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ガン=カタって一回でもいいからやってみたいよね。だってあれはロマンだから!

翌朝、鈴はアイリスに起こされていた。


「鈴起きて。」

「あと五分…。」

「起きなさい。」

「あだ!」


アイリスの杖に軽く小突かれ頭をさすりながら起きる鈴。


「おはよう。」

「おはようございます…。」

「ほらさっさと起きて行くよ。」

「うー。朝は弱いんだよぅ。」

「貴方が言い出したことなんだから、しっかりしなさい。」

「うえー。」


そう言いつつベッドから起き上がると荷物を確認し、イルミスの部屋へ移動する。


「来たか。今日も目的は討伐に乗じた王女暗殺、誘拐の防衛だ。こちらは盗賊に気付かれ手はいけない。よって後手にまわる。前衛が接近するまでの間アイリスの支援が必要になる。わかったか?」

「わかりました。突撃するときも真ん中は開けてください。」

「わかった。目的地に到着するまでに朝食を済ませておけ。以上、行動開始。」


そう言うとイルミス率いるパーティは馬車が通る道へ向かって行く。

歩きながら朝食を食べ、水分補給をする。


街を出たところから盗賊の他に魔物の警戒を始める。

街のすぐ近くだからと言って安全とは限らないのだ。


鈴はデザートイーグルを容易に撃てたことから二丁拳銃ができるのではないかと思い、試しにベレッタM92Fを二丁出してみたところ見事に成功した。

アシストも有るらしく自然に構える事ができる。

しかし、拳銃では速度や殺傷力に問題が有る。

そこで今回は二丁のMP7の四十発マガジンを使うことにした。


鈴が手元で光をチカチカさせているとアームがあまり目立たせるなと注意してきた。


「目立つから控えてくれ。」

「す、すみません。」


鈴は両手で銃を構えると当たりを警戒しつつ仲間と共に進んでいく。

アシストのお陰で音を立てる物体の位置が手に取るようにわかる。


「(これリアル以上の補正じゃん!)」


それから二時間ほど歩くと目的の街道に到着した。

馬車はまだ着ていないようだ。


「この影で待つぞ。恐らくあの開けた空間で襲うだろう。先回りして盗賊を殲滅したいが、敵が何人いるかわからない以上迂闊な行動はできない。」

「了解だ。」


一分、二分と時間が刻々と過ぎていく。

約一時間が経った頃だろうか、遠くから馬車の音が聞こえてきた。


その馬車はいかにも一般の馬車と装っているが車軸には鉄を使い、車輪には鉄で補強されている。

所々普通の馬車とは異なっていた。


馬車が目の前を通過すると狭い空間から抜けていく。

ちょうど広い空間の中間に差し掛かった時だった。

どこからか矢が放たれ、馬に突き刺さった。

馬は痛みで暴れだし、馬車を揺らす。

同時に馬車の中から兵士が四人飛び出してきた。

それを見てか盗賊たちが一斉に左右から奇襲を掛ける。

「敵襲!姫を守れ!」






「イルミス!射手が!」

「鈴!予定変更だ、射手を頼む。」

「了解」


鈴は片方のMP7を消すと閃光手榴弾を出現させた。

前衛が走りだし、鈴も走りだした。

矢は右方向から放たれていた。


「右を見ないでください!」


それと同時に安全ピンを引きぬきレバーを倒し、雑木林手前に投擲し、再びMP7を出現させると目をMP7で庇いながら雑木林へ直進した。


盗賊の射手は向かってくる鈴に狙いを定めるが、飛んできた閃光手榴弾の意味がわかっていなかった。

盗賊は爆発音と共に光に包まれた。


そのショックにより視力と聴力を一時的に奪われた。


「ウワアアアア!目が耳がぁ!」


鈴は物音がした物陰に入り込むと目を押さえて悶えている盗賊の射手を見つけた。

頭に狙いを定めると右手に持っているMP7が火を噴いた。

弾丸が盗賊の頭に命中し、一瞬痙攣したかと思うと動かなくなった。

鈴は直ぐに振り返り馬車の方へ向かって走っていく。



「うおおおお!」


イルミスが盗賊に斬りかかる。

完全に不意を突かれた盗賊は回避するまもなく背を大きく切り裂かれた。


「お前たちは!?」

「冒険者だ!助太刀する!」

「わかった!援軍が来たぞ!盗賊と間違えるな!」


兵士の一人がそう言葉を飛ばす。

だが、イルミス達三人と兵士四人の七人と盗賊十六人では数が違かった。

アイリスが支援を行なっているが、アイリスの方にも盗賊が迫っている。


「くっ数が多い!アイリス!」

「無理。こっちにも!…来た!」


それと同時に一発の銃声が街道に木霊した。


「射手をやったか!皆あと少し耐えろ!」




鈴は急いで馬車へ戻っていると予想以上に数が多いことに気がついた。

そしてアイリスが盗賊に襲われていることにも気がついたのだ。

鈴は優先目標をアイリスを襲っている盗賊に変えると左手のMP7で狙いを定め引き金を引いた。

走りながらかつ片手だと通常は大きく弾道がぶれてしまうが身体強化とアシストのお陰で放たれた銃弾はアイリスに誤射すること無く盗賊の脇腹を数発抉った。

アイリスは咄嗟に離れると盗賊に魔法を放っていた。

それを見た鈴は次に馬車周辺の盗賊に狙いを定めた。

しかし、乱戦状態のため思うように狙いをつけることが出来ない。


「銃に関してならアシストは入るはず!ならCz75銃剣アタッチメント!」


両手のMP7を消すと両手に銃剣が付いた二丁の自動拳銃を出現させた。


「ガン=カタ一回やってみたかったんだよね!」


そう言うと乱戦状態の馬車周辺へ踏み込んだ。

鈴の予想通り、銃に関する技能であればアシストが入るようだ。

体は初めから分かっているかのように動き敵を翻弄する。


身体強化され威力の有る体術と銃撃を組み合わせ素早く盗賊達を突き刺し、銃撃していく。

後ろから盗賊が迫るが、ガン=カタの特性なのか何故かわかりその場で人を飛び越えるような宙返りを行った。

その時鈴にはまたしても世界が遅く見えていた。遅くなった世界で銃を構えると盗賊に狙いを定め高速で連射して行く。

その照準はアシストにより正確に盗賊だけを捉える。


鈴が地面に降り立ち、襲ってきた盗賊を後ろから両手の銃剣で突き刺した。

それと同時に八個の薬莢が空から地面に落ち、消えていった。


鈴はすぐに距離を置くと拳銃のリロードを始めた。

両手に持っているためリロードには通常より時間がかかる。


しかし、リロードが終わった時には兵士やイルミス達により盗賊たちは殲滅されていた。


「お疲れ様イルミスさん。」

「ああ、それよりお前さっきのは度肝を抜かれたぞ。なんだあれは。」

「いやー。人間やろうとすればできるものですね。」

「普通出来ないが…。」


その時馬車の中から一人の女性が出てきた。


「姫様出てきてはなりません!」

「良いのです。中から聞いていました、そちらの方たちが援軍に来てくれた冒険者なのでしょう?」


イルミスは膝をつきそれに受け答えた。


「ハッ。我らはギルドから派遣されてきた我がリーダーのイルミス率いるパーティです。」

「ギルドから?機密情報だったはずなんだけど。」

「ここに居る――。」


イルミスは直ぐに突っ立っている鈴をしゃがませると話を続けた。


「ここに居る倉木 鈴がこの陽動作戦に気が付き、ギルドと掛け合い今の作戦が行われました。鈴が気が付かなければ今頃我々も盗賊にはめられ、アジトの殲滅作戦を実施していたでしょう。」

「そういうことですか。しかし、それを見ぬくとは大した洞察力ですね。」

「は、はい、た、たまたまです。(やっべー!本物のお姫様だ!緊張するー!)」


内面とのギャップが激しい鈴である。


「そうか…まあいい。後ほどギルドに連絡させてもらう。礼はその時で良いか?」

「いえ!そんなこと!」

「気にするな。助けてもらっただけありがたいのだ。…さて馬は大丈夫なのか?」

「傷の手当は終わりましたが、刺さった位置が位置なので馬車を引かせることは出来ないかと思われます。」

「ふむ。よし、調度良い。イルミスとやら、街へ案内をしてくれないか?」


この時ばかりはこの場にいる鈴意外の人間が同じ声を出していた。


「は?」

「む。皆揃ってなんだ。」

「い、いえ、姫様が森の中を歩くなど…。」

「街道を使えばいいじゃないか。」

「し、しかし。」

「ええい!五月蝿いやつだ!ではお前はいっそうここで留守番しているか!」

「…ご動向させて頂きます。」

「よろしい。ではイルミス頼むぞ。」

「は、はい。」


そう言うとイルミスは姫様とその他愉快な仲間たちを連れて街へ戻っていくのだった。

途中歩き疲れた姫様を連れ添いの兵士が抱き抱えたりと色々有ったがそれは割愛させていただこう。

何よりも姫様のプライドが傷つ―――。



街道を通り街へ付いた姫様一行はギルドへ向かっていた。


「ふむ。この街はなんという名前の街なのだ?」

「エヴィンと言う街です。」

「エヴィンか。どうやら傷ついている建物が多いが何か有ったのか?」

「先日盗賊に襲われまして。」

「あやつらの一部か。…ふむ。」

「今回の一見は何か裏がありそうですね。それもお姫様の行動とルートと日時を知ってる人が内通者かも知れません。」


鈴が何気なしにそう言うとお姫様の足が止まった。


「私の部下に内通者が居ると言うのか?」

「あ、いえ!そういうわけでは…。」

「いや、まてよ…教皇派のあいつなら私の行動を監視できるし、私を拉致して救いだしたといって政治活用するかもしれないな…。鈴、十分その可能性はあるかも知れない。」


姫様はあれやこれや推測を立てているが、その推測の内容には政治の内容も混ざっておりイルミス達はなるべく聞かないようにしていた。


「うむ…まあいい、帰ったら反応を見てみようではないか。」

「ではギルドのほうへ。」

「そうだな。頼んだぞ。」


イルミスはギルドへ案内するとギルドマスターに用があると職員に話すとすんなりと通してくれたのだった。

前もってイルミスの名前が伝えてあったのだろう。


「失礼します。」

「どうだった?」

「鈴の予想通りでした。」

「ここがギルドマスターの部屋か。あまり変わらないのだな。」

「なっ!?ルーツ姫様!」


ギルドマスターは立ち上がると前に出てきた。


「あー。それはもういい。硬っ苦しい。」

「今日は何用でしょうか。」

「新しい馬一頭貸してくれないか?こちらの馬車を引っ張っていた馬が負傷してしまってな。」

「はい。明日には用意させます。宿の方はこの街一番の――」

「いや、ギルド宿舎というのか?そこで良い。」

「は?え?いや!ルーツ姫様であろう御方が!」

「そこで良いといっている。」

「は、はぁ。では空いている場所を確認してきます。」


そう言うとギルドマスターは部屋から出て行った。

受付で空いている部屋を探しに行ったのだろう。


「ふぅ。やっと落ち着けるな。」


お姫様がそう言うと皆が苦笑いをする。

俺達は落ち着けないよ!っと。


その後直ぐにギルドマスターが戻ってきたのだ。


「すみませんが宿舎の方は満員でして…。」

「ふむ。なら鈴と同じ部屋にする。」

「えっ?」

「…?」

「なんだ?お前も同じ部屋なのか。よろしくな!」

「よ、よろしくお願いします。」

「で、お前らはイルミス達と同じ部屋だ!」


そう言うとルーツ姫は宿舎の道案内を鈴にやらせると、アイリスの手も引っ張って直ぐに出て行ってしまった。


「なにやら苦労してそうですね。」


イルミスが兵士に話しかける。


「…いつものことなんです…。」

「頑張りましょう。」

「はい。」


そうして盗賊のお姫様拉致事件、街襲撃事件は幕を閉じたのだった。

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