良薬口に苦し
「ふぅ。いい湯だったわね。」
「そうじゃな。久しぶりにゆっくり浸かったのぅ。」
「なぜ…!何故!世界はこんなにも残酷なんだ…!」
「鈴、毎回お風呂入ると言ってない?」
「そうなのかえ?」
「そうなのよ。」
「ふむ…揉めば大きくなるんじゃないのかのぅ。」
「な、ななななな、何を言ってるの飛鳥!」
「鈴顔真っ赤ね。」
"耐性が無いからなー。"
「どれどれ。妾が揉んでやろうぞ。」
「けけけけけ結構です!」
「ほれほれ…。」
「まったく。飛鳥の手つきがオッサンね。それに人のは揉んだくせに自分のは嫌だなんてずるいわよ。おとなしく揉まれなさい。」
「そーれ。」
「いやああああああ。あふん……。」
「あ、気絶した。」
「妾軽く揉んだだけじゃぞ。」
「まさかこういう事に耐性がないのかしらね。」
「それでもこれは…。まぁ部屋まで運ぶのじゃ。」
飛鳥が鈴を背負おうとした時鈴の目が開いた。
「のわ!」
「私がいる。」
「リンね。スズは耐性ないわけ?」
「ないね。学校ゲーム学校ゲーム…。それ以外のことはやってなかったからね。初なんだよ。」
「初ねぇ。」
「初のぅ。」
「意外でしょ。」
「まったくね。」
「てっきりそういう閨房術知ってるのかと思ってたのじゃ。」
「ぜーんぜん知らないし、興味ないよ。興味はゲームのみ。」
「ふむ…。」
「まぁ戻りましょ。」
「そうだね。」
「戻るのじゃー。」
床間に戻ってくると飛鳥が白い何かを敷き始めた。
「それは?」
「布団じゃ。アルニカにはベッドではなくこれが寝具じゃ。」
「懐かしい。私の世界にも合ったけど、私のはベッドだったな。」
「寝れるかしら。」
「大丈夫じゃ。寝れる。」
「大丈夫。そのうち寝れるよ。」
「そ、そうね。」
「それじゃ明かりを消すのじゃ。」
飛鳥は魔道具の明かりを消す。
「それじゃおやすみじゃ。」
「おやすみ。」
「おやすみね。」
ギシっと廊下の木が軋む音がする。
その音は徐々に女性陣の部屋へと向かっていく。
そしてその音の主は区切りであるふすまに手をかけた。
が、その人物が開けるより早くふすまが開いた。
「何のよう?」
「君がリン殿だな。」
「正解。一発で見抜くのは褒めてあげる。」
「今から少しいいかな?」
「いいけど、あっち系の事は遠慮ね。」
「ははは。そうじゃないさ。ただ、手合わせをしたくてな。ついてきてくれるか?」
「いいよ。」
『スズ起きて。』
"……"
『起きろちっぱいまな板。』
"……誰がちっぱいまな板じゃああああああああああ"
『おはよう。』
"おはようってまだ夜じゃん。てかなんで彰さんがいるの?"
『手合わせしたいんだって。スズがやってあげなよ。』
"え?リンのほうが剣使えるじゃん。"
『私の剣術より、サポートが働くガン=カタの方が強い。』
"なるほど…じゃ人格変わって。"
『了解。』
リンとスズの人格が入れ替わると、彰が話しかけてきた。
「…スズ殿か?」
「え?なんで分かるんですか?」
「纏っている雰囲気が違うんだ。それでわかる。」
「ほえー。」
「リン殿はピリピリとした雰囲気だが、スズ殿はおっとりしている。」
「まぁ…否定はしませんよ」
スズと彰は家から離れた場所にある広場まで進みながら話をしていた。
「ここだ。」
そう言うとどこからか刀を取り出す。
どこから出したと突っ込みたいスズであったが場の雰囲気がそれをさせなかった。
スズもベレッタを二丁創造すると戦闘態勢に入る。
「いつでも行けます。」
「掛かってきなさい。」
スズはベレッタを彰に向けると一発引き金を引いた。
しかし、銃弾は彰を貫通し何事も無かったかのように広場の木に着弾した。
"残擬だ!スズ気を付けて!"
『了解。』
「ふむ。飛び道具か。定番といえば弓だが、弓のそれとは違う。鉄のフォルムにあの速度。たしかにこれなら魔物の脅威にも対抗できるな。」
『ねぇ、思ったんだけど、いつ残擬つかったの?』
"たしかにごく自然な動作だった。これが師範の実力ってやつじゃないかな?"
『強敵になりそう。』
"あとあの刀を銃でまともに受けちゃ駄目だよ。"
『なんで?』
"斬鉄で切り捨てられる。"
『なら受け流しだね。』
「話は終わったか?」
「…よくわかりましたね。」
「では行かせてもらう。」
そう言うと一瞬にして彰が刀の間合いに入れてきた。
「っ!」
スズは振られた刀を銃の側面で流し、弾く。
そのままもう片方の手で銃を突きつけ引き金を引く。
しかし避けられる。
そして再度刀が振られた。
縦斬りの為先程より早く弾くと銃の引き金を引いた。
だがそれもまた残擬であった。
「また!」
"後ろ!"
スズは振られる前に引き金を引く。
銃弾は的確に彰の胸元をとらえたかと思ったが、銃弾が当たらないギリギリの距離で斬り捨てられた。
「うんな!?」
スズはそのまま交互に銃弾を放つが、どれも避けられ斬り捨てられてしまう。
そんなことをしていたらベレッタのスライドがオープンしてしまったが、ここで裏ワザを使用する。
銃は銃弾がなくなったらリロードをしなければいけないが、両手がふさがっているためリロードに時間が掛かる。
そこを狙われてしまったら元も子もない。
それ故にスライドがオープンした銃を消し、一瞬で同じベレッタを創造する。
「このっ!」
スズは走りながら彰へ直進し、銃弾を放つがありえない剣速で銃弾が斬り伏せられていく。
ここで片手に握っていたベレッタを彰の顔めがけて投げつけた。
彰はそれを斬り伏せようと剣を振るおうとするが銃は光となって消えてしまった。
スズはこれを狙っていたのだ。
創造した銃は消えるとき光ながら消える特性を利用し、目眩ましに使用したのだ。
スズはその隙に彰に近づき銃を突きつける。
が、引き金を引く前に銃身が見事に斬られてしまう。
すぐにもう片方の銃を突き出しながら新しいベレッタを創造する。
スズは常に両手が光っている状態になり、撃てたとしても剣で銃の斜線ずらされ的外れの方向へ飛んでいってしまう。
「らちがあかんな。」
「そうですね!」
一度両者は距離を取る。
一向に勝負がつかないからだ。
「少し上げていくぞ。」
「望むところです。」
「では参る。」
それと同時に以前飛鳥がやったように斬撃が地面を抉りながら放たれる。
スズはそれをサイドロールで躱しながら銃弾を放つ。
技を放ったばかりの彰の隙を突いたのだ。
だが、銃弾はまたもすり抜け広場の木々に着弾した。
「え?」
„覚えてる?あの庭で使った混合型と同じ。“
『なら!発動する前に撃ち込めばいい話!』
「戦闘中に話し合いか?舐められたものだ。」
「そこか!」
しかしそれも偽物であり、本物ではなかった。
彰の発動タイミングは完璧であり、しかも残った物までもが喋り、動く。
しかし、それは十秒ほどが限界であるようだ。
十秒もすると形が崩れ四散してしまう。
だが、十秒あれば次の発動までは十分な時間である。
スズは現れた瞬間から銃弾を撃ち込んでいるがすべて外れ、彰は少し嫌がらせをしていた。
「あー!本物の振りやめてくれないですか!」
「楽しくてな、ついやってしまうんだ。」
本物の振りとはわざと銃弾の射角に刀を振るっているだけである。
スズは最初やっと捉えたと内心喜んだが、次の瞬間には四散しがっかりした。
「この!」
スズは手あたり次第に残擬の偽物に向かって銃弾を撃ち込んでいく。
「どうした?やけになったのか?」
『あと少し…!』
„そうだね。“
なんどかそれを繰り返し続けた。
このまま続くかと思われた戦いは突如として転記を迎える。
「デザートイーグル!そこだ!」
スズの両手から放たれる.50AE弾が偽物とは違う場所に向けて放たれた。
「なに!」
「よし!」
マグナム弾を切り伏せていた彰だったが、連続して放たれ銃弾の最後の一発が刀の腹に当たり刀が吹き飛ばされる。
彰は刀を取りに行かずにスズの元へ瞬時に移動する。
「なっ!」
「刀がなければ何もできないと思っていたかね?」
実際その通りである。
スズは武器=刀のみと思っていたのだ。
しかし彰は素人でもわかる熟練した動き、体術で挑んできたのだ。
もちろん魔力でブーストされているため動きが速い。
「くっ!」
スズはすぐにベレッタに持ち替えるとそれに対応していくが、構えた銃は平手でずらされあらぬ方向へと放たれる。
先ほどと同じだ。
スズは跳躍しながら銃弾を放ち彰の背後を取ろうとするが、次の瞬間にはスズの顔の目の前に彰がいた。
「うんな!」
上昇から落下までの間空中格闘戦をする二人。
地面に足がついた瞬間スズは蹴りを入れたが、流され逆に体勢を崩される。
だがただではやられない。
体勢を崩しながらも銃弾を放ち隙に付け入られる事をなくす。
それに常に避けさせていれば残擬も使えず回り込まれる心配もない。
「せい!」
崩れた体勢から足を振り回しながらスズは起き上がる。
若干攻撃が薄くなってしまった為スズは残擬を使われたか不安に思っている。
「格闘強いですね。」
「当り前だろう?それにこれは残擬の時間稼ぎかね?」
「心でも読めるんです…か!」
後ろから蹴りの奇襲をくらったスズは腕二本でそれを防ぐが明らかに体格が大きい彰にとってはスズをそのまま吹き飛ばしてしまった。
蹴り飛ばされたスズはすぐに彰が居た位置を見るがそこには誰もいない。
「後ろか!」
„違う!上!“
スズはすぐに対応しようとしたが遅かった。
彰の拳がスズの肩を捉えた。
その瞬間何かが外れるような感じがスズを襲い、続いて痛みがスズを襲った。
「ああああ!」
„腕が外された!変わらせてもらうよ!“
「スズ殿はリタイアかな?それに片腕が使えない時点でもう俺の勝ちだと思うが。」
「外れたなら戻せばいい。」
リンは痛みを無視し、腕の骨を肩へと無理やり戻す。
「無痛が使えないのにまさか戻すとは、世界は広いものだな。」
「次はこっちがやらせてもらう」
リンは最高速度で彰の元へ向かうとスズがやっていたかのように腕を動かし、ガン=カタの真似をする。
しかし、運動能力ではリンの方が何十倍も強いため動きが悪くてもスズ以上の速度で攻められる。
「速いな。これなら飛鳥といい勝負になりそうだな。だが―」
「っ!」
「こちらも速度を上げていくぞ。」
「反則…みたいな…スピード!」
「まだまだ上げれるぞ?ほれほれ。」
攻撃はされることはないが、その速度を使って余裕の体勢で回避していく。
そしてベレッタが二丁とも弾切れを起こし、スライドがオープンしている。
すぐにリロードをしたいがリンは銃の知識にアクセスできないためマガジンの形状、使われている素材が分らず、矛盾を孕むマガジンが出来てしまう。
かと言ってスズに出てきてもらうわけにはいかない。
なぜなら無理やり戻した肩の痛みがあるからだ。
リンはベレッタを二丁とも消すと、素手で殴り始めた。
「もうさっきのは使わないのかい?」
「つかえないの間違い。」
「そうか!これで殺し合いにはならないな!」
「嘘つけ。この拳事態が必殺の威力を持っているくせに。」
「あ、ばれた?」
「バレバレ。」
二人は話しながらも体術だけで戦いを行っている。
だが彰の方が有利だ。
魔力でブーストされた体はすでにAランクの域を超えている。
そんな化け物がこんな小さな島国にいるのだ。
「(まぁ、私も化け物なんだけどね。)」
「このまま私が押し切ってもいいが、それでは詰まらない。そうだ!最後の一撃で勝負を決めるというのはどうだ?」
それはリンにとっては最大のチャンスだった。
「いいよ。受けてあげる。」
「よし!俺は刀を取ってくる!お前はスキルとやらで何か出せるんだろ?考えとけ!」
「(おそらく飛鳥に使ったあれが来るだろう。あれを破るには…。しかし殺してはいけない。アイギスの盾なら防げるけど神が怒りそうだからなぁ。)」
しばらく考えていると彰が戻ってきた。
「おーい戻ったぞ。まだ考えているのか?」
「いや、まてよ…この世界には魔力と言う概念がある。そして魔力を使用すれば魔法が使える。今までのアイリスから聞いた話とあそこからの知識を合わせて魔力を使用すれば魔法が使えるはず。だが、魔力ってなんだろう。生命エネルギーみたいなものか?まぁ…怒られたら怒られたでいいや。」
「決まったかね?」
「決まったよ。」
「では行くぞ!」
「魔力創造言霊詠唱開始<この世界に満ちる魔力の概念よ、わが手に集いて具現化せよ。我壊すは我にあだ名すもの。我壊さずは我にあだ名さない物。集い集いてここに発現せよ!ジャッジメント!>」
「六七ノ混合型-絶花断絶-」
彰の技とリンの創造魔法が広場の中央で激突する。
辺りは昼間のように照らし出され、技どうしの衝撃波により二人は吹き飛ばされたのであった。
「いてて。ちと魔力の概念ごと具現化させるのはやりすぎ?まぁ、魔力自体は攻撃力もないし、扱えて無限の魔力ぐらいだけど。」
煙が晴れると、彰の姿も見えてくる。
「いやぁ、まさか六七が破られるとは初めてだよ。リン殿は魔力がなかったはずだが、なぜ魔法を使えたんだい?」
「魔力と言う概念を具現化させ、そこから無限の魔力を引き出した。それだけ。」
「ぽんっとすごいことをやってのけるな…。まぁいい。手合せありがとう。楽しかったぞ。」
「こちらこそ。で、肩が痛いんだけど、どうするの?」
「おお、そうか。そうだったな。家に秘伝の痛み止めがある。それを飲むといい。さぁ家に戻ろうか。」
「了解。」
家に帰る途中スズが話しかけてきた。
"あ”ー痛い幻痛がー。リン助けてー“
『もう少し待って。』
"ホント肩に運が無いなぁ。前左肩にナイフが突き刺さったでしょ~。“
『アゼリアの時ね。逆に頭に当たらなくていいじゃない。』
"そうだけどさー。“
「リン殿とスズ殿はどちらが主人格なのだ?」
「ん?スズだよ。」
「普通人格は一人につき一つだが、なぜスズ殿には二つもある?」
「それは言えない。トラウマを抉ることになる。」
「そうか。それは申し訳ないな。」
「べつにいい。」
「さて着いたな。いいか?音を立てるなよ。」
「了解。明かりいる?」
「それは欲しいが、魔道具は持ってきていないな。」
「懐中電灯創造。」
懐中電灯は比較的簡単な構造をしているため矛盾がほぼない状態で出現させることが出来た。
「おお?なんだその筒みたいなものは。」
「これつかって。そこのスイッチ押せば明かりつくから。」
「どれ…おぉ…明るいな!さていくぞ。」
廊下を怪しく進む二人。
「しかし、なぜ静かにいくの?」
「榛名に見つかると厄介だからだよ。」
「どこが厄介なんですか?」
「それはもちろんこんな夜中にしかも客人を連れ出し、しかも怪我をさせたなんてことになれば―え?」
「あー。ご愁傷さま。」
「は、榛名!これは、いや、違うんだ!これには海より深い理由があってだな。」
「リンちゃんかな?お薬はお台所の桶に入ってるからそれを飲んでね。じゃ、貴方行きましょうか。」
「嫌だ!助けてくれリン殿!リン殿ー!」
リンは懐中電灯を消すと自分の手元に再度創造する。
「さて探すか。」
『治療は明日の朝にでもアイリスに治して貰えば?』
"そうするー。“
リンは台所に入ると、角に蓋がしてある桶があることに気がついた。
それを開けると抹茶のように緑色の液体が溜まっていた。
"う…。これは…“
『スズ覚悟してね。良薬は口に苦しって言うからね。』
リンはそばにおいてあった柄杓にある程度掬うとそれを飲み込んだ。
"うわあああ。今絶対に変わらないでね!“
『痛みが引いたら変わってあげる。』
"いじめか!“
リンは蓋を元に戻し柄杓を片付け台所をあとにした。
その後二十分ほどで痛みが引いた為スズに変わったところ、スズが口を押さえて水を求めて走りだしたのはリンだけが知っている。
ストーリーに登場させてほしい既存の銃あるいは未来的なオリジナルの武器、設定にある属性を使った魔法(詠唱込)で募集します。
貴方の考えた銃火器、魔法が登場するキャンペーン実施中。




