闇ギルド殲滅作戦
鈴は扉をノックする。
メモ用紙に書かれた部屋だ。
「すみません。いらっしゃいますか。」
「居ます。どなたでしょうか。」
「鈴です。打ち合わせに来ました。」
「入ってきてください。」
「失礼します。」
鈴は銃士隊隊長の部屋へと入る。
「さて始めようか。場所は知ってるか?」
「知りません。」
「場所なんだが…以前城に上がってきたオーガの件があるんだが、そこの更に奥に位置するルドルフ皇国との国境線上にある山の洞窟だ。」
「あー。あのオーガですね。」
「知っているのか?」
「それ受けたのはイルミスさんですからね。」
「そうだったのか。それはさておき、夜に奇襲を掛ける都合上出るなら日が沈む時がいい。ここから国境まで馬で八時間かかるからな。」
「そうですね。奇襲かける都合上明かりが点けれませんね。そこは私が案内します。」
「何か策があるのか?」
「ナイトビジョンという物があり、月明かりを増幅し昼間並の明るさまで明るくできます。一人様ですが。それと奇襲するなら夜中ではなく夜明けがいいと思います。夜は向こうも警戒していると思うので油断しているだろう明け方に奇襲しましょう。」
「そうだな。向こうさんも夜には慣れてるだろう。明け方ならいいかもしれないな。」
「今のうちに銃士隊のメンバーを休ませて置いたほうがいいと思います。」
「それなら大丈夫だ。装備の確認をさせて休ませてある。」
「さすがです。あ、ところで隊長の名前は何と言うのですか?」
「そういえば言ってなかったな。俺はルンガーダ・シュイストだ。よろしくな。」
「よろしくお願いします。ルンガーダさん。」
「とりあえず鈴殿も休むといい。本当は俺たちだけで片付ける問題だったのに済まないな。」
「いえ。闇ギルドには個人的に借りがあるのでその分晴らせていいです。」
「そうなのか。無理はするなよ。鈴殿に何かあったら王女様に何を言われるか。」
冗談半分にそう言い笑うルンガーダ。
「大丈夫です。いざとなったら爆撃します。」
「何やら物騒なことをしそうだが…。」
「大丈夫です!被害はこちらにはありませんから!」
「そ、そうか。」
「では夜に。」
「部屋まで呼びに行くから起きててくれよ。」
「あはは…。」
『誰から漏れたし。』
"おそらく宰相。“
『おのれ宰相!』
鈴はルンガーダの部屋から出るとメモ帳と逆のルートを辿って客室へ戻ったのだった。
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「何?アジトがばれただと?」
「はい。城に忍び込ませていた”黒”から連絡がありました。」
「で、何といっていた?」
「人払いがされていて盗聴が困難だったそうですが、断片的な情報を入手しました。こちらに襲撃が来ること、新しく新設された部隊二十一名と詳細不明の四人の合計二十五名で攻め込んでくるそうです。」
「二十五だと?ふん。舐められたものだな。このアジトは放棄する。奇襲組を編成してそれ以外の奴らは荷物を持ち出すように指示しろ。場所は言った通りの場所だ。」
「わかりました。すぐに準備させます。」
そういうと闇ギルド構成員はボスの部屋から出て行った。
「・・・前国王の弔い合戦ってか。ククク。愚かだな。シュバルツ。」
「なんでしょうか。」
「お前はいつも幽霊のようにいるな。」
「人間やめてますから。」
「お前は本当に面白い奴だ。」
「して、なんでしょうか。」
「城から送り込まれてくる兵士の情報を収集してもらいたい。ワイバーン持っているだろ?戦闘中空から見ててほしい。」
「わかりました。」
「戦闘が終わり次第新しいアジトへ迎え。俺もそこで待っている。以上だ。」
「では。」
煙が飛散するかのようにシュバルツの姿が消えたのだった。
「さて、あいつらに一泡吹かせてやるか。ククク。」
その顔は邪悪でおぞましいものだ。
城に潜伏していた”黒”と呼ばれる者によりアゼリアの杞憂は現実のものとなってしまったのだった。
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「お肉おいしい・・・。」
鈴がなにやら寝言を言っていると扉がノックされた。
外から先ほどのルンガーダの声が聞こえてくる。
しかし鈴は今だ夢の中である。
困り果てたルンガーダは隣のイルミス達の部屋をノックしたのだった。
「はい?」
対応したのはアイリスだった。
手には小瓶を持っている。
「すまないが鈴殿を起こしてくれないか?」
「・・・ああ、夜ね。作戦に参加するのにまだ寝てるのね。
アイリスは扉の鍵を開けると、とりあえず水球を魔法で出すと鈴の頭にぶつけた。
「!!??冷た!あ、おはようございます。」
「夜よ。」
「そろそろ作戦を開始する。」
「あ、はい。」
鈴はベッドから起き上がるとブーツを履き、体を伸ばす。
「んん~!よし。行きましょう!」
「行こうか。」
鈴とルンガーダは城が保有している馬小屋まで来ていた。
そこには魔導ライフル装備の兵士たちが揃っていた。
「うーん。指揮頼まれちゃったけど、二十人も動かせないなぁ。番号付けすればいいかな。」
鈴は隊長を除いた兵士達に番号を割り当てた。
これで細かい指揮が鈴にもできるようになるだろう。
「よし、乗馬してください!出発します!ルンガーダさん先頭よろしくお願いします。」
「まかせろ。」
鈴も馬に乗るとM4カービンを創造する。
これで準備完了だ。
鈴が出発しようとすると近くの扉からアイリスが出てきた。
「間に合ったわね。これ持って行きなさい。」
「なにこれ?水?」
「治癒魔法を付加してあるの。ちょっとの傷なら治るはずよ。」
「ポーションか!ありがとうアイリス!」
「怪我しないに越したことはないんだけど、気をつけなさいよ。」
「了解!いってくるよ!」
鈴達は城から勢い良く出て行った。
それを城のバルコニーから見ているアゼリア。
「皆無事に帰ってくるんだぞ…。」
城から馬を走らせること八時間。
途中馬を休めたりしたが、かねて予定通りの時刻だ。
関所に馬を預け二十五人は森の中へ入って行った。
鈴はナイトビジョンを創造すると電源を入れる。
視界は昼間のように明るくなり草木の間まで見えるようになった。
「さて、鈴殿。どうする?」
「とりあえずアジトがある山を目指しましょう。弾薬は使わないようにお願いします。魔導ライフルに短剣を付けてください。
「着剣せよ!」
銃士隊メンバーは魔導ライフルにナイフを取り付けていく。
カチリとナイフを固定するロック音が聞こえてくる。
「着剣完了しました!」
「よし行くぞ!」
今は夜と言うだけあって森の中はとても静かだ。
魔物も生物なので夜は寝ている種類も多い。
そんな道を歩んでいく鈴達。
鈴はM4カービンに消音機を取り付ける。
基本的に創造できるのは二つまでだがオプションなどの部品は対象外だ。
そうでなかったら二丁の時リロードできない。
前方からこちらの様子を暗闇からうかがっている魔物が鈴には見えていた。
そのために消音機を付けたのだ。
鈴が片手で止まれと合図する。
プスプスと小さな発砲音と銃の駆動音がし、前方にいた魔物は撃ち抜かれ絶命したのであった。
「大丈夫。行きましょう。」
数歩進むと暗闇で見えなかったが魔物の死体が転がっていた。
ルンガーダはそれを見て鈴は自分たちとは違うと思っていたのだった。
もちろん悪い意味ではない。
オーガを倒した時より森の奥へ進むと道が傾斜になり次第に登り道になってきた。
『これ鎧つけてたらすっごいきついだろうね。』
“そうだね。銃士隊は鎧を着てなくてもマガジンや魔導ライフルの重さもあるけど、鎧ほど重くないからね。”
しばらく登り道を上ると、鈴が小声でルンガーダに耳打ちをした。
「誰かが隠れてる。」
「何?待ち伏せか?」
「おそらくは・・・。」
「情報だともうすぐアジトに着くはずだ。情報が漏れていたとすれば待ち伏せもあり得る。一発撃ったら即戦闘開始だ。合図は任せた。
「わかりました。」
そのまましばらく歩くと少し広い場所に出た。山道で戦うよりかいいだろう。
隠れていた人物も追ってきている。
そしてどうやらここが相手にとってのキルゾーンらしい。
鈴にはこちらをうかがっている人の姿が見て取れている。
「戦闘を開始します!全方位から来ますのでツーマンセルで対処してください!魔法使いはシールドの魔法で弓などの攻撃を防いでください!一番から六番までの銃士は弓兵、魔法使いを銃撃してください!それ以外の銃士は迫り来る敵を銃撃!」
鈴は早口で指示を出すと隠れている人物に銃撃を行った。銃弾は見事に出していた頭に当たり、絶命した。
それと同時に隠れていた全員が飛び出してきたのだ。
銃士隊の全員が魔導ライフルを撃ち始め、薄暗い森の中に銃声が響き渡る。
闇ギルドの構成員と思われる人物達は魔導ライフルの連射力、貫通力により近づく事も出来ずに絶命していく。
鎧を着ていようが、5.56mmのライフル弾がそれを撃ち抜いていくからだ。
「リロードする!」
「援護するぞ!」
後ろでは兵士がリロードを行っている。
その隙を守るように魔法使いのシールドのカバーが入る。
しかし魔法使いが動いたことにより一本の矢が陣形の中へ飛び込んでしまった。
だがそれは服に入れられていたマガジンに当たると、金属音を立てて地面に落ちた。
「あぶねぇ…。」
「そこか!」
三番の兵士が矢を放った構成員を銃撃する。
「助かった!」
「いいってことよ!」
「数が少なくなってきました!このまま押し切ってください!」
「了解!」
全方位波状攻撃を仕掛けてきていた闇ギルドの構成員だったが、新兵器である魔導ライフルの前では無力だった。
怪我をした兵士も居たが、かすり傷程度の負傷で済んでいる。
やがて銃声も鳴り止み静寂が訪れた。
「一番から十番はツーマンセルであたりの散策をしてください。生き残りが居たら始末を。暗いので必ずツーマンセルで動いてください。」
鈴はそう言いつつあたりを見渡していた。
パッと見た限りでは人影は見えない。
しかし、隠れて狙っている場合もあるため確認が必要だ。
十番までの兵士は魔導ライフルを構えながら早歩きで茂みに入っていった。
しばらくすると銃声が数発聞こえてくる。
「やっぱり居たのね。」
「見事な指揮だった。」
「そうですか?こちらの兵器が強いだけかと思いましたが。」
「それも合ったが弓兵と魔法使いの処理ができていたのがポイントだな。」
「遠距離支援は早めに断っておかないと後々大変なので。」
話していると十番までの兵士達が帰ってきた。
「三、四番報告します。隠れていた弓兵一人、監視役一人仕留めました。」
「九、十番報告します。剣士二人と魔法使い一人を仕留めました。」
「ご苦労様。各自装備をチェック後前進します。」
「了解!」
銃士隊は魔石に魔力を流し込んだり、マガジンの残り弾数をチェックし、かすり傷を負った兵士には魔法使いが治癒している。
鈴は一息ついていた。
「ふう。作戦バレちゃってるなぁ。どうせアジト行ってももぬけの殻だろうな。」
"だろうね。“
『一応行ってみて確認するかな。』
「ルンガーダさん。」
「うん?なんだ?」
「作戦が漏れてたということはアジトはもぬけの殻の可能性が高いですよね。」
「そうだな。もう幹部クラスは移動したんじゃないのか。」
「ですよねー。」
「それでも俺たちの作戦内容は変わらない。居たら殲滅、それだけだ。」
「そうですね。アジトはおそらく洞窟を掘り抜いた場所だから一本道が多いはず。そこを利用すれば簡単そうですね。」
「銃の特性上一本道は簡単だな。」
「一番から二十番チェック完了しました!」
「よし、行こうか。」
「了解しました!」
「前後の警戒を怠るなよ。魔法使いは隊列の中に入るように。」
鈴達の前進が再開され山を登っていく。
後四、五時間で夜も明けそうだ。
先ほどの戦闘位置から二時間あたり登ったところに洞窟がぽっかりと口を開けていた。
おそらく闇ギルドの拠点―アジトはここだろう。
松明が消されており人は見当たらない。
鈴がナイトビジョンで覗きこむが人らしき姿は見当たらない。
ナイトビジョンは光が無いと使用できないため鈴は一度それをサーモグラフィモードに切り替える。
サーモグラフィは光が無くとも物体から発せられる温度、絶対温度を検出する装置の為暗いところでも使用できるのだ。
もう一度覗き込むと、壁に等間隔で赤い部分が見て取れる。
おそらく光源を設置していたのだろう。
「私より前に出ないでください。」
「了解。」
鈴達はゆっくりと洞窟内へ入っていくのであった。




