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異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
リール国と観光とアルニカ
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出港






「いやー。今日は楽しかった!」

「スズははしゃぎ過ぎよ。リンも人前なんだから気をつけなさい。」

"了解。"

「それにしても最後はすごかったのぅ。」

「何が?そういえば皆騒いでたのは知ってたけど…。」

二重詠唱合体(ダブルスペルコアレス)よ。結構前に提唱された魔法形態なんだけど、これがまた難しくてほとんど…いえ、使える人が居なかったのよ。」

「そうなの?」

「妾にはさっぱりわからぬ。」

「いい?前にも教えたけど、魔法はイメージが重要なの。でも二種類の魔法をイメージすることは大変なのよ。以前私が火炎放射になってしまったように自分の意図した魔法が発現しないのよ。」

「それもそうだね。」

「後もう一つ大事な事があって、一つの魔法を発現させる時の魔力操作に慣れてしまっている私達は一度に二つの魔力操作をすると互いに干渉してしまって結果魔法が発動しないのよ。魔力が魔法と言う形に変換されないのね。」

「難しいことだけ分かった。」

「…その様子だと全然わかってないわね。」

「妾もさっぱりわからぬ。アイリスは出来ないのかのう?」

「私は属性的に無理よ。火と水じゃどんなイメージすればいいのよ。」

「んー。例えば水蒸気だね。」

「水蒸気?」

「えーっと物質には三種類の状態があって液体、個体、気体って言うの水蒸気は水が気体になったものなんだ。だから水と火の魔法で水蒸気を生成すれば目眩ましにも使えるし、なんなら高温の水蒸気を生成して相手を蒸し殺すこともできるかもね。」

"明日は雨かなー。"

『これぐらい私だってわかるよ!』

「それも科学ってやつね。」

「イメージとしては…うーん。煮えた鍋から出てる煙を思い浮かべてくれればいいかな?詠唱の一部はさっきの人のパクっちゃえばいいし。後は魔力操作だね。」

「そうね…こればかりは上手く行きそうにないわね。」

「試しにやってみる?」

「物は試し。名前はどうしようかしら……<蒼白の炎よ。大気を糧に燃え上がれ、水よ。我が手に集い彼の者を押し流せ。我この身に二つの魔力を宿すもの、混沌となりて具現化せよ。>ウォーターミスト!」


アイリスは詠唱し、魔法を発動させたが、いつまでたっても魔法が具現化する気配がない。

要は失敗だ。


「やっぱり無理ね。」

「無理かー。」

「ふむ…。アイリス殿、妾の魔力操作と同時に魔法を使ってはくれぬか?」

「?<蒼白の炎よ。大気を糧に燃え上がれ。>ファイアボール。…?」

「ふむ。やはり発動せぬか。」

「まさかこれも同じだということなのね。」

「そうみたいじゃな。」

「魔法の発動を寸止めしながらこの魔力操作をすればいいトレーニングになりそうね。」

「頑張るのじゃ。」


そこまで三人がやっているとドアがノックされた。


「お食事をお届けに参りました。」

「はーい。今開けます。」


鈴はドアを開けると食事を持ってきた二人を中に招き入れる。


「今日のお夕食はルスの塩焼きでございます。」

『これは鯵の塩焼き…!そして白米!』

"そっくりだしそうみたいだね。"

「それではお食事をお楽しみください。」


そう言うと二人は部屋から出て行ったのだった。


「……鯵の塩焼きだああああ!」

「ルスはそっちだと鯵っていうのね。」

「ささ!焼き魚は熱いうちにたべないと!」

「そうじゃな。ではいただくとするかのぅ。」

「いただきまーす!」







「……不幸だ。」

「どうしたアラス。」

「なんで俺はあんなに女性がいっぱい居たのに進行役をやっていたんだ…。俺も女の子とイチャイチャしたかったぜ…。」

「また言ってるのか。」

「イルミス、バカにつける薬は無いというからな。」

「そうだな。」

「俺は馬鹿じゃないぞ!」

「それじゃ歩く色魔か。」

「くそおおおお!」

「あまり騒ぐとまた叩かれるぞ。」

「畜生…アルニカ行ったら素敵な女性とイチャイチャするんだ…。」

「また言ってるよ。」

「相変わらずだな。」

「とりあえず明日の船でアルニカに出発だ。」

「ああ。そうだな。初めて行く国だ。」

「奇遇だな。俺もだ。」

「少し楽しみだな…。」

「いつになっても楽しみという物はいいな。」





翌日、相変わらず鈴は早起きである。


「朝だ!観光だ!朝食だ!」

「…煩いわね…まだ早いわよ。」

「くかぁー…。」


鈴が暴れだして約二時間。

アイリスに積極的に話しかけていて二度寝出来ず結局起こされていた。

その横では飛鳥が幸せそうに熟睡しているのであった。


「この寝顔、起こしたい。」

「起こす?起こす?」

「起こしなさい。」

「あーすーかーおーはーよー!」

「またそれ…。」

「ぶふう!?」

「ベッド柔らかいからこの間みたいなことにはならないのだー!」

「の、のぅ、鈴殿…その起こし方はやめてほしいのじゃ…。」

「これなら一発で起きるでしょ!」

「妾は呼ばれれば起きるのじゃよ?」

「嘘おっしゃい。」

「起きたなら着替えなさい。」

「了解じゃ~。」

「私、朝食催促してくる。」

「待ってればいいじゃない。朝食は逃げないわよ。」

「だってお腹すい―」

「貴方が勝手に騒いでいたのよ。」

「ぐぬぬ。」


その後朝食を持ってきたスタッフに鈴が飛びかかったのは内緒だ。

朝食後三人はイルミス達が居る部屋へと赴いた。

今日の予定のためだ。


「で!今日はアルニカに行くんだよね!あー。早く刺し身と寿司食べたいのじゃー。」

「そうじゃな。寿司は美味しいのじゃ。」

「スズ、しゃべり方移ってるわよ。」

「本題いいか?」

「どうぞどうぞ!」

「今日はアルニカとリール国を結ぶ交易船に便乗して行こうと思う。」

「しつもーん!交易船なんかに乗って大丈夫なんですか!」

「一般人も乗ってるぞ。別名奴隷船。」

「奴隷船って何なんですか!普通の船で行きましょうよ!」

「ただで乗れる船なんだ。まぁ要は経験を積むのも大事なことだ。」

「まぁ、金がかからないのが一番だからな!」

「もしかして、イルミスさんそれが狙いで―」

「そんなことはないぞ!」

「…。」

"察し。"


一行は港へと出ると荷物を積み入れている船を見つけた。

それを見るとイルミスが何やら話に行った。


外で作業していた作業員に話しかけたと思えば更に奥に居た人物と話を始める。

おそらく彼がこの船の船長なのだろう。


交渉はすんなりと終わったようでイルミスはこちらに向けて手招きをしている。


「あーだりいなー。普通の船で行きたかったぜ。」

「イルミスさんってケチなんですか?」

「そんなことは無いぞ…多分な。」


五人はイルミスのもとに行くと、ひげを生やした海賊に見える男性が居た。


「お前ら俺の船に乗ってアルニカに行きたいんだってな。」

「行きたいです!」

「お?嬢ちゃん元気いいな!その元気でアレ運び入れてくれ!それが終わったら次にあの箱を頼んだぞ!他のやつも手当たり次第積み荷を船の中へ入れていってくれ。頼んだぞ。」

「よーし。頑張るぞー!」


鈴は箱に近づくと持ち上げようとしたが


「!?…ぐぬぬぬぬ…重い…。」

"引きこもりの運動音痴が加護で強化されたとしてもそんな重い物持てるわけ無いでしょ。"

『言い返せない…悔しい!』

"ほら代わって。"

『…はい。』

「よし。さっさと運んで終わらせよう。」


リンはそう言うと片手でその箱を持ち上げ、隣にあった同じ物が入っていると思われる箱も持ち上げた。


「なぁ。アレの中身ってパンパンに詰まってる鉄鉱石だよな?」

「そのはずだが…俺らは幻でも見ているのか?」

「幻じゃないな…確かに女の子が片手で…しかも両手で運んでる。」

「ちょっとお前持ち上げてこいよ。」

「お、おう。」


船乗りが箱を持ち上げようとするが、両手で持ち上げるのが精一杯だ。


「おっも!これ片手で持つのは無理だ~!」


そう言うと船に積み込み、再び戻ってきた。


「無理。俺でも両手で精一杯だ。」

「あの子凄いんだな…人は見かけによらないんだな。」

「だな…。」


リンを見た船乗りの会話であった。






「次は何を入れればいい?」

「お、おう、これを入れてくれ。なんなら手伝うか?」


そう言われてゆびさされたのは大量の果実が入った木箱だった。

大きさはリンの背丈ぐらいある。


「大丈夫です。」


そう言うとリンは両手でそれを掴むと持ち上げる。


「!?」

「これ積んでおきますね。」

「お、おう。頼んだぜ…。」


リンはゆっくりと船に向かって歩いて行く。


「最近の若いのは駄目だと思ってたが、意外と凄いんだな…。」


ここでも誤解が生まれていた。






「お前らご苦労!今日はずいぶんと早かったな!日頃の成果が出てきてるのか?」

「(この女の子のおかげだとは言えない…。)」

「(そういうことにしておこう…。)」


他にも様々な思いがあったがそれは割愛させてもらおう。


「よし、お前ら出港するぞ。」

「おおー!」

「しゅっぱーつ!いえーい!」

「錨あげろ!」

「了解サー!」

『リン!』

"あいよー。"


リンは鎖をグイグイ引っ張るとあっという間に錨を持ち上げ鎖を甲板に固定した。

それを見ていた船長は目を細めていた。


「最近の子供は凄いんだな。」

「あ、やっぱり船長もそう思いますか?」

「ばっかやろう!お前ら子供にやらせて何サボってんだ!」

「ひぃいい!すみませんでしたあああ!」

「まったく。うちの若い連中はこれだから…。」

「他に手伝うこと有りますか?」

「おう。帆を張ってくれ。」

「了解」


リンが帆を張ると、船が少しずつ風を受け動き出した。

船長は舵を取るために操舵室の中へ入っていく。


「おーい。次は甲板と部屋の掃除だ。任せたぞー。」

「えー掃除めんどくさいー。」

「鈴、文句いわないの。」

「へ~い。」

『リン掃除機出してー。』

"電気ないよ"

『発電機だしてー。』

"自分で頑張って。"

『ケチー』


スズは箒を持つと甲板のゴミを海に掃き捨てていく。


「観光に来たのに掃除なんて…。」


鈴はブツブツと文句を言いつつも掃除を進めていく。

船の構造上先端から徐々に太くなるため、掃除も徐々に大変になってくるのだ。


「んー。甲板の板の溝でゴミが引っかかる~。箒をこう持って…。」


箒の持ち方を変えると溝にそって箒を掃いていく。


「よーし。この調子で掃除を続けて―」

「左斜め前方船舶発見!」

「旗を確認しろ!」

「旗は…海賊旗です!」

「総員戦闘準備!距離はどれ位だ!」

「およそ二キロです。」

「魔法使える奴は発動準備!使えない奴は剣を持て!そこの冒険者も戦え!」

「え?何?海賊?」

「そうだ。おそらく数分で接触するだろう。戦う準備をしておけ。」

「せっかくの!観光なのに!掃除とか!海賊とか!ああああああああああ!邪魔すんなあアア!」


鈴は頭を押さえて足をドタバタさせている。


「あああ!もう!距離はニキロ!射程内!二八式対艦艇対戦車誘導弾!!」


二八式対艦艇対戦車誘導弾とは二千五百二十八年に制式化されたミサイルである。

島国である日本は対戦車だけでなく、艦艇に対する防御処置も施さなければならない。

そこでこれである。


鈴は発射装置壱式を向かってくる海賊船に向ける。

発射装置のセットアップを終えると、照準を海賊船の竜骨に合わせた。


「ふふふ…私の観光の邪魔をする不届き者は是非をもって 死 ぬ が よ い 」


引き金を引くとミサイルが発射された。

相手は木造の船。

木造を対象としていないこのミサイルはどう考えてもオーバーキルである。


この二八式はミサイルに小型カメラが仕込まれており手元のコントローラから弾道を見ながら補正を行うことができる新型の兵器だ。


スズは送られてくる映像データを元に弾道を修正しつつ海賊船へミサイルを飛翔させる。、

途中イルミスに話しかけられたが、それを無視して操作を続けた。


「着弾まで3…2…1…弾着!今!」


それと同時に海賊船の前方が爆発を起こした。


「な、なんだ!?」

「イエス!!不届き者は成敗してやったぜ!」

「なぁスズ。言わなくてもわかるんだが何やった?」

「対艦艇対戦車誘導弾をぶち込みました!鉄でもない船がこれを喰らえば木っ端微塵ですよ!」

「俺たちに喧嘩を売った海賊の運が無かったな。」

「用!嬢ちゃん!今のは嬢ちゃんがやったのか?」

「はい。私のストレス解消―船の安全のために海賊は沈めました。」

「すげーな!何を銅やったらそんなことできるんだ?」

「内緒です。」

「かーっ!女は秘密好きだな!よし!お前ら武器はしまってこい!もう大丈夫だ。嬢ちゃんが一人でやってくれた。見てみろ!」


海賊船は爆発で穴が空きそこから海水が大量に船内に流れ込んでいた。

そして爆発の二次災害で炎に包まれかけていたのだ。


「最近の女の子ってすごいんだな。」

「そうだな…。」





「いやー。海賊船を沈めただけでアルニカまで休憩もらえてラッキーですね。」

「そうね。あの海賊には感謝しないとね。」

「運が良ければ助かるかのぅ。」


三人はテーブルを囲み軽いお茶会をしていた。

男たち三人は休憩をもらえず、こき使われているのであった。




二八式対艦艇対戦車誘導弾は七八式を元にしたオリジナル兵器です。

未来の日本が舞台なのにいつまでも七八を使うのは少しおかしかったので出させてもらいました。


これからもオリジナルの銃火器や魔法を募集していきます。

何か有りましたらご連絡ください。


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