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異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
リール国と観光とアルニカ
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お仕置きとお刺身




「まあ!飛鳥がパーティに入ったのね!不甲斐ない子ですがよろしくお願いします。」

「こちらこそ飛鳥には大変貴重な技を教えてもらい感謝しています。」

「ほう。飛鳥教えたのか?」

「初歩中の初歩を教えたのじゃ。技は教えておらぬ。」

「お客人少しやって貰えないか?」

「わかりました。」


イルミスは魔力を循環させ始め、剣を手にとった。

以前よりも多少上達したイルミスはあまりブレもなくこなしていた。


「さすが冒険者と言ったところか。短い期間でそこまでブレをなくすか。しかし、まだまだ伸びしろはありそうだな。」

「ありがとうございます。」

「ところで…そこの少女よ。」

「?…あ、私か。倉木 (すず)時々(りん)です。」

「名前が二種類あるのか?まぁいい。鈴殿は教えを受けていない、いや、魔力が無いみたいだね。それに筋肉の付き方も素人そうとう。何か秘密があるのかな?」

「父殿。リン殿は妾の剣術をすべて受けきったのじゃ。」

「ほう?それは面白いことを聞いた。どれ私と試合を―」

「庭」

「おほん!試合はまた今度にしよう。今はゆっくりされていくが良い。なんなら門下生と一緒に稽古を受けてみないか?」

「是非。」

「俺もよろしくお願いします。」

「俺も受けるぜ。」

「ではついてくるが良い。」


そう言うと彰とイルミス達三人は部屋から出て行ってしまった。


「えーっと?」

「私はユーリ・榛名(はるな)・ステイルと申します。」

「榛名さんですね。急に押しかけてしまってすみません。」

「いえいえいいんですよ。久しぶりに飛鳥も帰ってきてくれて喜ばしいです。よろしければ出会い話でも聞かせてくれませんか?」

「いいですよ。」

「す、鈴殿―」

「飛鳥はちょっと黙っててね。」

「ぐぬぅ。」


スズは飛鳥と出会った経緯を話し始めた。


「まず出会ったのは牢屋の中ですね。私達が人攫いをしていた者を捕まえて吐かせたアジトの地下に居ましたね。」


飛鳥の顔色が悪くなっていく。

それに対して榛名はニコニコと笑っている。


「それで皆を救出して飛鳥が犯人を殺そうとしちゃったから私と戦いました。」

「それがさっきの事ね。」

「そうですね。あの時は正直能力も制限受けてたので辛うじて受けきりました。」

「ところで…飛鳥はどういった経緯で捕まっていたの?」

「鈴殿!それはいわ―」

「飛鳥。」

「…はい。」

「飛鳥は熟睡していた所を捕まって、捕まっても尚も寝ていたそうです。」

「あとで少しお話があります。」

「とほほ…。」

「少し端折ったところがありますが大雑把に言うとこんな感じです。」

「ちょっと待っててくれますか?飛鳥おいで?」

「すまぬ。少しだけ待ってて欲しいのじゃ…。」

「いってらっしゃいー」

「…こればかりはしょうが無いわね。」


ピシャっとふすまが閉まると飛鳥の絶叫が聞こえてきた。


「いぎぃ!痛い!痛いのじゃぁ!母殿、母様やめて欲しいのじゃ~!ああああぁぁぁぁぁ…」

「いったい何が…!」

「覗いてみる?」


鈴とアイリスがふすまをそっと開けるとそこには


「まだあの悪い癖が残っているのね!こうよ!」

「ひぃ!痛いのじゃあ。」


尻を叩かれていた。


鈴とアイリスはそっとふすまを閉めた。


「平和だね。」

「そうね。」

「ごめんなさいなのじゃああ!」








「よし!綺麗に片付いているな!さすが俺の弟子だ!」

「(なんだかなぁ。)」


皆が思っている気持ちだった。


「ここに三人の現役冒険者がいる!この者達は初歩だけを心得ている。この者達と戦いたい奴はいるか?」

「はい。」

「よし!それでこそ俺の弟子だ。誰と戦いたい?」

「…一番左の方で。」

「俺か。」


選ばれたのはイルミスだった。

師範から模造刀を受け取ると庭の中央へとすすむ。


「よろしくお願いします。」

「よろしくな。」

「では試合開始!」


門下生は常人以上の速度でイルミスに斬りかかるが、イルミスもまた剣を早く振るう。

斬り込まれた斬撃はいとも簡単に受け流されてしまった。


「太刀筋が正直すぎるな。」

「っ!」

「まだ訓練ではいいだろうが、実践になったらいくら技量が合っても役に立たないぞ。」

「負けません!」

「いい根性だ。こっちから行かせてもらうぞ。」




「うむ。やはり鍛錬ばかりでは実戦を積んだ物には遠く及ばないか。」

「しかし、技術的にはそちらが上です。」

「そうですな。ですがアーム殿。死線を超えねばたどり着けない境地もある。まだ俺の弟子達はそれに触れてもいない。その意味がわかるかな?」

「鍛錬では積めないもの、それは生死を掛ける戦い。冒険者は負ければ死ぬ。そういう職業ですからね。」

「うちの連中にも積ませたいのだがな。この島にはそこまで凶暴な魔物は居ないのだよ。たまに油揚げを盗みに来る玉藻くらいだ。」

「そうですか。それは難しいですね。」

「最近では餌付けされてるぐらいだ。ハハハ。」

「魔物が餌付けとは…。」

「お?倒されたな。だが諦めていないようだな…。少しカツを入れてみるか。イルミス殿!殺気でやってくれ!」

「分かりました。」


そう言われるとイルミスは先程とは雰囲気が変わった。

それは獲物を狩る者の雰囲気だ。

初めてそれに晒された門下生はゾクリと背筋に寒気が起きる。


「いくぞ!」

「っ!」


イルミスは魔力を調整しつつ、殺すつもりで剣を振るっていく。

門下生は先程とは違い、魔力が乱れ汗が流れ始めた。


「ガッ!」


イルミスの剣が門下生の腹に食い込みその体を吹き飛ばした。


「これでお前は一回死んだ。まだやるか?」

「ま、負けました。」






「うむ。あいつもこれで一つ成長したはずだ。」

「おつかれい!イルミス!お前そんなに強かったっけ?」

「これでも訓練はしているんだぞ。」

「え?嘘?」

「俺もしているぞ。」

「ええ!?俺だけしてないのかー!」

「アラス殿。うちの基礎をしている門下生に混じって修行していくか?」

「あ、いいっすか?ぜひお願いします。」

「こっちだ。」

「了解!今に見てろよー!すぐに追い抜かしてやるからなー!」

「無理だな。」

「ああ。」






その夜。


「お刺身楽しみだな~!」

「寿司と刺し身ってどこが違うのかしら。」

「お、お尻が痛いのじゃぁ…。」

「あ、醤油頼んでくるね!」

「いってらっしゃい。」


しばらくするとイルミス達男四人衆が部屋へ入ってきた。

どうやら湯上がりのようでさっぱりしている。


「あら、あとで借りていいかしら。」

「おお、いいぞ。場所は飛鳥から聞いてくれ。…どうした飛鳥?」

「おぉ…父殿…母殿のアレをくらったのじゃ。」

「お前まだ治ってないのか。」

「アレってなんですか?」

「もちろん―」

「それまでじゃ!…あいたた…」

「あぁ、なんとなく察した。」



鈴以外の全員がテーブルを囲み座ると、タイミングを測ったかのように鈴と榛名が部屋に料理もって入ってきた。


「どもどもーお料理ですよー!」

「鈴ちゃんごめんね。手伝わせちゃって。」

「いえいえ。お醤油のためですから!」


食事が乗った皿をテーブルに並べていく。


「残りの料理も持ってきますね。」

「あら、ありがと。」


鈴は厨房に戻ると綺麗に並べられた刺し身の大皿を手に持つと部屋に戻る。


「は~い!おまたせしました!」

「お、来たな。」


大皿をテーブルに置くと鈴も座布団に座る。


『お刺身~お刺身~美味しそう!』

"食べ過ぎは太るよ。"

『だーいじょうぶ!今日だけだから!』

「ご飯のおかわりあるから欲しかったら言ってくださいね。」

「はい!いただきまーす!」

『大トロ~中トロ~おお!いくらもある!』

"はいはい。"


鈴は食べ始めと同時に大トロに箸を伸ばした。

すかさず醤油につけるとご飯と一緒に掻き込む。


「ふぇぇおいしいぃ。」


鈴は両手を頬に当てながら笑みを浮かべている。

それをみて春名は笑みを浮かべる。


「まぁ、それはよかったわ!捌いたかいがあったわ!」

「久しぶりに食べる味なので余計においしいのです!」

「鈴ちゃんはアルニカの出身じゃないわよね?どこか別の国にもあるのかしら?」

「私の国は日本と言ってここと似たような場所なのです。」

「ほう。日本か、そこはどんな国なんだろうな。」

「そうですね。似たような国というのですからきっと仲良くできますね。」

「で、その国はどこにあるんだ?」

「ええっと…ものすごく遠いところです。」


しゃべりながらも鈴はもくもくと食事を続ける。

そのペースは喋りながらでも落ちない。


「ところで鈴殿は魔力がないな。日本という場所は魔力がないのか?」

『ギクリ』

"どーするの?"

『どうしようかなー。』

"適当にごまかしちゃえば?"

『そうだね。』

「魔力がない代わりに特殊なスキルがあるんですよーアハハー。」

「ほう…。」

「あ、ご飯お変わりお願いします!」

「え?鈴ちゃんはやくね?俺まだ半分も食べてないんだけど。」

「今回ばかりはアラスに同感ね。」

「いっぱい食べる子は育つわ!…はい。ご飯おかわりよ。」

「ありがとうございます。」

「俺たちも食べないと鈴に食べられてしまうな。」

「そうだな。食おう。」

「久しぶりのお刺身じゃ。妾もたべるぞー。」


その後楽しい夕食会が終わり、用意された床間まで女性三人が座っていた。


「うわー畳だーこの感触懐か…ケポ。もう食べれない…。」

「それはそうよ。ご飯を五杯もお代わりをして半分近く食べ尽くしたんだから。」

「そうだのう。あれはちと食い過ぎじゃ。」

「うえっぷ。だって美味しかったんだもん。」


鈴は畳の上で寝転びながらそう言う。


「たしかに美味しかったけど、あれは食べ過ぎよ。」

「そうじゃ、もう少ししたらお風呂にいこうぞ。」

「そうね。そうしましょう。」

「あと十分!十分待って!ケポ。」

「しょうが無いわねぇ…。」

「しょうが無い鈴殿じゃ。」

「ねー。」

「のぅ。」

「この!満腹感で動けない気持ちは!ケポ。君たちにわからないのかね!」

「わかる?」

「わからぬ。」

「そんな馬鹿な…。良い!人間たるもの食べている時が一番の幸福を感じるの!だから―」

「何か語り始めたわよ。」

「こういうのは聞き流すのがいいのじゃ。」

「であるからして生きとし生きる食材となる動植物達に感謝をし、料理人にも感謝をするそれが”いただきます”に込められた意味であり―」

「鈴じゃないけどお刺身美味しかったわ。」

「それは良かったのじゃ。あとで母殿に言っておくのじゃよ。」

「食事は感謝しながら食べることでより一層美味しさを増す。それは作ってくれた料理人にも伝わるであろう―」

「さて、そろそろお風呂行くかのぅ。妾の家は露天風呂じゃぞ。」

「月を見ながら入るのも良さそうね。」

「最後に”ごちそうさま”と言うことで再び食材と料理人に感謝を伝えるのだ!そして食べた側も満腹感と言う幸福にも浸れ―」

「さて行きましょうか。」

「そうじゃな。案内するぞ。」

「これこそ生きている意味の一つで、ってあれ?ちょっと!おいてかないで!マッテ!」


女性陣は飛鳥の案内で家から少し下った所にある露天風呂へと到着する。

周りには柵が張られ、外部からは入れなくなっている。

更衣室の中に入ると交易品なのか魔道具のランプが灯っていた。

そのおかげでLED照明とまでは行かないがある程度地面や手元が見える範囲の明るさは確保されている。


「この魔道具明るいね。」

「妾は知らぬぞ?こんなの初めて見たのじゃ。前はもっと暗かったのじゃ。」

「あー。これね。周囲を漂っている魔力の吸収効率が上がっているのよ。まぁその辺の話はお風呂でしましょ。」

「はーい。アイリスせんせー。」

「了解じゃ。せんせー。」

「そのせんせー言うのやめてくれないかしら…。」


アイリスは若干顔を赤くしていた。


露天風呂は思った以上に大きく、一度に二十人は入れるぐらいの大きさがある。

アイリス、飛鳥は野郎が居ないことも合ってあまり隠していないが、鈴はガッチリと隠している。


"まだ駄目なの?"

『う、うるさい!』

"はいはい"

「なんじゃ、鈴はここでも隠すのかぇ?」

「鈴ってガード厳しいわね。」

"飛鳥気づいて言ってるよね。"

『アイリスはまだ知らないみたいだけど。』

「私はガードが硬い女なんですぅー!」

「でも今回は逃さぬぞ。」

「な、何が?」

「ふふふ。見せてもらうぞ?」

「ナ、ナニガカナー?」

「もちろん鈴の秘密じゃ!とやあああ!」


飛鳥は素早く鈴に飛びつくとバスタオルを引っ張った。


「あ…。」


そしてあらわになる鈴の体。


「あら?そのお腹の傷跡何かしら。」

「あわ、あわわわわわわわ!み、みるなああ!」


手元にエアガンのライフルを創造すると飛鳥とアイリスに向けてフルバーストする。


「いたたたた!なんで私まで撃たれるのよ!」

「痛いのじゃ!鈴落ち着くのじゃ!」

「みーるーなー!」

"はいはい、落ち着こうねちっぱいさん。"

『ちっぱい言うな!』

「お?動きがとまったぞ?」

「そうね…止まってる間に治癒しましょう。」

「おお、頼んだ。」


スズがリンと脳内戦争をしている間に二人はエアガンで撃たれた部分を治癒し、体の汚れを洗い流していたのであった。


"さてそろそろいいかな。"

『大体!私は!』

"ほら二人共体洗い終わっちゃってるよ。"

『なぬ!』

「あ…飛鳥!バスタオル返して!」


鈴は傷跡を片手で隠しながら飛鳥を指さしている。


「もう見えてしまったのだから諦めるのじゃ。」


そう言うと飛鳥は温泉に浸かってしまった。

それに続くかのようにアイリスも温泉へと浸かる。


「うー。」

"諦めなよ。"

『……お風呂はいろ…。』


鈴は諦めて体を洗うと温泉の中へ入っていった。

その後鈴が嫉妬仮面になろうとしていたため温泉のお湯を顔にぶつけられたのはまた別の話だ。





注意 飯テロ

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