ルーツ国王都
「ステーキおいしぃ…。」
早朝、鈴の寝言がアイリスを起こした。
「…朝ね。さて鈴と飛鳥をおこさないと。」
アイリスの朝はまず鈴と飛鳥を起こす作業から始まる。
「鈴起きなさい。」
アイリスは起きないのを分かっていながらも声を掛ける。
「ステーキおかわり…。うみゅ…。」
「……オーダー入るわ。<水よ。我が魔力を糧にここに集い水球となせ。ウォーターボール>」
「冷た!…あれ?ステーキはぁ?」
「オーダーは水になってます。次は飛鳥ね。」
アイリスは飛鳥の耳元で秘技の言霊を囁いた。
「起きないとお尻ペンペンの刑にするわよ。」
「いやじゃあああああああああ…あ?なんじゃアイリス殿か…。」
「よし。全員起きたわね。」
「起こされたのじゃ…。」
「起こされた…。後二時間寝たかったのに。」
「そんなこと行ってないで行くわよ。あと一日なんだから。」
「後一日でルーツ国王都かー。アゼリア元気にしてるかなぁ。」
「してるといいわね。イルミス達のところへ行くわよ。」
「はーい。」
女子三人組は部屋の外へでるとイルミス達が止まっている部屋の扉をノックした。
「アイリスか?」
「ええ。」
「鍵なら合いてるぞ。」
「入るわよ。」
三人はイルミス達の部屋に入る。
「あれ?アラスさんは?」
「ああ、アラスならトイレだ。」
「だから鍵開いてたのね。」
五人がしばらく話しているとアラスが帰ってきた。
「いやーすっきりしたなー。お?アイリスちゃん達おはよー。」
「…おはよう。」
「お早うございます。」
「おはようじゃ。」
「皆揃ったな?出発まで後一時間はありそうだ。朝食でも食べに行こうか。幸いこの宿には食堂があることだし。」
「賛成です!朝ごはんはステーキがいいです!」
「また朝から重いものを…。」
「お?俺も鈴ちゃんと一緒の物にしようか!」
「やっぱり肉ですよね!」
「鈴ちゃんわかってる!」
「鈴、太るわよ。」
「だいじょーぶ!いざとなったらリンに走らせ―。」
"やだよ。“
「…。」
「…拒否されたのね。」
「リンの薄情者~。」
"~♪“
「とりあえず行くぞ。」
そう言うとイルミスは持ち物を携帯するとベッドから立ち上がり移動を始めた。
それに続く五人。
宿の食堂に到着するとおばちゃん達が料理を作っていた。
「六人ね。ちょっと待ってて。ここ座っていいから!」
そういうとすぐに厨房へ引っ込んでしまった。
「忙しそうね。」
「そういえばアイリスって料理できるの?」
「もちろんよ。逆に聞くけど、鈴はできるの?」
「え!?あの…できないです。はい。謎料理ができる…。」
呪殺料理だろうか。
「あ、朝食なんだろう。」
「聞いてみるといいのじゃ。すまぬ!今日の朝食は何かのぅ?」
飛鳥が少し大きめの声で話しかけると、厨房から声が帰ってきた。
「パンとスープとサラダよー!」
「すまぬ!助かった!だそうじゃ。」
「ステーキはでないのか…。」
「そんなにほしいなら露天で干し肉でも買えばいいだろ?」
「ステーキと干し肉はちがうんです!」
「そ、そうなのか。」
鈴の食に対する情熱に押されるアーム。
「そもそもステーキと干し肉は作り方が―。」
「(うーむ。厄介なことになったな。)」
アームは食事が運ばれてくるまで鈴の話を聞かされたのである。
なぜ料理が作れない鈴が作り方を語るのかは不明だ。
おそらく料理を自己流アレンジをしてしまうパターンだろう。
「朝食おいしかったですね。まさかマーガリンがあるなんて知らなかったです。」
「高いだけはあるな。」
「さてそろそろ馬車へ行くぞ。」
イルミスは証明書を返却し、いつもの馬車へ乗り込むと既にライン家族が乗っていた。
「おはようございます。相変わらず早いですね。」
「おはようございます。朝は早起きなんですよ。この子もあまり食べないので朝食は早く済ます事ができるので。」
「ほほう。」
いつもの順番で馬車に乗り込んでいく。
乗り込んでから数十分後馬車は動き出した。
「あと少しで王都~♪」
「おうと~。」
「この後の道のりはどうなっておるのじゃ?」
「平原だけで危険な魔物も居ない。まぁ王都まで安全だな。」
「そうなのかえ。毎日何かしら起こってたから心配じゃ。」
「さすがに王都付近で盗賊は居ないだろうな。居たらどうぞ捕まえてくださいと言っているような物だからな。」
それから半日後。
ルーツ国王都の周辺へと入った。
チラホラと畑や田んぼが見えてくる。
「ん~?畑で栽培してるのはジャガイモかな?田んぼは米かな?」
「ジャガイモは保存食として使えるからね。」
「芽が出たジャガイモは危ないけど…。」
「そこは芽を取ればいいのよ。」
そして馬車は王都外壁の門に辿り着いた。
全開のように商人と兵士が大喧嘩しているわけでもないので直ぐに入することができた。
「ついに着きましたルーツ国!くぅ~!これにて長旅はお終いです!」
そう言いながら鈴は馬車を降りた。
「いや終わらないわよ。」
すかさずアイリスのツッコミが入った。
アイリスに続き皆が馬車から下車する。
「それじゃ、皆さん。ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。」
「じゃーねーおねえちゃん!」
「またねー。」
ライン親子と別れるとイルミス達は王城に向かうことにした。
「とりあえず王城へ行こう。おそらく同盟諸国の重鎮も居るだろうから気を付けろよ。」
「はーい。」
イルミス達は王都広場から王城に向けて歩き出した。
時間としては昼過ぎなので大丈夫だろう。
「どこで披露宴やるんだろうね。」
「やはり防衛観点から王城内の広い所じゃないかしら。」
「なるほど。それなら暗殺者やスパイが忍び込めないね。」
二人は会話をしつつイルミスの後についていくと、あることに気がついた。
王都内を見回る兵士の数が前来た時よりも多いことである。
「やっぱり警戒しているのかなぁ?」
そんなつぶやきを鈴はしていたのだった。
「で、まだ鈴は来ないのか?」
「まだ報告は上がってきておりません。」
「いったい何をしているんだ。明日には披露宴が始まってしまうぞ。」
その時一人の兵士が入ってきた。
「失礼いたします!王都の門番から通達!イルミスパーティ計六名が王都に入りました!」
「そうか!わかった!下がっていいぞ。」
「はっ!」
「どうやら来られたようです。」
「久しぶりだな。…はて六人もいたかな…?」
アゼリアは記憶を探るが、どう思い出しても五人しか出てこなかった。
「王城外壁までついた!中入りましょう!」
「ちょっと待て。」
イルミスは道具入れから招待状を取り出すと門前に立っている兵士に見せた。
イルミスと兵士は何かを話、ギルドカードを提示していた。
本人確認のためだろう。
「よし。みんな来てくれ。」
「開聞!」
大きな木と金属で出来た扉がゆっくりと開いていく。
「おー直ったんだ、この扉。」
以前鈴が来たときは闇ギルドとの戦闘中で扉は破城鎚で壊されていた。
「よーし、美味しい食べ物食べるぞー!」
「おいおい、俺達は食べに王城まで来ている訳じゃないぞ。」
「冗談ですよ!冗談。」
「いや、顔がマジだったぞ。」
王城の門をくぐるとまた長い道が待っている。
距離にして一キロメートルぐらいだろうか。
今の鈴にはそんな距離でも長く感じてしまう。
『食べ物…おいしい食べ物…。』
“やっぱり食べ物なのね。”
イルミすとアームは鈴から漂ってくるオーラに気づいていた。
「なぁアーム…。」
「ああ。言わなくてもわかっている。」
「やはり気づいていたか。鈴から食欲にまみれたオーラがあふれ出ている。」
「ああ。これだけ出ていればいやでも気づく。」
鈴の考えていることはバレバレであった。
やがて城の門前まで到着すると再びイルミスがギルドカードと招待状を見せた。
「たしかに。話は通っている。開門!」
門は外の門よりも強化されており開くのも遅い。
内側では兵士ががんばっていることだろう。
「それでは失礼する。」
イルミス達が門を通ると門を動かしていた兵士たちが門を再び閉め始めた。
開けるときは縄を取っ手が出ている木に巻きつけていたが、閉めるときは門を直接押しているのであった。
「ほらほら!押せ!」
「毎度…思うがこの門…重過ぎ…!」
「文句を言うな!飯減らすぞ!」
一方外にいる兵士は…。
「なんだかいきなりおなかが空いてきたな。」
鈴のオーラが感染していたのであった。
王城内部に入ったイルミス達はまず客間に通された。
「しばらくお待ちください。」
そういうと兵士は部屋の外へと出て行った。
鈴は興味本位に外を覗いてみたら扉の横で立っている兵士と目があった。
「あ…どうも。」
「部屋の外には出ないようにお願いします。」
「…はい。」
鈴はそっと扉を閉めた。
「目があった…。」
「そりゃあ監視もいるだろう。」
「ですよね。」
「失礼いたします!」
「入れ。」
「イルミスパーティ計六名が王城に入りました。」
「よろしい。ここに連れてこい。」
「ハッ!」
そういうと兵士は扉を開け外へと出て行く。
向かうのはイルミス達がいる客間へと向かう。
一方客間では城の使用人が水を運んできていた。
「ちょうど喉乾いてたんだ。ありがとうございます。」
「いえ、おかわりが必要でしたらお申し付けください。」
皆が水を一杯飲み終えると鈴が水のおかわりを頼んだ。
コップに水が注がれ、それを鈴が一気に飲み干す。
「やっぱり水だよねー。冷えてたらもっと良かったけど。ねえ、アイリス~魔法で氷って作れないの?」
「無理ね。どうやってそこまで温度を下げるのよ。」
「そっかー。ん~?風属性で上空の冷たい冷気を引っ張ってきて水にぶつければ凍りそうな気がする…。」
「何?空の上は冷たいの?」
「そうだよ。確か飛行機が航行するときの周囲温度はマイナス六十度だったような?」
「マイナス六十度!?そんなに冷たいのね…もしかしたらできるかもしれないわね。ちょっと考えておくわ。」
鈴は周囲温度と言っているが、飛行機の周囲温度は圧縮された空気の熱により三十度ばかり上がっているためせいぜいマイナス三十度だ。
それにより飛行機の燃料が凍結せずエンジンが稼働することができる。
飛行機は通常一万メートル上空を飛ぶことも書いておく。
そこまで話していると扉がノックされ、兵士が入ってきた。
「イルミス様一同王女様の元へご案内致します。」
「わかった。皆行くぞ。」
「水ありがとうございました!」
イルミス達はアゼリアが待つ王の部屋へと移動する。
鈴はやけに上機嫌だ。
中央階段を上がり、真新しい扉をくぐる。
豪華に装飾されているがとても頑丈であると伺える。
城の内部構造が多少変更されておりこの扉を通らないと王の元へ行けないようになったようだ。
「武器をこちらに。」
「分かった。皆武器を。」
各自が武器を差し出し兵士に預ける。
鈴は非常時以外は手ぶらの為預ける必要もない。
「よし。」
武器の確認をした兵士は一際大きい扉をノックした。
「入れ。」
中から男の声が聞こえてきた。
おそらく宰相 なのだろう。
扉が開け放たれイルミス達は中へ入っていく。
「よく来た。」
「披露宴の招待心から感謝申し上げます。」
この部屋にはイルミス達六人とアゼリア王女、宰相 、近衛騎士団、パーラ、エルガー、一般兵士が現在いる。
イルミス達のことを知らないのは一般兵士だけだ。
「堅苦しいのは良い。この場には幸い身内しかいない。フランクでいこう。」
宰相がアゼリアに耳打ちをする。
「王女様!さすがにそれはだめですぞ!どこでだれが聴いているかわからないのですから!」
「む、そ、そうか。それは困るな。」
宰相はほっと胸をなで下ろしたのであった。
「…やはりフランクで話すのは無しだ。エルガー!」
「はっ!」
エルガーは背中にかけていた魔導ライフルを手に持ち、アゼリアの元へ持っていく。
「ごくろう。今回貴殿たちを呼んだのは他でもないこの魔導ライフルのお披露目だ。同盟国からも兵士長や宰相が来る予定になっている。」
「魔導ライフルの事なら鈴の方がくわしいと思うので鈴に変わります。」
そういうとイルミスは半歩後ろに下がり、鈴が前に出た。
「鈴よ。この魔導ライフルはな、以前より改良が施されているんだ。見てはくれないか?」
「はい。」
鈴はアゼリアの元まで行くと魔導ライフルを受け取り構造を見直した。
「以前よりスマートになっていますね。マガジンもいい感じに弾を送り出せるようになっていますし、ライフリングも施されている。マズルブレーキがない分反動が少し大きそう。木の素材が増えてるから軽量化もできて兵士の負担も減ってよさそう。」
鈴は魔導ライフルを隅から隅まで見回していた。
ここで注意だが、マガジンを抜いたからといって銃口を除いてはいけないのである。
初弾が入っている可能性があるため危険なのだ。
あたらしい魔導ライフルは確実に鈴の出したM4に形状が似てきており、ライフリング、アイアンサイトも再現されていた。
これにより命中精度が向上するだろう。
あれ…日にちあってたっけ?




