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異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
リール国と観光とアルニカ
51/217

ヒス村防衛戦




ラターク街をでて半日と少し。

さすがに荷車を引っ張っているアラスが遅れ始めてきている。


「ちょ…そろそろ休憩しようぜ…この水晶球結構重いんだぜ。」

「アラスさん頑張って!もう少しで近くの村だから!」

「うおおおお!鈴ちゃんが応援してくれてる!これで頑張らないと男がすたるぜえええ!」

「(ちょろい)」

"ちょろい"





更に時は過ぎ、夕暮れ。

五人は村へ着いていた。


「だあぁぁ!疲れた…。鈴ちゃん…!俺がんばったぜ!」

「イルミスさん今日は何処で泊まるんですか?」

「たしか…そこの角に宿が有ったはずだ。そこに泊まろう。」

「了解サー!」

「あのー。鈴ちゃん?」

「行きましょう。」

「あぁ。」

「お前ら!ちょっとまてーい!俺は!?頑張った俺に何か無いのかー!?」

「アラス、置いていくぞ。」

「だったらアームも手伝え!」

「きゃーアラスさんがんばって~」

「おい、その棒読みやめろ。お前がそれ言っても可愛くねぇ!」

「何やってるんだ?二人共行くぞ。」

「そうですよー。置いていっちゃいますよー。」

「そんなー。」

「ああ、今行く。」


アラスは荷車を再び引っ張りだしたのであった。






「どっこらせ…ふぅ…疲れたぜ…。」

「荷車何処においてきた?」

「宿の角に寄せてあるぜ。」

「分かった。」

「それにしてもここも高いですね。」

「この辺りはまだルドルフ皇国だからな。後二~三村を超えればリール国とルドルフ皇国の国境だ。」

「早くリール国でお風呂入りたい。」

「そういうことなのでアラスさん!頑張ってください!」

「おう!任せろ!俺にかかればこんなもん余裕だぜ!」

「(鈴がアラスを使いこなしているな。)」

「(お前…それでいいのか…)」


イルミスとアームは内心アラスと鈴の事を思っていたのだった。


「…とりあえず明日は早朝に出発して国境付近の村まで行こうと思う。各自しっかり休んでくれ。」

「ああ。わかった。」

「了解サー。」

「それじゃ私達は部屋に戻るわ。」

「おやすみ~。」

「おやすみー!鈴ちゃん、アイリスちゃ~ん。」


すぐ隣りの部屋に戻ったアイリスと鈴はベッドに腰掛けた。


「ん~おなか空いたなぁ。」

「持ち合わせの食料でなんとかするしか無いわね。何処も開いてないから確保もできないし。」

「そうなると…寝るに限る!」

「鈴はよく寝るわねぇ…。」

「いやぁ~、成長期真っ盛りだからね!」

「の、割には…。」

"全く成長しない。"

「ん?」


アイリスは一瞬鈴の胸を見たがすぐに視点を外した。

鈴はアイリスやリンに言われた意味に気がついていないようだ。


「なんでもない。さ、寝ましょ。」

「んん?うん。おやすみだよー。」


そしてリンとアイリスの言葉の意味を理解するまもなくスズは眠りにつくのであった。

それに続きアイリスも眠りに落ちた。




深夜、皆が寝静まった頃にそれは起きた。

宿の裏口から侵入する二つの影。

それは真っ直ぐイルミス達の部屋へと向かっていく。

そして二つの部屋の真ん中に立ち止まった。


"…"



「おい、この部屋で合ってるんだよな?」

「間違いねぇ…あのデカイ荷物を運んでた冒険者の部屋はここだぜ。」

「で、どっちが女の部屋だ?」

「ちょっと待て…左だ。」

「よし、ばれないように侵入して、とっ捕まえてアジトに帰ろうぜ。」

「おう。俺としては荷物にも興味があるんだがな。」

「荷物は無理だ。あっちは全員前衛だ、しかも一人多い。」

「なら後衛の女どもを―。」

「こんばんは。」

「なっ!?ビビらせやがって起きてたのか…だが素手だ。とっ捕まえるぞ。」

「まかせとけ。」

「メリケンサック。」


リンの両手にメリケンサックが光りとともに装着される。


「な、なんだ?」


それと同時にリンは床を踏み込み、相手の懐に入り込む。


「こいつ―。」


リンはその体勢から拳を振り抜いた。

本来メリケンサック(ナックルダスター)とは硬い物を殴るときに使うものだ。

それにリンの加護と武器の威力をあわせ打たれた拳は侵入者の骨をも砕き吹き飛ばした。

吹き飛ばされた人物は激しく吐血し、更に泡をふき白眼を向いている。

体もピクピクと痙攣している。


「一人目処理…次。」

「くそ!油断してるからだ!」


そう言うと男は剣を抜きリンに斬りかかる。

リンはその剣の太刀筋に合わせもう一度拳を打ち抜いたのだ。

金属と金属のけたたましい音を立て、打ち合った衝撃から剣は折れてしまい地面に転がった。


「ひぃ!?け、剣がお、折れただと!」

「止めだ。」

「やめろリン!」


振りかざされた拳は侵入者の顔面寸前で止まり、侵入者は恐怖から気絶してしまった。

リンを止めた声の主はイルミスだった。


「イルミスじゃない。私が気が付かなかったらどうするの?」

「そのためにリンが居るんじゃないのか?」

「まぁ、そうだけどね。」

「騒がしいわね。ちょっとそっちの男もう手遅れじゃない?」

「そうだな。虫の息だが手遅れだろうな。魔法も役に立ちそうにないな。」

「それにこの威力で顔面なんて殴っていたら破裂してるぞ。」


アームがさらっと怖いことを言うが、リンには関係なかった。


「で、こいつどうするの?拷問でもして吐かせる?」

「そうだな…一旦こいつは縛って宿の外に転がしておこう。」


先ほどの騒ぎのせいか、宿に止まっていた人々が起きだしてしまった。

そこに宿の宿主がやってきた。


「ど、どうしました?」

「賊みたいだよ。一人は死亡、もう一人は気絶してるから縄を持ってきてほしいな。」

「は、はい。」


リンがそう言うと宿主は駆け足で戻っていった。

それと同時に出てきていた人々も次第に部屋の中へ戻っていく。


「ふう。」


リンはメリケンサックを外すと床に落とした。

音をたて光となって消えていく。


「それじゃ私は寝るからあとよろしく。」


そう言うとリンは部屋の中へ戻っていってしまった。


「やりっ放し…ね。」

「あ、もう一人のほう息が無いぜ。」

「そうか。どうしようか…。」

「…近くの林に捨ててくる。」


アームはそう言うと男だった物を持ち上げ外へ出て行った。


「あ、あの!縄持ってきました!」

「ありがとう。さて手と足縛って外に転がしておくか」


そう言うとイルミスは気絶している男の手足を縛り外へ抱えて行った。


「ふあぁぁ。寝よ。」

「だなー。」


アラスとアイリスは自分たちの部屋に入っていったのだった。


「あわわ…戸締まりしないと…でもそれじゃ止まってる人が出入りできない…はわわ…。」


宿主は非常に困っているのであった。






翌朝、相変わらず起きない鈴にアイリスの水魔法が降ったのは言うまでもない。


「おい起きろ。」


イルミスが男を揺するが起きる気配がない。


「アイリス、アレやっちゃえ!」

「<水よ。我が魔力を糧にここに集い水球となせ。ウォーターボール>」

「づめて!何だ何だ!?」

「おはよう。」

「ひぃ!?き、昨日の女!」


スズはリンから事のあらすじを聞いており、昨日の夜に何が有ったのか把握している。


「あなた達は何処から来たの?もちろん喋ってくれるよね?」

「だ、誰がしゃ、喋るか!」

「しょうがないにゃぁ…。(ペルソナ)」

「へ、へへ。猫か?」

「ここからは私がやるよ。」

"聞かない見ない"

「?何を言っているんだ?」


リンは男をうつ伏せにさせるとそこに座った。


「な、なにしてるんだこの女!」

「ここに一本の針があります。」


そう言うとリンの手元に裁縫用の針が一本現れた。

そして片手で男の指を抑えこむと、針を近づける。


「お、おい!まさか…!やめろ!やめ―」

「何針耐えれるかな?」

「い、いぎゃあああああああああああアアアアアアアアア!!」

「一本目。喋る?」


騒ぎで見に来ていた一般人の野次馬はリンが取った行動に目を背けている。

冒険者には耐性があるようだが目を背けている者もいるようだ。


「あああ、いぎいぃ…喋る!喋るから!もうやめてくれ!」

「所詮賊は賊か。で?何処の誰に命令されて来たの?」


リンは若干男に失望したかのように声を吐き捨てた。


「お、俺達は女を拐って来いって命令されていて、その命令を出したのはとなり村の村長だ!も、もういいだろ!早く針を抜いてくれ!」


男は痛みで半泣きになっている。

リンは言われたとおりに針を抜いて捨てた。


「アイリス~治療頼むよ~。」

「…<癒よ、ヒール>」

「それじゃとなり村まで案内してくれるよね?」

「ああ、分かったから!それ以上指を曲げないでくれ!」

「リン。それぐらいにしてやれ。」

「分かった。」



その時どこからか何かが投げ込まれた。

それは地面にたたきつけられその衝撃で砕けた。

その瞬間魔力の波動が辺り一帯に激しく伝わったのだった。


「これは…!」

「今のはなんだ?」

「魔法に詳しくないが何か凄い魔力が通ったな。」


リンはふっと男の顔を見ると何故か青ざめている。


「今の知ってるのね?何?教えて?」

「痛い!やめろ!やめてください!」

「なら早く教えること。」

「あ、あれは作戦が失敗し、情報が漏れた時に使う保険だ。効果は―」

「魔物を呼び寄せる。」


アイリスが口を挟んだ。


「なんだと!?」

「それは本当か?」

「ほ、本当だ!あれは近くにいる魔物から魔物へと感染する!相当の量の魔物がこの村に押し寄せるぞ!」

「や、やばい!皆に知らせるんだ!」


それを聞いた野次馬が騒ぎ始めた。

しかし、イルミスがすぐに騒ぎを沈め、村人は一箇所に集まるように指示をしていた。

村に訪れていた冒険者は村を守る為に立ち上がり、魔法を使える冒険者は村人を守るようにシールドを展開していた。


「厄介なことになったなぁ。」

"リン、この村には防壁がない。とてもじゃないけどこの人数じゃ守れないよ。"

『そこは能力を使うよ。』

"ん?ターレット?"

『そう。それを二門置いておく、というか二門しか置けない。私は剣でも武器屋から借りて戦うよ。』

"ターレットの弾薬が切れたらすぐ変わって。わかった?"

『了解。』


リンはスズとの話を終わりにするとイルミス達の元へ向かった。

イルミスが全体の指揮を取っているのだ。


「さて、イルミス~。相談があるんだけど。」

「なんだ?」

「イルミスもこの人数で守りきれるとは思ってないよね?」

「…あぁ。」

「そこで私の能力を使うよ。自動砲台って言うものがあってね、自動で銃で狙い撃ちしてくれる装置があるんだ。だから射角百六十度以内に入らないように指示してほしいんだ。」

「入るとどうなる?」

「蜂の巣になるよ。」

「わかった。設置する場所は?」

「北と西に設置するから冒険者の一部を西に残して東と南の防御を固めて。」

「そうさせてもらう。」

「それじゃよろしく。」


そう言うとリンは走って武器屋に向かっていった。






「ここかな?おじゃましまーす。誰も居ないだろうけど。」


リンは現在避難して無人となった店の中にある剣を一つ手に取るとお金をカウンターに置き店からすぐに出る。

襲撃まで時間がないのだ。

すぐさま北にターレット一門を設置し、西にも設置する。


このターレットは弾数四百発だ。

動く標的を撃ちぬくため、ターレットの目の前には決して立ってはいけない。


「よし。」


そこへ冒険者がやって来た。

冒険者は鈴の事を知らないため黒い何かを設置しているのが理解できなかった。


「何をしているんだ?」

「ターレット設置してる。」

「なんだそれは?」

「んー。矢を自動で発射してくれる魔道具って思ってくれればいいや。あなた達はこれの弾幕を抜けてきた魔物を打ち倒して。あとこのターレットからピーって言う高い音ががなったらこの先にも出ていいからね。それ以降はこのターレットは動かない。」

「大丈夫なのか…?」

「大丈夫。動かなくなったら援護しに来るから。」


そういうと北から銃声が聞こえてきたのだった。


「戦闘開始!」


そう言うとリンは北のターレットの元へ走って行くのであった。




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