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異世界と私と銃とファンタジー  作者: 白築 える
リール国と観光とアルニカ
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荷物運搬依頼


シュナイダーとミミとの模擬戦後、宿に戻った一行はこれからの話しをしていた。


「さてこれからどうする?」

「そうだな、ギルドの混乱は兵士にまかせておけばいいだろう。後は職員が何とかするはずだ。」

「それはそうと、あのマスターからいい情報が聞き出せそうだぜ?」


シュナイダーはそう言うと二本指を立てた。


「一つは闇取引、二つは闇ギルドの場所。これが聞き出せるはずだ。マスターは自分の命より情報を吐くだろう。そこまでの度胸は無いだろうからな。」

「吐いたら国が動くだろうな。」


イルミスがそう言うが、シュナイダーは首を横に振った。


「無理だな。国内がこんな状態で兵士を出す余力は残っていないだろう。どうせ闇ギルドだ、真っ当な場所にはないだろう。」

「やはり何をやるにも食料か。」

「そこで俺たちが動くことになるんだ」

「そうか、俺たち冒険者なら国と違って動きやすい。」


イルミスとシュナイダーが二人で話しているとそこにアイリスが割り込んだ。


「でもそれはあいつが闇ギルドの場所を知っていたらってことでしょ?知らなかったら意味ないじゃない。」

「そうだな。だが、あいつが知らないなら闇ギルドの構成員を捕まえればいい。もちろん自殺されないようにして拷問するだろうな。」

「拷問って…。」

「鈴、拷問は知らないのか?」

「はい。私の国ではそういうものは無かったので…。ちなみにどんなことをされるんですか?」

「あ!私が答えるよ!えっとね!大鋏で指を落としたり爪を剥がしたり、死なない程度に苦痛を与えたり、相手の精神を追い詰めていくんだよ!もちろん回復魔法で傷は直されるから拷問は止まらないんだ!気絶しても痛みで起こされ情報を吐くまで続くんだよ!」

「……聞くんじゃなかった。」

"スズが聞きたいって言ったんだからね"

「…」


ミミの言葉に若干顔を青くする鈴。

そこにリンからの言葉が追撃に入った。

もっともなことで何も言い返せないスズであった。


「末端なら場所も知っていて覚悟もないだろうから拷問すれば吐くだろう。」

「そ、そうなんですか。」

"あと爪と指の間に針を入れる拷問とかファラリスの雄牛もある。後者のは処刑道具でもあるからね"

『そういうの付け足さなくていい…』

「まぁ、吐いたらギルドに通達されるだろう。参加するかは自由だが、俺達二人は強制的に参加だろうな。幹部がいるからな」

「そうか…気をつけろよ。」

「ああ、わかってる。」

「そんで?これからどうするんだ?何か依頼でも受けるか?」


アラスがそう言うとイルミスはそれに対して答えた。


「ああ。受ける予定だ。おそらくルドルフ皇国ではあまり無いだろう。護衛依頼か何かを探してルドルフ皇国から抜け、西のリール国へ向かおうと思う。」

「それじゃ俺たちとはここで一旦お別れだな。」

「そうだね!一旦お別れ!」

「それでは俺たちは部屋に戻らせてもらう。また会おう。」

「まったねー!」

「ああ、またな。」

「またねー!ミミちゃーん!」


シュナイダーが扉を開き、ミミが手を振りながら扉を閉めていった。


「ところで、リール国ってどんな場所何ですか?」

「リール国は海辺が綺麗な国だっけか?」

「リール国はな!海辺に水着の女の子がたくさん居るんだ!ナンパするにはもってこいの――うっ!?」

「余計なことまで言わないこと。」


アイリスの杖の一撃がアラスの腹部へ直撃する。

痛みに声を詰まらせ、腹部を押さえてその場に座り込んでしまった。


「アラスさんってMですか?」

「鈴、えむってなんだ?」


アームが聞いたことのない単語を鈴に聞いた。


「Mって言うのは痛みを快感に感じる人とかの人です。だってアラスさん毎回こうなるってわかってやっていますし…。」

「そうか。アラスはMというものだったのか。」

「ちょ…俺はMじゃないぞ!いてて…。」

「とりあえず明日になったらギルドへ行こう。何かあるかもしれないからな。」

「了解です。」

「それじゃ解散だ。ゆっくり休め。」

「アイリスお風呂入りに行こ!」

「いいわよ。」

「お!俺も―なんでもないです。」

「あら?そうなの?」

「鈴行くわよー。」

「あ、はーい。」


鈴はハンドガン(エアガン)を消すと、アイリスのあとについて行ったのだった。


「なぁ、こんな時に風呂入れると思うか?」

「入れないな。食べ物、飲み物に困ってるのに風呂なんてなぁ?」






「えー!開いてないじゃん!」

「よくよく考えればそうね…こんな時に開いているわけがないわね。」

「そういえばそうだね…。」


鈴とアイリスは少しがっかりしながら宿に戻ったのだった。





そして翌日。

今日は生憎の曇りだ。


「鈴おきて。」

「んー後一年…。」

「…<水よ。我が魔力を糧にここに集い水球となせ。ウォーターボール>」


アイリスの手のひらに水が生成されるとそれをそのまま鈴の顔に落としたのだった。


「…ちめたい!なになに!?なにごとでふかー!」

「おはよう。」

「あ、おはよう。」


魔力で出来た水はすぐに魔素に回帰し、ベッドや服から水がなくなっていく。


「あーうー?水の魔法ってどうやって水ないところから出してるの?」

「ん?魔力で水を作り出してるのよ。」

「魔力で水を…?E=mc2の公式どうなってるんだ…。だったら魔力で大量の水を作って売ればいいんじゃないの?」

「それは無理。魔力を止めたら徐々に魔力からできた水は魔素に変換されちゃうから。」

「そうなんだ。そういえば服の水も乾いてるな~。」

「でもなにもないところから水を創りだすと魔力を二倍ぐらい持ってかれるのよ。」

「んー。やっぱりあの公式が適応されてるから魔力が多く持ってかれるんだなー。」

「なにか知ってるの?」

「いやいや、聞いたことあるだけでさっぱりわからないから。分かる範囲で言えば質量はエネルギーを持ち、エネルギーがあれば質量が作り出せると言うこと。」

「それって魔力が水を作り出しているってことよね。」

「うん、それであってる。」

「水源が近くにあれば結構効率の良い魔法なんだけどね。」

「ふーん。それじゃおやす―」

「<水よ―>」

「なんでもないです!二度寝なんてしようとしてません!」

「さ、イルミスの部屋に行くわよ。」

「了解であります。」

"そんなに眠いならもう一回水かぶっておけばよかったのに。"

『うるさい』


鈴とアイリスは持ち物を持つと部屋を施錠し、イルミスの部屋へ向かった。

向かうと言っても隣の部屋がイルミスの部屋なのだが。


「イルミスー入るわよー」

「ああ、いいぞ。」


アイリスは扉をノックし、声をかけるとイルミスに入出許可を求めた。

それに対してイルミスも答え二人は部屋の中へ入っていった。


「おはよー!鈴ちゃん、アイリスちゃーん!」

「朝から騒がしいわね。」

「おはよー。」

「よし、二人共来たか。皆準備はできているか?」

「俺は昨日のうちに済ませておいたからな。」


アームはそう言うと荷物を持ち上げた。


「俺はさっき用意したから大丈夫だぜ。」


アラスも用意できているようだ。


「私達も大丈夫よ。」

「はい。大丈夫です。」

「それじゃ、ギルドへ向かおう。リール国へ行く依頼がないかさがしてみよう。」

「了解サー。」





一行がギルドに到着すると、ギルド職員が総出で苦情や非難の声を聞いていた。

ギルドマスターや職員の一部が不正を働いていたことが町民にもれ、抗議しに来たのだ。


「なんか凄いことになってますね。」

「まぁ、あれだけのことが有ったんだ。しかたがないだろう。」

「とりあえず掲示板みましょう。」

「そうだな。」


イルミス達は騒いでいる町民を尻目に掲示板を見だした。

掲示板には相変わらず食料関係の依頼がどっさりと張られている。


「採取系の依頼ばかりですね。」

「そうだな。何かリール国へ行く依頼はないか…。」

「これなんてどうだ?」


アームが一つの依頼書を手にとった。

それは搬送系の依頼書だった。


「見せて…これってギルドからの依頼じゃない。」

「ああ。でもリール国へ行く依頼だ。」

「リール国に行けるならなんでもいいぜ~。」

「とりあえず、詳細を聞きに行こう。」


イルミスはアームから依頼書を受け取ると受付に向かっていった。

受付は大変混んでいるが、きちんと一部だけ開いている。


「すまない。この依頼を受けたいのだが。」

「はい。この依頼はギルドからの依頼になります。依頼内容はリール国コンポ街支部に新しい水晶を届けてほしいとの事。」

「水晶って言うと後ろにあるアレの事か?」

「はい。運んでもらう水晶は倉庫にあるためそれを乗せた荷車一台を用意させていただきます。」

「了解だ。」

「ではお外で少々お待ちください。」

「わかった。」


そう言うとイルミスと受付の職員は同時に動き始めた。


「皆、外で職員が荷物を持ってきてくれるのを待つぞ。」

「おうよ。」


そう言うと五人はギルドの外へと出て行った。


「私、リール国についたらお風呂入るんだ…。」

「そうね。早く入りたいわ。」

「良かったら俺も一緒に入ろ―なんでもないです。」


アイリスが杖をバットのように振りかざしたところでアラスは喋るのをやめた。

そのまましゃべっていたらアイリスの杖がアラスを殴り飛ばしていただろう。


「やはりお前はMと言うやつだな。」

「違う!俺はMじゃないぜ!」


そこへ鈴がアラスの方に手を掛けた。


「お?」

「Mだと認めたほうが楽ですよ。」

「鈴ちゃ~ん。それはないよ~。」


そんなやりとりをしていると職員が荷車を引いてやって来た。

荷車にはロープで固定された箱が一つ積まれていた。


「お待たせしました。」

「これか。中身を見ても大丈夫か?割れてないか確認したいのだが。」

「はい。ただいま開けますので少々お待ちください。」


職員は箱の上部を開けると水晶球を取り出した。

それは傷一つ無く、とても綺麗だった。


「割れてはいないな。よしありがとう。」


鈴はちらっと箱の中を見るとなにやら詰め物が入っていた。

きっと衝撃吸収材か何かだろう。


職員は水晶球を箱に戻すときちんと蓋を閉め、ロープで固定しなおした。

ロープが外れないことを確認すると依頼書にサインをし、イルミスに渡したのだった。


「ではよろしくお願いします。」

「任せとけ。」

「そんじゃまぁ、リール国へ向けて出発だぜ。」

「しゅっぱーつ!」

「アラス、荷車引け。」

「え?なんで俺が―」

「アラスさん頑張ってください!」

「よしきた!鈴ちゃん任せておけ!」

「(アラス…お前ちょろいな…)」

「(鈴にアラスの扱い方を教えたかいがあったわ。)」


アラスの身の振り方にアームとアイリスは心の中で思ったのであった。


「それではリール国へ向けて出発する。戦闘は俺が、後方はアームに任せる。サイドはアイリスと鈴で頼む。」

「了解サー。」


各自イルミスに支持された持ち場へ着くと、それを確認したイルミスが歩き出した。


「せいやっ!見ててね~鈴ちゃん!俺頑張っちゃうぞー!」


アラスも力を込めて荷車を引っ張り始めた。


「きゃー頑張ってー!(ちょろい)」

"お主も悪よのぅ"

『リンほどじゃないよ』


五人はラターク街西門へ移動している。

やはりここにも影響が出ており露店や店があまり出ていない。

出ていた露店を横目に見たが、値段がルーツ国の倍以上の値段だったのだ。


「(これじゃ売れないよね。)」


そう思いながらも道を進み西門までやって来た五人は、門を通過し町の外へ出たのであった。


「街から出たから油断するなよ。今は治安が悪い、盗賊が多いかもしれないからな。」

「でもあからさま荷物一個の荷車を狙うかねぇ…。」

「ヒントはアラスの好きなモノだ。」

「お?俺の好きなもの?もちろん女の子だ!あ!そうか、鈴ちゃんとアイリスちゃんか。」

「(しかし…まぁ。この二人を狙ったら灰になるか穴だらけになるかのどちらかなんだよな…。)」


イルミスとアームの思ったことは同じであった。

実際にも二人の火力はおかしいのである。


「それにしてもなんで水晶球なんて運ぶんだろうな。」

「壊れたんじゃないの?」

「ギルドだぞ?そう簡単には壊れないと思うが…。」

「でも飛び道具だったら止める余裕なく壊せちゃうような気がします。」

「もしかして酔っ払った冒険者が酒瓶でも投げてヒビでもはいったんじゃねーの?」

「はは。まさか。」

「そうですよね」

「そうね。そんなマヌケな事があるはずないわよね。」

「……。」


五人が黙りこみ、鈴が口を開いた。


「…まさかね。」





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