び下山を始めた。


すっかり日が昇り鈴はバッグに入っていた干し肉を食べていた。

一人で。


「やっぱり質の違うお肉はおいしいなー。」

「鈴殿…。」

「うん?ほしいの?」

「いや、そうじゃないが…なぁ?」


ルンガーダは隊員に目配せをする。


「自分は欲しいです!」

「おい。」

「あ、そう?一枚余ってるからあげるよ。」

「食料感謝します!」

「お前覚えておけよ。」


山を下山し、森を抜ける。

森のなかではしばしば魔物と戦闘になったが難なく撃ち殺していった。

本当は鈴がすべて倒せば弾の節約になるが、今回が初任務の彼らにとって銃の練度をあげるために必要なことなのだ。


森を抜けると関所が見えてきた。

こちらに走ってくる一人の姿がある。

それは鈴には二回目の再開だ。

新米兵士テアム・エイジである。


「みなさぁーん!ご無事ですかー!」

「あ、エイジ君だ。おーい!」

「銃士隊の皆さんご無事でしたか!爆発音が聞こえたから何か合ったのかと思いました…。」

「エイジ君ひさしぶり~!」

「す、鈴さん!ひさしぶりです!」

「どう?あの後から強くなった?」

「はい!今度は負けませんよ!上官殿の教えをきちんとみっちり四ヶ月鍛えましたから!」

「お?やる?」

「やりましょう!」

「鈴殿…作戦中なのだが…。」

「ちょっとだけ!ちょっとだけ!お願いします。」

「…指揮は鈴殿にある。皆下山で疲れているだろう。少し休憩を取らせていただきたいのだが。」

「ふふ。ルンガーダさんもわかってますね。休憩どうぞ。」

「よし!お前ら休憩だ!休憩が終わったら城に帰るぞ!」

「了解!」


兵士達はそう言うと関所前の草原に座り休憩を取り始めた。


一方鈴は人格(パーソナリティ)同調(シンクロ)を使い木刀を二本創造する。

片方をテアムに渡す。


「これは?」

「私の国にある非殺傷用の刀…剣だよ。摸造刀でも金属だから当たると痛いじゃん?」

「まぁ、確かに。」

「これで存分に打ち合えるね。」


鈴のニコニコフェイスにテアムはまた顔を赤くし、顔をそむけた。


「そ、そうですね。訓練の成果見せてあげます!」

「楽しみにしてるよ!」


そう言うと鈴は一気に踏み込んだ。

VRMMOでの剣術がアシストになり鈴の体を支える。


以前の戦いのようにフェイクを入れて打ち込んだがテアムはそれに対応してくる。

その対応には余裕がありそうだ。

上官にしごかれたかいがあったのだろう。


「おお?今のを止められるとは成長したね。」


必殺天然ニコニコフェイス。

テアムは赤面する。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


「あいつ確認しに行っただけなのに何で戦ってるんだ?」


そのつぶやきにルンガーダが答える。


「鈴殿が仕掛けたのに乗ってしまったようです。」

「ランニング二時間だな。」

「ところでフランク関所官。」

「ん?なんだ?」

「なぜエリートである近衛騎士団をぬけてこちらに来たのです?」


フランクは少し考える様に腕を組んだ。


「まぁ…次世代を育てたかったからか。近衛騎士も悪くなかったが、今の職務も悪くない。あいつみたいのが居るから育てかいがある。」

「そうなのですか。フランク関所官が育てたあの兵士、かなりいい腕してますね。」

「まだまだだよ。四か月前はあの娘に負けてたんだからな。今はそこそこ動けているがまだまだ隙が多い。一方あの娘はあまり隙が無いが対人向けの剣じゃないな。無理やり対人に直した感じだ。」

「そこまでわかるのですか。さすがです。」


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


「だいぶ強くなったね。」

「当たり前です!」

「私の剣じゃここまでかな。」

「先ほどから見ていてなんとなくですが、その剣対人向けじゃないですよね?動きが直線的というか…フェイクが甘いというか…。」

「すごい!そこまでわかっちゃうの?さすが叩き込まれただけあるね。」

「い、いえ、そそ、そんなことは無いですよ。」


テアムはどうやら女性に弱いようだ。

褒められただけで顔を赤くしている。

しかも顔が俯いてしまっている。

鈴はその隙を逃さなかった。


「戦闘中は目をせらさなーい!」


カーンっという音があたりに響く。

鈴の木刀がテアムの兜を叩いた音だ。


「うう。負けました…。」

「エイジ君何で目をそらしたの?実践だったら死んでるよ?」

「あ、あれはその…。」

「その、何?」

「その…その…女性に褒められたことが無かったから…。」

「ふふ…あはははは!そ、そんな理由?」

「わ、わるいですか!」

「いや、いいんだけど…ぷ…ふふふ。」

「こらぁ!エイジ!まーた負けたのか!しかも今度のはなんだ!余所見で負けただと!ランニング二時間と思っていたが四時間走れ!」

「ひ、ひぇえええ!勘弁して下さい!」

「さっさと走れ!」


鈴はフランクとテアムのやりとりが始まった時には既に側から離れていた。


「ルンガーダさん。あと少し休んだら馬で戻りましょう。」

「了解だ。」

「それにしても怪我人が出なくて良かったです。」

「途中転んでなかったか?」

「アレはいいんです。」

「そうか。」


その後十分ほど休憩し、城に向けて走り始めた。


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