玉藻のお守り
「あれ?なにしてたんだっけ?」
「何ってアシッドレックスを倒してたんだよ。」
「アシッドレックス?」
「あれ?アシッドレックス?」
「わからない。」
「わからない。ところで貴方は誰?」
「何言ってるのリン。私は…誰?」
「私達は誰?」
「しょうが無いのぅ。妾が助けてやる。」
二人しか居ないくらい空間にそう声が響いた。
「ククク。ハハハハハ!シュバルツを追い詰めた小娘を手に入れたぞ!さあ、彼奴等を殺―!?」
その時スズのポケットから光が漏れてきた。
「何だそれは。」
ローブの男がそれにさわろうとした瞬間手が弾かれた。
「シールド!?いや違う。これは…悪意反射結界?」
「よく知ってるのぅ。」
飛鳥がローブ男の隙を着いて懐まで間合いを詰めた。
そのまま刀を振るうが、相手も剣をギリギリで抜いた為弾かれてしまった。
「くっ。邪魔をするな!」
「鈴殿は渡さぬ。それ以上近づくなら力尽くで排除するぞ。」
ポケットから漏れていた光は次第に大きくなり鈴を包み込んだ。
その瞬間、鈴から黒い魔力が飛び出し、ローブの男の中へ吸い込まれていった。
「!?魔法が!」
それと同時に鈴を包んでいた光りは徐々に収まり消えていった。
「これは予想外だな…。こい!」
ローブの男は腕を上げると、空から滑空してきた魔物の足を掴むとそのまま飛び去っていってしまった。
「…これで助かったかのぅ。」
「飛鳥!大丈夫か?」
「大丈夫じゃ。それより鈴殿を見てあげて欲しい。」
「そうだな。アイリス!」
「今行くわ!」
倒れこんでいる鈴をアイリスが念入りに見ていく。
そしてポケットに手を入れると何かを掴んだ。
「大丈夫。支配魔法は完全に抜けてる。たぶんこれね。」
そう言うとアイリスが手に持っていたものを見せた。
「これはなんだ?」
「お守りじゃ。妾達の国では一般的なものじゃ。しかし、それほど強力なお守りは見たことも聞いたこともないのじゃ。」
「中からとても強い魔力を感じる。これを人間が作った?冗談でしょ?」
「あ、そうじゃ。あの時悪意反射結界が発動したのじゃ。覚えておるか?妾の話を。」
「ええ。玉藻と悪意反射結界の話しね。」
「そうじゃ。そして鈴殿は玉藻とあったと言っていた。」
「もしかして本当だったの?」
「それ以外考えられぬ。おそらくこの中には玉藻の尾の毛が何本か入っておるのじゃろう。それに悪意反射結界を魔力ごと詰め込んでいるのじゃな。」
「そうね。それで支配魔法を悪意反射結界で跳ね返したのね。」
「アイリス殿も使っておるが、魔物由来の素材はその魔物の位によってもつ魔力が違うのじゃ。もし玉藻の毛で作ったお守り。こちらでは魔道具じゃな。そんなものがあったら鈴殿に加えられる精神的な悪意はすべて跳ね返すじゃろうな。いわば闇魔法に対する完全抵抗じゃな。」
「とりあえずだな。向こうもこっち見てるし、鈴は馬車の中に運んでおこう。この状態で寝かせてるわけにはいかないからな。」
イルミスはそう言うと鈴を抱き上げ馬車へ運んでいった。
「おねえちゃんどうしたの!」
「少し気絶しているだけだから安心しな。」
「よかった!」
「それにしても馬車狭いな。鈴を寝かせるスペースを取ったら座れなくなる。」
「私にいい考えがある。」
「おい、アームもう少しそっちよれ。」
「これ以上は寄れないぞ!」
「イルミスもう少しそっち行け!」
「無理だ。」
「すまぬのう。イルミス殿。」
「いや大丈夫だ。」
馬車の片席にアラス、アーム、イルミス、飛鳥、さらに飛鳥の膝の上に小さな男の子が乗っている。
反対側には鈴、鈴の頭を膝枕しているアイリス、男の子の母親が座っている。
鈴が二人分取ってしまっているため片方がキツキツなのだ。
そんな状態のまま馬車は再び動き出し、アラスが危うく落ちそうになっていた。
「鈴はまだ目を覚まさないのか。」
「精神を侵食されたのよ。そう起きるわけがないわ。予想だけど、一日ほどは起きないわ。」
「そうか。」
「それにしてもあのローブ男は何者じゃ?」
「彼奴はおそらく闇ギルドの一人だろう。前しつこく接してきた奴のローブに似ていたからな。」
「ルーツ国の一件で目を着けられたのかのぅ。」
「そうだな。」
「鈴ちゃん大丈夫かなぁ…。」
「こら!覗きこむフリしてスカートの中除くな!」
「減るものじゃないし、ちょっとだけ!」
「鈴が起きたらアラスの愚行を話しておくわ。去勢されないようにね。」
「ハハハ。鈴ちゃんはこころが広い女の子だぜ?許されるさー。」
「あんたね…。」
「っと言うことが外で起きておるようじゃが…。」
「後で…去勢ね。」
「リン…去勢ってなに?」
「スズはまだ…知らなくていいこと。」
「まぁ、話を戻すが、今回のような精神系の悪意は妾が渡したお守りで弾く故大丈夫じゃ。」
「玉藻びっくり…。」
「さすがに千年以上生きてる魔物ね。」
「まぁ、今喋ってるのは分霊みたいなものじゃ。魔力と素材で形成されておる。とりあえず、お主達は回復に専念するのじゃ。精神を侵食されたのじゃ、無理はしないほうが良い。」
「そうさせてもらう…よ。」
「うん。」
「それがよい。暇そうじゃから話をしよう。生物とは命と精神と体で構成されておる。命と精神は体と強い関係で結びついておる。それ故にどれか一つでも調子が悪くなるとすべてのバランスが崩れるのじゃ。たとえば今お主たちが目を覚ませば、精神の状態が体へフィードバックされる。この空間でも碌に喋れないのに目を覚ましたらどうなるかのう。」
「確実に…ヤバいね。」
「じゃろ?大体1日はここで休んでいくといい。」
「そうさせてもらう。」
馬車はその後襲われることなく、街へ到着した。
御者が太陽の位置から大体の時間を判断する。
「大体一時間の遅れか。」
「あのアシッドレックスは何だったんだろうな。」
「そうだな。でもまぁお客さんに怪我がなくてよかったな。」
「戦闘に参加したお客さんが一人ダウンしてるだろ。」
「あー。そうだった。大丈夫かなぁ。」
「まぁ冒険者だし一応は大丈夫じゃないか?」
「そうだよな。(…あとで請求されないかひやひやだぜ…。)」
そんな会話をしていた御者達だった。
「どうだ?鈴は。」
「まだ駄目ね。」
「そうか。」
「あの気持ちが悪い奴がいなくなったら今度は支配魔法持ちのが来るとか俺たち呪われてね?」
「たしかあの時言っていたな。私があなた達についていないと私以外の者があなた達を襲いに来ると。」
「まじで…マジ勘弁。」
「先ほどの奴は鈴殿を狙っていたようじゃな。」
「おそらく戦闘力に興味があるんだろうな。」
「鈴の能力は本気を出せば一人で一国を相手にできそうじゃ。」
「そうね。鈴の全力とか見たことないし、さらに強い武器もあるって前言ってたしね。」
「そうなのか。」
「ええ。それにこの間の海賊でも変な箱みたいのを操作していたら突然船が爆発したわ。あれはおそらく空から攻撃したのでしょうね。」
「鈴ちゃんすげー。」
「まぁ、今後はこんなことにはならないんだろう?」
「そうね。鈴がこのお守りを手放さない限りは支配魔法、精神系の魔法は弾かれるわ。」
「よし、なら俺たちは買い物いってくる。どうせ起きたら腹減ったって言いそうだからな。」
「ああ、そうだな。イルミス俺もついていこう。」
「アラスとアイリス、飛鳥は待っててくれ。」
「行きたくても金がないぜ…。」
「了解じゃ。」
「わかったわ。」
イルミスとアームが馬車を降りると露店へと向かっていった。
「だはーきつかった。」
「お尻痛くないかのう?」
「だいじょうぶだよ!」
「すみません。うちの子が。」
「いえ。いいんです。元はと言えば内の鈴が寝ているせいですから。」
「いえいえ!私達戦えない人のために戦ってくれた人に何も言えませんよ。」
「私達は勝手に戦っただけですがね。」
「おねーちゃんだいじょうぶかな?」
「大丈夫じゃ。そのうち目を覚ますじゃろう。」
その後イルミス達が食料を調達して帰ってきた。
六人分の食料と居合わせた母子の二人分、計八個の食料を買ってきたのだ。
最初はとんでもないと言って受け取らなかったが、子供がおいしく食べているのをみて母親も受け取り七人で食べていた。
ちなみに食べているのは焼き鳥である。
鈴には焼き鳥を二本と串カツを三本買ってある。
一時間の休憩の後、馬車は予定より一時間遅く街を出発した。
「次はどこで止まるんだ?」
「次はベル村で止まります。今日はそこで一泊することになります。」
「そうか。ありがとう。」
「いえ。どういたしまして。」
「だそうだ。アラスの宿泊費は建て替えてやる。」
「イルミス様ありがとうございます。」
「ほかは各自用意しておくように。」
「鈴は…それまでに目を覚ますか。」
「ええ。おそらくは。」
「起きなかったら魔法の言葉を言うのじゃ。」
「魔法の言葉?」
アームは何の事だかわかっていないようだ。
それ以前に男性陣はわかっていない。
「それはのぅ……じゃ。」
「なるほど…。」
男性陣は飛鳥からの言葉を聞いて鈴を見て納得した。
「(ちっぱいか…なかなかひどい言葉を言うな…。)」
「(女の子は胸だけじゃない!揉めば大きくなるし!うおおおお!)」
「(最近の女性は黒いんだな。)」
一人頭がお花畑の人物が居たが誰だかは言わないでおこう。
きっと言わずもわかるはずだ。
それから数時間後日が傾きだし、夕焼けになってきた。
「そろそろ到着しますよ。」
「鈴起きないな。」
「しょうがない魔法の言葉を使うかのぅ。アイリス頼んだのじゃ。」
「え?私が言うの?」
「一番近くにいるからのぅ。妾はこの子がおるから移動できぬ。」
そういうと、飛鳥は膝の上に乗っている男の子を撫でる。
アイリスはあきらめの表情で鈴の耳の近くでささやいた。
「……ちっぱい。」
「くわ!」
「スズ、どうしたの?」
「どうしたのじゃ?」
「今…ちっぱいって言われた!今すぐ出ていく!」
「あ!これ!無理をしてはいかんぞ!」
玉藻の分霊の言葉も聞かず、スズは意識を覚醒してしまった。
ゴチン。
鈴の頭とアイリスの頭が激突し、両者頭を押さえて悶えていた。
「痛いわね…<癒しよ。ヒール。>」
アイリスは自分の頭に治癒魔法をかける。
鈴は痛みに耐えながら、体を起こす。
「ひま!ひっぱいっていひゃのたれ!あへ?うまきゅしゃべへない。」
「まだ精神にダメージが残ってるのね。そのうち治るわよ。」
「ひゃまもの言うとおりひゃった。」
「鈴、軽い軽食でも食べとけ。」
そういわれるとイルミスから焼き鳥と串カツを受け取る。
「たべもにょ!いひゃひゃきましゅ!」
鈴は焼き鳥から頬張り始めた。
「ん~!おいひい!このたれがひゃんともいえにゃい。」
「食べたままで良いから私の治癒魔法を受けときなさい。」
「はーい。」
鈴は二本目の焼き鳥を食べ始めるとアイリスが鈴の頭に治癒魔法をかけ始めた。
「たぶん精神のダメージもある程度回復してくれると思うのだけど。」
「あひゃまがあたたかい。」
「食べるか喋るかどちらかにしなさい。」
「………。」
「食べるのね。」
鈴は食べる方を優先し、喋らなくなった。
アイリスは食い意地が張ってる鈴に治癒魔法を掛けつつ話しかける。
「もう少しで村につくから宿代出してね。」
鈴は串かつに手を伸ばしながら首を縦に振った。
ここで鈴は目線に気がついた。
飛鳥が膝に乗せている男の子がこちらを見ている。
正確には串かつの方だ。
鈴は串かつを一本男の子に差し出した。
「ひゃい。」
「え!いいの?」
「うん。」
「やったー!ありがとう!おねえちゃん!」
「あらまぁ。すみません。度々ありがとうございます。」
「どひゅひたたまして。」
そう言うと鈴は再び食べ始めた。
串かつは肉野菜肉となっている。
とても美味しそうだ。
「………。」
「美味しそうな顔して食べてるわね。」
「でひょ~。」
「いや、鈴じゃなくてあの男の子よ。」
「しょんなー。」
「でも俺は鈴ちゃんのその表情好きだぜ!」
「………。」
「あれ?俺の扱いひどくね?」
「鈴は今肉を食べてるから無反応なのよ。」
「俺より肉か…。」
その後魔物や盗賊の襲撃もなく、夕日が沈む少し前にベル村に到着した。
「さて宿取るぞ。各自宿泊費を出してくれ。」
イルミスがそう言うと皆が宿泊費を出していく。
この村の宿の一人あたりの値段は一銀五百銅貨だ。
九銀貨を受け取るとイルミスが部屋を取る。
「これが鍵だ。寝坊助組は別々の部屋にしたからな。」
「失礼じゃな。妾だって早く起きるのじゃ。」
「そのセリフ明日の朝まで覚えておけよ…。とりあえず部屋割りはこの間と同じだ。」
「またアームと一緒かよ~。女の子と寝たいぜ…。」
「そんなこと言ってるから寝れないんだ。」
「とりあへず、へひゃにぃいきょう。」
そう言うとイルミスから鍵を貰い歩き始めた。
が、途中ですてんっと転んだ。
「うへえ。」
「ほらまだ体も上手く動かないんだから私の肩つかみなさい。」
「はひ。」
そう言うと鈴とアイリスは部屋の中へ入っていたのであった。
玉藻から貰ったお守りが役に立ちました。
これで鈴には精神系の攻撃は効きませんね。
これからもオリジナルの銃火器や魔法を募集していきます。
何か有りましたらご連絡ください。




