玉藻
飛鳥は町中を進み、商店街と思われる場所にやって来た。
商店街は地球で言う大型ショッピングモールなど有りもしないため大変繁盛している。
そのため人が結構いる。
飛鳥はその多数の店の中から一つの店に入っていく。
「こんにちわじゃー。」
「おや?その特徴的なしゃべり方は彰さんところの。」
「久しぶりじゃ。元気にやってるかのぅ?」
「やってるやってる。飛鳥ちゃんも元気だった?」
「うむ。元気じゃ!今回は久しぶりに戻ってきたから仲間と観光しておるのじゃ。」
「へえー。観光か。うんでうんで?今日は何しに来たの?まあ見ただけでわかるけど。」
「まあ、油揚げを買いに来たのじゃ。この妖狐が仲間に懐いておってのぅ。」
「それできたのね。何枚欲しい?」
「三枚ぐらいでいいんじゃないかのぅ。」
飛鳥がそう言うと妖狐は意味がわかっているかのように頷く。
「よし、三枚じゃ。」
「はいよー。四百五十銅貨ね」
そう言われると鈴はお金を取り出し、店主に手渡した。
「これ油揚げね。」
「ありがとうございますー。」
そう言うと鈴は油揚げを持って外へと出て行った。
「妖狐~油揚げだよー。」
「コーン!」
妖狐は鈴から油揚げを貰い食べ始めた。
見るからに美味しそうに食べている。
鈴はそんな元気に食べる妖狐を撫でる。
「わさわさ~かわいいなぁ。」
鈴が油揚げを食べている妖狐を撫でていると、店の中から三人が出てきた。
「どうじゃ?たべてるかのう?」
「うん。元気に食べてるよ~。」
「本当に平和な国ね。この妖狐が魔物だなんて思えないわ。」
「アルニカみたいにどこもが平和な国だったら冒険者は全員無職になってしまうな。」
「二枚目食べる?」
「コン!」
「どうぞ~。」
妖狐は二枚目の油揚げを元気よく食べ始める。
時折前を通る人達が妖狐を見ている。
「ままー。妖狐がいるよー。」
「本当ね。撫でたい?」
「うん!」
「それじゃ、あそこに居るお姉さん達に聞いてみましょ。」
「うん!」
「すみません。その妖狐撫でさせてもらってもいいですか?」
「いいですよ。」
「わーい!」
子供は妖狐の体を撫で始めた。
妖狐は嫌がること無くそれを受け入れる。
本当に人慣れしているようだ。
「まま!柔らかいし、もふもふしてるよ!」
「よかったわね。妖狐は優しいから傷つけちゃダメよ。」
「はーい!」
「それじゃ行こうか。」
「うん!ばいばい妖狐!」
「コーン。」
「ほーれほれ、三枚目だよーかわいいなぁ。」
「鈴殿は妖狐にべたぼれじゃな。」
「ふふふ。お前たちに教えてあげよう!この世にはたった一つだけ正義がある!それはかわいいだ!かわいいは正義だ!」
「…ああ、そ、そうだな。」
「まぁ、ええ。」
「確かにかわいいは正義じゃな。」
「あ、飛鳥もわかる?かわいいは正義だよね!」
「コン!」
「あ、食べ終わった?おいしかった?」
妖狐は首を縦に振ると鈴の手に前足をちょこんと乗せると去って行った。
「あーん。行っちゃったー。」
「しかし、鈴殿。今の妖狐の動作は意味のあるものじゃ。」
「んん?あの前足をちょこんと乗せたやつ?」
「そうじゃ。昔からの言い伝えでのぅ、妖狐にそれをされたものは近いうちに良い事が起きるといわれておるのじゃ。」
「ほほー!なんだろう良い事って。」
「それはわからぬなぁ。好きな人と結ばれたり、家の前にお金が置いてあったり、病が治ったりなど聞いたことはあるのぅ。」
「へえ~。私もいいことあるかなぁ?」
「きっとあるのじゃよ…たぶん。」
その後昼食を取り、一旦飛鳥の家に戻った四人は縁側でイルミスとアラスの修行や門下生たちを見ていた。
途中アームが修行に参加し、女性陣は縁側でそれを見ている。
そこへ榛名が三人分のお茶を持ってやってきた。
「皆、お茶はいかが?」
「あ、春名さんありがとうございます。お茶もらいます~。」
「貰います。ありがとうございます。この国のお茶は色に対しておいしいのよね。」
「貰うのじゃ。やはり紅茶より緑茶よのぅ。」
「それわかる。」
「ふふ。おかわりならあるからたくさん飲んでもいいのよ。」
「ははは…さすがにお茶はたくさん飲めないです。」
「あの食べっぷりでよく言うのぅ。」
「あれはあれ!これはこれ!」
「ならイルミス殿達に茶を持っていくかのぅ。アーム殿はともかく、イルミス殿とアラス殿は飲み物を口にしていないはずじゃ。」
「あら。そうね。イルミスさん達にお茶用意しなくちゃね。」
そういうと一旦厨房へ戻っていく榛名。
飛鳥はイルミス達を呼びに行く。
「ふぁぁぁ。縁側で日光浴…眠くなる…。」
「寝るなら部屋で寝なさい。」
「そうするー。」
「そうするって…鈴…。」
「私はお眠です!これは何人たりとも止めることは出来ぬ!」
"はいはい。寝ましょうね。“
「少し早いけどおやすみなさーい!」
「いや、まだ昼だけど…。」
鈴は布団にダイブするとそのまま毛布に入り込み昼寝を始めてしまった。
「お茶持ってきましたよ。」
「榛名さんありがとうございます。イルミス達はもう少しで来ると思うのでお待ちください。」
「はーい。」
「飛鳥ー!」
「今行くのじゃー!」
飛鳥はイルミス達を連れてくるとお茶を一人づつ渡していく。
「ふぅ。お茶ありがとうございます。」
「榛名さん…俺と一緒にお茶しませんか?」
「まったく…お茶ありがとうございます。」
「いえいえ、いいのよ。アラスさん、申し訳ないけど遠慮させていただきますね。」
「そんなー。」
「当たり前だろ。…ん?鈴は何処にいったんだ?」
「寝たわ。」
「昼寝か…。」
「もしかして昨日の夜のが疲れてるのかしら?」
「一体昨日の夜何が有ったんだ。」
「さぁ。」
「ふふふ。ちょっとしたことがあったんです。」
「(笑顔が怖い。)」
一同が心のなかでそう思ったのだった。
そして時間は進み夕方。
鈴はまだ寝ていた。
そこにふすまをゆっくり開けて入ってくる影があった。
その影は鈴の頬を突くが鈴はそれでも起きない。
困り果てた影は鈴の上に乗るとその場でジャンプをする。
「ふにゃああ、暴れちゃ駄目ぇ…。」
それでも起きない鈴にその影は少し考え、鈴の頭の方へ回った。
そして耳元まで近づくと何かの妖術を発動させる。
すると鈴の寝顔が徐々に悪くなっていく。
「うぁ。来るなぁ~寿司がお刺身が襲ってくるぅ。」
さすがにこの寝言にはその影もドン引きである。
「うっ!ゆ、夢か。」
「コン。」
「うん?あれ妖狐じゃん。どうしたの?」
影の正体は妖狐だった。
妖狐は鈴の袖を噛むと引っ張る動作をする。
いわゆる着いて来いと言う意味だ。
「?どこいくの?」
鈴は玄関まで行き、ブーツを履き外にでる。
そうすると妖狐が門前で待っているのが見えた。
「ちょっとまってー。」
妖狐はゆっくりと歩き出す。
鈴はそれにすぐに追いつき妖狐の隣を歩く。
妖狐は山へと続く道へと進んでいく。
「あれ?こっち山道だよ?」
「コン!」
「こっちで合ってるのね。それにしても家出るとき一声掛けてくれば良かったなぁ…。」
「コンコン!」
「ああ、ごめんごめん。今行くよ~。」
鈴と妖狐はそのまま山道を登っていく。
その先にあるのはこの国の城である。
「お?あそこに見えるのはお城か。そこに向かってるの?」
鈴が妖狐にそう聞くと妖狐は頷く。
「妖狐とお城…。どんな関係があるのかなぁ?」
"実はこの妖狐が国王のペットとか。“
『いやいや、それはないでしょ。』
"ですよねー。“
「ん~?あ、もしかして昼間のお礼とか!」
それに頷く妖狐。
「でも何故にお城?」
『やっぱり国王様のペット?』
"んー。ここまで来るとその可能性も…。“
スズとリンがそんなことを考えながら妖狐に着いて行くと、城の門前までやって来た。
そこには二人の兵士が立っているが、妖狐が目配せをすると、扉を開いたのだった。
『今の見た?』
"やっぱり国王のペットだね。うん。“
城に入ると、思ったより人が少なく不自然な感じが鈴には感じられた。
それはルーツ国の城に居たからだ。
『人少なくない?』
"それ以前に居ない。“
『そうだね。なんでだろう?あ!分かった!玉藻が守ってくれるから警備とか使用人とか少なくて済むんだね!』
"まぁ、理屈ではそうだけど。“
『あ!妖狐がいるよ!』
"城の中に妖狐?“
『え?うん。飼ってるんじゃないかな?』
"いや、妖狐は天狐の眷属。“
『そっかー。じゃぁなんでお城の中にいるんだろう。』
"さぁ。“
リンとスズはそんな話をしていると最上階に到達した。
妖狐はふすまを少し開けると中に入っていってしまった。
鈴はその開いたふすまを開けると中に入る。
そこには渋い男の人が立っていた。
「ようこそ参った。」
「あの、もしかして、もしかしなくても…国王様ですか?」
「そうだ。」
「あわわわ、きょ、今日は大変お日柄もよく!」
"もう夜だよ。“
『はわ!』
「くくく。面白いやつだ。そういえばお主は玉藻に会いたがっているそうだな。妖狐から聞いたぞ。」
「は、はひ。会えたら是非あってみたいなーって興味が有りまして。」
"なんか言葉がおかしいな。“
「それにしてもお主は面白そうだ。」
そう言うと国王が光り、暗い中であった為鈴の視力が一瞬奪われた。
「うわ!」
視力が戻り国王を見た鈴は驚いた。
渋い男の国王がなんと尻尾が九本もあり、狐耳が生えている幼女になっていたのだ。
「くくく。お主からは面白い力も感じられる。今まで感じたことのない力じゃ。」
そう言うと、指を鳴らし四隅に置かれた灯籠に明かりが灯った。
「も、もしかして…玉藻さん?」
「そうじゃよ。妾の名前は玉藻。お主達が言う魔物というものじゃ。ついでに言うと、この国を作ったのも妾じゃ。」
『これが噂に聞くロリババアなのかー!』
"…悪意があって言っていなくて良かった。てか、それ本人に言ったら殺されるよ。“
『わかってるって!のじゃロリ娘とでも思っておくよ!それよりも…。』
「玉藻さん…!」
「なんじゃ?」
「その尻尾……もふもふさせてください!」
「なんじゃ、そんなことか。良かろう。ほれほれ。」
「もふもふだぁ。」
鈴は玉藻が尻尾を向けたのでそれに埋もれるようにモフった。
「柔らかいし、手触りも最高だし何も言うことなしですなぁ。」
「そうじゃろ。尻尾は妾の自慢じゃ。」
「そういえば玉藻さんってなんで言葉喋れるんですか?」
「そうじゃな…あれは九百年程前のことかのぅ。この島に人が住み着いてのぅ、興味半分に言葉を覚えてみたのじゃ。人を化かすのは得意で人間の生活に紛れ込んでみたりしたのじゃよ。」
「すっごい長生きですね。」
「妾はまだまだ生きるぞ。して七百年ぐらい前に人間をまとめ国を作ったのじゃ。街の監視は妾の眷属の妖狐にやらせておる。人里ではすっかり馴染み、可愛がられておる。」
「そうですね。街の人達は妖狐にやさしいですね。」
「そして今日この妖狐から連絡が入ってのぅ。外から来た客に可愛がられ、油揚げを三枚も貰ったと聞いてのぅ。さすがの妾も外の様子がわからぬからこうして縁があったお主を呼んでみたのじゃ。」
「なるほど…。」
「して…外は面白いことになっておるのぅ。お主何者じゃ?お主からは未知の力を感じる。」
「もしかして加護のことですか?」
「誰の加護じゃ?」
「この世界の神?」
「そうか。やはり神はおったか。妾は神は居ると思い何度か世界に干渉してみたが一向に姿を見せなかったからのぅ。で、どんな加護じゃ?」
「銃火器の創造と身体能力と翻訳とか色々です。」
「神はずいぶんと人の子に加護を与えたな。」
「確か交換留学生みたいな企画で地球から来ました。」
「地球…異世界か。確かに最近世界に干渉があったのぅ。」
「玉藻さん飲み込みが早いですね。」
「くくく。伊達に天狐はやっておらぬよ。……いつまで尻尾を撫でているのじゃ?」
「はっ!つい夢中になってしまいました。」
「そんなに妾の尻尾が魅力的かの?」
「そりゃあもちろん!」
「くくく。ではお主にこれをやろう。」
鈴は玉藻から一つのお守りを受け取った。
「これは?妾の尻尾の一尾ずつから取った毛と妖術…魔法じゃな。魔法を込めた物が入っておる。ある程度の悪意なら跳ね返せるぞ。」
「おおお!ありがとうございます!大切にしますね。」
「それは嬉しいのぅ。どれ、食事時に呼んでしまって悪かったのぅ。家の方には妖狐に手紙を持たせて知らせてある。ここで夕飯を食べていくが良い。」
「本当ですか!やったー!」
「その時に色々と外の様子を教えてほしいのじゃ」
「わかりました!」
「では夕飯を持ってこさせよう。」
そう言うと先ほど道案内してくれた妖狐が部屋から出て行った。
「そういえば使用人とか少ないですけど、もしかして?」
「この城に居る人型は皆妖狐が化けておる。必要に応じて家事、戦闘を人間用に教えこんでおる。」
「ああ、だから門の所が顔パスだったんだ。」
その後玉藻との夕食会と外の様子を伝えながら存分に楽しんだ。
玉藻は終始酒に手をつけていたが、酔っていないようだ。
さすが魔物といえるのだろうか。
鈴は飲むなと言われていたので酒は飲んではいない。
玉藻から催促されたがやんわりと断っていたのである。
「む。もうこんな時間か。そろそろお開きにするかのぅ。今日は有意義な時間であったぞ。」
「それはありがとうございます。」
「どれ、妾が家まで送ってやろう。」
「え、自分で帰れますよ!」
「心配するな。一瞬じゃよ。ほれ靴を持つが良い。」
「はぁ。」
鈴は言われたとおり靴を持つと玉藻の元へ戻ってきた。
「妾の編み出したエレメントで送り届けよう。家の玄関を意識するのじゃ。目を瞑り正確にじゃ。」
「(飛鳥の家の玄関…。)」
「ではさらばじゃ。<時空よ。その壁を破りて彼の者を転送せよ。テレポート。>」
一瞬の浮遊感が鈴を襲い、次の瞬間には鈴は飛鳥の家の玄関に立っていた。
「え?え?ここって飛鳥の家の玄関だよね?あれ?」
"確かに飛鳥の家だよ。とりあえず靴置きなよ。“
『そ、そうだね。靴おいてっと…。あ、榛名さん達に帰ってきたこと言わないとね。』
ロリババアです。
玉藻が語ったとおり言葉は人間から習いました。
そして国を作ったのも玉藻です。
ですから国が荒らされることを一番嫌います。
鈴に渡したお守りは島に張り巡らされている悪意遮断結界と同じものが込められています。
玉藻の人生?経験から獲得した時空属性のテレポートは人間では使用できません。
人は生まれつきエレメント、属性ですね。それに縛られてしまうため新たに属性を持つことが出来ません。




